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「何度言っても伝わらない」をなくす経営者の言語化術ーコンセプトブックの効果とは?

「何度言っても伝わらない」をなくす経営者の言語化術ーコンセプトブックの効果とは?

小規模な歯科医院や飲食店を経営されている院長先生、オーナーさま。

「確かこれって前にも言ったはずだけど?」
「同じことを何度伝えたら分かってくれるのか?」
「全然、自分の意図が伝わっていない。」
こんなセリフが、つい口をついて出ていませんか?

朝礼で伝えたはずのルールが守られない。
面接で話したのに全然違うことをしている。
スタッフ同士で判断基準がバラバラになっている。

実はこうした問題は、スタッフの能力や性格ではなく、「伝え方の構造」に原因があることが多いです。

そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、口頭指示の限界と、経営者の考えを言語化する具体的な方法を解説します。

さらに、その言語化の第一歩として「コンセプトブック」というツールをご紹介します。

この記事でわかること

  • 「何度言っても伝わらない」の本当の原因
  • 口頭伝達の構造的な限界と数字で見る離職リスク
  • 経営者の考えを”組織の共通言語”にする「コンセプトブック」の基礎知識

「何度言っても伝わらない」——その正体は口頭伝達の構造的限界

小規模な事業所では、こんな場面が日常的に起こりがちです。

  • 朝礼で「患者さんへの声かけを丁寧に」と伝えたのに、午後にはもう忘れられている
  • 新人スタッフに「うちのやり方」を説明したが、先輩スタッフと教え方がバラバラになっている
  • 面接で「○○の時はこうしてください。」と伝えたのに、実際の行動が期待とズレている
  • オーナーが不在のとき、スタッフが判断に迷って対応が止まってしまう

実は、これらは「スタッフがちゃんと聞いていない」から起こっているわけではありません。口頭での指示や伝達には、そもそも構造的な限界があるのです。

口頭指示が伝わらない背景には、以下の3つの構造的な問題が考えられます。

①記憶に残らない


人間の記憶は時間とともに急速に薄れます。ドイツの心理学者エビングハウスの研究によると、人は聞いた情報の約70%を24時間以内に忘れるとされています。

朝礼で伝えた内容を夕方には覚えていないのは、スタッフの記憶力や怠慢ではなく、「人間の記憶の仕組み」による部分が大きいです。

エビングハウスの忘却曲線を現した図

②人によって受け取り方が違う

例えば、「丁寧に対応して」と口頭で伝えても、Aさんは「ゆっくり話すこと」、Bさんは「笑顔で接すること」と受け取ります。

経営者の頭の中にある具体的なイメージが言語化されていないと、スタッフの解釈に任されてしまいます。

採用場面でもこのケースはよく起こります。例えば「明るい人」と一言で言っても、人それぞれ「明るい人」の定義が違うので、当院(当店)の「明るい人」の定義をしておかなければ、応募者とのギャップが生まれる原因となります。

「言った・聞いていない」問題が起きる

記録が残らない口頭伝達では、後から「言った・聞いていない」の水掛け論が発生します。これが繰り返されると、経営者もスタッフも互いに不信感を抱き、職場の人間関係が悪化する原因となります。

口頭伝達と文書で伝達したときの違いを表で整理してみます。

比較項目口頭伝達文書化した伝達
記憶の定着24時間で約70%忘れる何度でも読み返せる
解釈のブレ人によって受け取り方が異なる同じ言葉で統一できる
記録性残らない証拠として残る
共有範囲その場にいた人だけ全員に同じ内容を届けられる
新人への伝達教える人により内容がバラつく一貫した内容で教育できる

数字で見る「伝わらない」が招くリスク

厚生労働省が2025年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、従業員5人未満の事業所では、大卒者の3年以内離職率が57.5%に達しています。

1,000人以上の大企業(27.0%)と比べると、約2倍の差があります。

事業所規模大卒3年以内離職率
5人未満57.5%
5〜29人52.0%
30〜99人41.9%
100〜499人33.9%
1,000人以上27.0%
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」

