神戸市で飲食店、美容室、歯科医院などを経営されている皆様。
過半数代表者について、
「過半数代表者って誰を選べばいいの?」
「指名?推薦?立候補?どんな方法で選べばいいの?」
「就業規則の意見書って何を書いてもらえばいいの?」
このようなお悩みはありませんか?
そこでこの記事では、社労士の視点から36協定や就業規則の意見書作成などに必要な過半数代表者の条件や選出方法などを、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 36協定や就業規則の意見書などにおける過半数代表者の役割
- 過半数代表者の選出条件と正しい選出方法
- 具体的な選出手順とトラブル回避のポイント
目次
36協定や意見書の過半数代表者とは?
過半数代表者が必要な代表的な3つの場面
過半数代表者は、労働者側の代表として会社と協定を結んだり、意見を述べたりする重要な役割を担います。
主な場面として、以下の3つがあります。
1. 36協定を締結するとき
時間外労働・休日労働をさせるための36協定(サブロク協定)を締結する際に必要です。これは、ほとんどの事業場で必要となる最も重要な労使協定です。
2. 就業規則を作成・変更するとき
就業規則の作成や変更を労働基準監督署に届け出る際、過半数代表者から意見を聴いた「意見書」を添付する必要があります。
3. 育児・介護休業の労使協定を締結するとき
育児休業や介護休業の対象者を一定の範囲に限定したり、育児短時間勤務の適用除外などを定めたりする場合に必要です。
その他、過半数代表者が必要となる労使協定一覧
上記以外にも、様々な場面で過半数代表者との労使協定が必要になります。
【労働基準監督署への届出が必要な労使協定】
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
- フレックスタイム制(清算期間が1ヶ月を超える場合)
- 事業場外労働のみなし労働時間制(法定労働時間を超える場合)
- 専門業務型裁量労働制
- 貯蓄金管理に関する協定
【届出は不要だが締結が必要な労使協定】
- 賃金の一部控除(法定控除を除く)
- 1ヶ月単位の変形労働時間制(就業規則に定めがない場合)
- フレックスタイム制(清算期間が1ヶ月以内の場合)
- 休憩の一斉付与の除外
- 時間単位の年次有給休暇
- 年次有給休暇の計画的付与
- 代替休暇制度
- 育児・介護に関する各種協定(対象者の限定、短時間勤務の適用除外など)
これらの労使協定も、過半数代表者の選出が適正でなければ無効となります。
36協定とは?
36協定(サブロク協定)は、労働基準法第36条に基づく協定で、従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合に必ず必要となるものです。
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いてもらう場合、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則の意見書とは?
就業規則の意見書は、就業規則の作成・変更について過半数代表者から意見を聴いたことを証明する書面です。
労働基準法第90条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を労働基準監督署に届け出る際、この意見書の添付が義務付けられています。
意見の内容は「異議なし」でも「反対」でも構いませんが、意見を聴いたことが重要です。
適正に選出しないとどうなる?
過半数代表者の選出が適正に行われていない場合、36協定などの労使協定は無効となります。
無効な協定に基づいて時間外労働をさせた場合、労働基準法違反となり、送検されるケースもあります。
実際に、過半数代表者の選出が不適切だったために、締結済みの36協定が無効とされ、残業命令に応じなかった等の理由での解雇が無効と判断された判例があります。(トーコロ事件(最高裁平成13年6月22日第二小法廷判決))
過半数代表者になれる人の条件
3つの必須条件
過半数代表者になるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①労働者の過半数を代表 | 事業場の全労働者(正社員・パート・アルバイト含む)の過半数を代表する者であること |
| ②管理監督者でない | 労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者(経営者と一体的な立場の者)でないこと |
| ③民主的な方法で選出 | 投票・挙手等の民主的な方法で選出され、使用者の意向に基づいて選出された者でないこと |
「過半数」の範囲とは?
過半数の計算には、事業場に在籍するすべての労働者を含みます。
含まれる労働者
- 正社員
- 契約社員
- パートタイム労働者
- アルバイト
- 嘱託社員
- 休業中の従業員
- 出向中の従業員
- 管理監督者(代表者にはなれないが、人数には含まれる)
含まれない労働者
- 派遣社員(雇用元が派遣会社のため)
管理監督者とは?