小規模事業所で離職率が高い背景には、「経営者の考えが明文化されていない」ことが一つの原因として考えられます。

採用時に「うちはこういう医院(お店)です」と口頭で説明しても、入職後に「思っていたのと違った」となるケースは少なくありません。

また、日常の業務においても、判断の基準が経営者の頭の中にしかなければ、スタッフは自分で考えて動くことができません。

その結果、「指示待ち」になるか、「自己判断でミスをする」か、どちらにしても経営者のストレスが増えてしまうのです。

また、スタッフの側からすると、「院長(オーナー)が何を考えているのかわからない」「せっかくやったのに、違うと言われた」などと不満を募らせる原因となります。

こうした「伝わらない」の積み重ねが、採用のミスマッチ、教育のばらつき、人間関係のすれ違いへとつながり、最終的にスタッフの離職という結果に至ります。

「コンセプトブック」とは?経営者の考えを”共通言語”にするツール

コンセプトブックとは、経営者が大切にしている考え方、価値観、組織のあり方、スタッフに期待する姿勢などを、スタッフに伝わる言葉で整理した小冊子のことです。

就業規則のように法的ルールを細かく定めるものではありません。
「この職場は何を大事にしているのか」
「どんな考え方で仕事をしてほしいのか」
「どんな人と一緒に働きたいのか」
を共有するためのものです。

似たものに「理念ブック」「ビジョンブック」「カルチャーブック」などがありますが、基本的な目的は共通しています。経営者の頭の中にある想いや考えを言語化し、組織の共通言語にすることです。

コンセプトブックの内容は決して一律ではありませんが、以下のような項目で構成することが多いです。

項目内容の例
経営理念「地域の方が安心して通える歯科医院であり続ける」
何を大切にして仕事をするか「治療だけでなく、予防を通じて患者さんの人生に貢献する」
求める人物像「自分で考え、チームのために動ける人」
大切にしたい価値観「失敗を恥ずかしいと思わない文化」
スタッフへのメッセージ院長からの想い、一緒に働く仲間への感謝
行動の方向性(行動指針)「迷ったときは患者さんの立場で考える」

文章は堅すぎず、スタッフが読みやすく、共感しやすい表現でまとめることが大切です。

「うちには就業規則があるから大丈夫」と思われる方もいるかもしれません。しかし、コンセプトブックと就業規則はまったく役割が異なります。

比較項目就業規則コンセプトブック
目的労働条件・ルールの明示価値観・考え方の共有
内容労働時間、休日、賃金など理念、仕事観、求める人物像など
法的義務常時10人以上で届出義務あり法的義務なし
トーン規範的・法的な文章親しみやすく共感しやすい表現
主な用途トラブル時の基準採用・教育・日常の判断基準

就業規則が「守るべきルール」を示すのに対して、コンセプトブックは「組織のありたい姿・目的・目指す姿」を共有するものです。

どちらも組織運営に必要ですが、役割はまったく異なります。

コンセプトブックで示したありたい姿や目的を達成するために、就業規則というルールが存在します。

なぜコンセプトブックが小規模事業所に必要なのか?3つのメリット

コンセプトブックの3つのメリットと、メリットがもたらす最大の効果

面接時にコンセプトブックを見せながら「うちの医院(お店)はこういう考え方で運営しています」と説明できます。応募者はそれを読んだうえで「自分に合っているか」を判断できます。

口頭だけの説明では伝わりきらない医院の雰囲気や価値観を、文書として共有することで、入職後の「思っていたのと違った」を防ぐ効果が期待できます。

面接でどんな人材なのかを見抜くことは至難の業といえます。そこで、こちらのコンセプトを明示することで、応募者に「ここは私には合わないかも」「こんな職場で働きたい」と判断の材料を与えることができます。

小規模事業所では「教える人によって言うことが違う」という問題が起こりがちです。コンセプトブックがあれば、「まずはこれを読んでおいてね」という共通の出発点を設けることができます。

技術的なマニュアルとは別に、「この職場で大切にされていること」を最初に伝えることで、スタッフの行動に一貫性が生まれます。

「院長(オーナー)に聞かないと分からない」が口癖になっている組織は、判断の基準が経営者の頭の中にしかない状態です。

コンセプトブックに「迷ったときは患者さんの立場で考える」といった行動の方向性が書かれていれば、スタッフは自分で判断する拠り所を持てます。

経営者にとっても「何度も同じことを言う」「自分がいなければ何も回らない」といったストレスから解放されるメリットがあります。

これらのメリットによって、経営者が”ラク”になるのがコンセプトブックの最大の特長といえるかもしれません。

よくある誤解と注意点

誤解1:きれいで完璧な冊子を作らなければならない
正解:大切なのは「中身」や経営者の姿勢であり、見た目の完成度ではありません。WordやGoogleドキュメントで作った簡素なものでも、十分に機能します。

誤解2:一度作ったらそれでOK
正解:コンセプトブックは、組織の成長とともに更新していくものです。年に1回など定期的に、スタッフと一緒に内容を見直す機会を設けることをおすすめします。

誤解3:大企業がやるもので、小さい事業所には不要
正解:むしろ小規模事業所こそ必要です。大企業には研修制度や人事部門がありますが、小規模事業所では経営者が直接伝えるしかありません。その「伝える」を助けるのがコンセプトブックです。

コンセプトブックは、作って飾っておくものではありません。以下のような場面で実際に活用される実務的なツールです。

  • 採用面接:応募者に渡して、医院の考え方を事前に理解してもらう
  • 入職時の説明:初日のオリエンテーションで一緒に読み合わせをする
  • 日々の声かけ:「コンセプトブックにも書いてあるように…」と根拠を持って伝えられる
  • 面談・評価:コンセプトブックの内容を基準にフィードバックできる
  • 定着支援:スタッフが「この職場で働く意味」を再確認するきっかけになる

社労士が教える「言語化」の労務管理ポイント

コンセプトブックはあくまで「価値観の共有ツール」です。労働条件や懲戒規定などの法的な内容は就業規則に記載してください。

たとえば、「報告・相談を大事にしましょう」はコンセプトブックの内容です。一方、「無断欠勤が〇日続いた場合は懲戒とする」は就業規則の領域です。

この線引きを曖昧にすると、トラブルの原因になりかねません。

ただし、就業規則とコンセプトブックを切り離すわけではありません。例えば、就業規則に、「この条文は、コンセプトの○○を実現するためのものです。」と書くことで、その条文の意義や

「自分の考えを文章にするのが苦手」という経営者の方は多くいらっしゃいます。そんなときこそ、ChatGPTなどの生成AIが役立ちます。

たとえば、自分が仕事をするうえで大事にしていることを箇条書きで並べて、AIに文章としてまとめてもらうという使い方ができます。

自分の想いをゼロから文章にするのは大変ですが、AIとの対話を通じて整理するとスムーズに進む場合があります。

当事務所では、組織についての考え方を明確にするためのアンケートやAI活用して、あるいは、リアルなヒアリングおよび対話を通じて、想いの言語化を経営者の方と一緒に行っています。

まとめ:「言語化」で、伝わらないストレスから解放される

本記事では、「何度言っても伝わらない」という経営者のストレスの正体と、その解決策について解説しました。

重要ポイント

  • 「伝わらない」の原因は、スタッフではなく口頭伝達の構造的な限界にあります
  • 小規模事業所ほど離職率が高く、経営者の考えの「言語化」が急務です
  • コンセプトブックは、経営者の考えを組織の共通言語にするための実務ツールです
  • 採用・教育・評価・定着支援など、日常の組織運営に幅広く活用できます

小規模事業所の経営者さまが、「自分もスタッフも働きたくなる組織づくり」を実現するために、まずはご自身の想いや考えを言葉にすることから始めてみてください。

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ABOUT US
社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー 小西朋安
小西 朋安社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー
社労士歴19年で、元プログラマーの異色キャリア。 わかりやすい就業規則の作成・経営理念の策定・浸透支援など、職場のあり方づくりに長年取り組んでいる。 近年は、GPTsを活用した求人原稿作成ツールや業務支援AIを自ら開発し、飲食店、美容室、歯科医院などの生成AI活用を積極的に支援している。