管理監督者とは、労働条件の決定など経営者と一体的な立場にある者のことです。
単に「部長」「店長」という肩書きがあるだけでは管理監督者とは認められません。実質的に経営者側の立場で、労働時間の管理を受けず、その地位にふさわしい待遇を受けている必要があります。
実務的には、労働基準監督署に届け出をした場合、「部長」「店長」といった役職者が過半数代表者となっている場合は、代表者として適切かどうかの問い合わせなどがあります。
そのため、可能な限り役職者以外が代表となる方が良いでしょう。
過半数代表者の正しい選出方法【ステップ別解説】
選出の基本ルール
過半数代表者の選出では、選出目的を明確にし、民主的な方法で公正に選ぶことが最も重要です。
民主的な方法の例
- 投票(無記名投票または記名投票)
- 挙手
- 労働者の話し合い
- 回覧による選出
- 持ち回り決議(書面やメールでの同意収集)
- イントラネットやフォームでの信任投票
❌ 不適切な選出方法
- 会社が特定の労働者を指名
- 親睦会の幹事を自動的に代表者とする
- 一部の労働者だけで選出
- 反対者のみ挙手させる方法(積極的な信任を確認していない)
具体的な選出手順
以下の手順で進めると、適正な選出が行えます。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ステップ1 目的の周知 | 過半数代表者を選出する目的を全従業員に伝える | 「36協定締結のため」「就業規則の意見聴取のため」など、具体的な目的を明示 |
| ステップ2 候補者の募集 | 立候補者を募集する(数日間の期間を設ける) | 掲示板、メール、イントラネット等で周知。管理監督者は候補者になれないことを明記 |
| ステップ3 選出方法の通知 | 候補者名と選出方法(投票・挙手等)、日時を全従業員に知らせる | 全員が参加できる方法を選択。パート・アルバイトも必ず含める |
| ステップ4 選出の実施 | 投票・挙手等で信任を問う | 過半数の信任(積極的な賛成)が必要。反対者のみ挙手では不可 |
| ステップ5 結果の通知 | 過半数代表者が決定したら、全従業員に知らせる | 選出された人の氏名・所属を明示 |
| ステップ6 記録の保存 | 選出過程を記録として保存 | 後日、労働基準監督署の調査で確認できるように保管 |
選出記録の保存方法
選出過程を記録し保存しておくことで、労働基準監督署の調査時にも適正な選出を証明できます。
記録すべき内容
- 選出目的(36協定締結、就業規則の意見聴取など)
- 選出日時・場所
- 全従業員数
- 参加者数(投票者数)
- 候補者の所属・氏名
- 選出方法(投票・挙手等)
- 信任の数(投票結果)
保存方法の例
- 会議の議事録
- 投票用紙・集計結果
- メールでの回答をデータ保存
- 選出方法を記載した社内文書
- 厚生労働省の選任書様式を活用
イレギュラーなケース
従業員が1人だけの場合
従業員が1人しかいない場合、その従業員が自動的に過半数代表者となります。
ただし、36協定の内容や締結方法について十分に説明し、納得してもらったうえで立候補のような形にすることが重要です。
36協定届の選出方法欄には、「立候補」または「一人のため選出手続きなし」と記載します。
よくある質問とトラブル事例
社労士が教える過半数代表者選出の実務ポイント
小規模事業所での注意点
小規模事業所では、従業員同士の距離が近いため、形式的になりがちです。
しかし、適正な手続きを経ないと協定が無効になるリスクがあります。小規模だからこそ、丁寧に説明し、全員が納得できる方法で選出しましょう。
選出時の労務管理チェックリスト
過半数代表者を選出する際は、以下の項目を必ず確認しましょう。
過半数代表者への配慮義務
労働基準法施行規則により、使用者は過半数代表者が協定等に関する事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮をしなければなりません。
配慮の具体例
- 協定内容を検討する時間の確保
- 他の従業員の意見を集約するための機会提供
- 協定内容についての資料提供や説明
- 過半数代表者であることを理由とした不利益な取扱いの禁止
まとめ:適正な選出で働きたくなる組織へ
本記事では、36協定や就業規則の意見書に必要な過半数代表者の選出方法について詳しく解説しました。
重要ポイント
- 過半数代表者は36協定と就業規則の意見書の両方で必要
- 選出目的を明確にし、民主的な方法で公正に選ぶ
- 管理監督者は代表者になれない
- 不適切な選出は協定を無効にするリスクがある
- 選出過程を記録し保存することが重要
神戸市の小規模事業所の皆様が、経営者もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現するため、適正な過半数代表者の選出を実践してみてください。
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