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歯科院長が「人の問題」で消耗し続ける本当の理由|診療以外のストレスを減らすために

歯科院長が「人の問題」で消耗し続ける本当の理由|診療以外のストレスを減らすために

歯科医院を経営されている院長先生。

「採用しても続かない。注意すると空気が悪くなる。」
「毎回同じことをイチから伝えるのに疲れた。」
「診療に集中したい。でも”人のこと”で毎日疲れてしまう。」

もしこんなふうに感じることがあるなら、この記事をぜひ読んでみてください。

この記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、歯科院長が「人の問題」で消耗し続ける構造的な理由と、その消耗を減らすための考え方を解説します。

この記事でわかること

  • 歯科院長が「人の問題」で消耗し続ける、たった1つの構造的な理由
  • 「自分の能力が足りないのでは」と思わなくていい根拠
  • 消耗を減らすために、最初にやるべきこと

歯科業界の「人の問題」はどれほど深刻か

まず、歯科業界における「人の問題」の深刻さを数字で確認してみます。

公益社団法人日本歯科衛生士会の「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると、歯科衛生士の約80.8%が転職経験を持っていると報告されています。

さらに、勤務年数5年未満の歯科衛生士は約38.7%にのぼります。

また、歯科衛生士の退職原因に関する調査では、「人間関係」が58.3%で最多という結果も出ています(PR TIMES、2024年公表)。

給与や待遇(43.3%)を上回り、人間関係が離職の最大要因。

つまり、約8割が職場を変え、その最大の理由が「人間関係」。これは個々のスタッフの問題ではなく、業界全体の構造的な課題と考えられます。

厚生労働省が2025年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、事業所規模別の3年以内離職率が示されています。

事業所規模大卒3年以内離職率
5人未満57.5%
5〜29人52.0%
30〜99人41.9%
100〜499人33.9%
1,000人以上27.0%
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」

5人未満の事業所では、約6割が3年以内に離職しています。

大卒の新卒採用に関する数字ではありますが、小規模な歯科医院の多くがこの規模帯に該当するため、決して他人事ではない数字です。

こうしたデータを見ると、「歯科業界はもともと離職率が高いから仕方がない」と思おわれるかもしれません。

しかし、同じ地域・同じ条件でも、スタッフが長く働いている歯科医院は確かに存在します。つまり、業界全体の傾向とは別に、個々の医院で「人の問題」が起きやすくなる構造があると考えられます。

消耗の正体|「院長の考え」が基準になっていない

歯科院長が「人の問題」で消耗し続ける理由は、院長の考えが「医院の基準」として整理されていないことにあります。

院長先生の頭の中には、当然いろんな考えがあるはずです。
「こんな人と働きたい」
「こういう医院にしたい」
「患者さんには、こういう対応をしてほしい」
「いちいち言わなくても、自主的に動いてほしい」

しかし、多くの場合、これらのことが言葉として整理されていない。文書になっていない。つまり、院長の頭の中にしかない状態です。

すると、どうなるか?日々の経営の中で、消耗パターンが繰り返されます。

①いちいち説明しなければならない

新人が入るたび、あるいはスタッフに何か伝えるたびに、同じ話をイチからしなければならない。
院長の中で「前にも言ったはずなのに。」が日常となり、院長の口を通さなければ、医院の考え方が誰にも伝わらない状態に陥ります。

②そのときどきで院長の判断がブレる

基準が頭の中にしかないため、忙しいとき、疲れているとき、機嫌が悪いときで、同じ場面への対応が変わってしまいます。
スタッフから見ると、「院長の言うことが毎回違う」となり、院長への信頼感が低下していきます。

③院長とスタッフの解釈にギャップが生まれる

たとえば「丁寧に対応して」と伝えても、院長が思う「丁寧」とスタッフが思う「丁寧」は違います。
基準が言葉になっていなければ、院長の意図とスタッフの行動がズレ続け、「なんで伝わらないのか」というストレスが積み重なります

これらが、代表的な日々の消耗のパターンです。どれも院長やスタッフの能力不足で起きているのではなく、院長の考えが「基準」として目に見える形になっていないことから起きている構造的な問題です。

消耗パターンは、経営のさまざまな場面に表れます。代表的なものを整理してみます。

場面院長が感ること構造的に起きていること
採用で「合わない」が続く「自分には人を見る目がないのでは」「どんな人と働きたいか」の基準が言葉になっていない(②判断のブレ)
スタッフに注意できない「言ったら辞めるかも。でも放置もできない」「うちの考え方」が前提として共有されていない(③解釈のギャップ)
同じことを何度も説明する「何回言えばわかるのか」院長の考えが院長の口でしか伝わらない(①いちいち説明)

それぞれ違う悩みに見えますが、根っこは同じです。院長の考え・基準が言語化されていないから、すべてが院長一人の肩に乗り続けているのです。

※採用のミスマッチについては「歯科医院の採用で「また失敗した」と感じる院長へ|ミスマッチの原因は”見る目”ではない(近日公開)」で詳しく解説予定です。

※「注意したいけど言えない」問題については「スタッフに注意できない歯科院長へ|「言えない」のは弱さではなく構造の問題です(近日公開)」で詳しく取り上げます。

ここでぜひ知っていただきたいことがあります。この消耗は、院長の能力や性格の問題ではありません。

歯科医院の院長先生に限らず、多くの経営者の方には、「自分の考えを言語化して組織に浸透させる方法」や「人を採用し、育て、注意するスキル」を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。

それにもかかわらず、経営者となった瞬間から、人を採る・育てる・注意する・組織風土をつくるという「経営者の仕事」が全部降ってきます

つまり、これは院長の能力や性格の問題ではなく、教わっていないことを手探りでやっている状態です。

だからこそ、必要なのは「もっと頑張る」ことではなく、考えを整理して基準をつくるという仕組みです。

なぜ「考えの言語化」が院長の消耗を減らすのか?3つのメリット

院長の考えを言語化 して、基準ができることの3つのメリットのイラスト図

院長の考えが「医院の基準」として言葉になると、先ほどの3つの消耗パターンがどう変わるかを見てみます。

院長の考えが文書として存在していれば、新人にも既存スタッフにも「まずこれを読んでおいてね」という共通の出発点ができます。

院長が毎回口頭でゼロから伝える必要がなくなり、「何度も同じことを言うストレス」から解放されます。

この文書を採用時に求職者に見せて説明することで、院長の考えに”合わない人”は自ら去って行ってくれます。見抜くよりもはるかに難易度が下がります。

考えが言葉として固定されていれば、忙しいときも疲れているときも、同じ基準で判断できます。スタッフから見ても「院長の言うことが一貫している」と感じられ、信頼関係が安定します。

一貫した基準があると、スタッフも安心して動くことができます。安心して動けるから、院長にいちいち確認しなくても自分で判断できる場面が増えていきます。

結果として、院長が判断に使う時間とエネルギーが減り、診療に集中できる余白が増えます。

「丁寧に」「しっかり」「ちゃんと」。こうした曖昧な言葉が、院長の考えの中では具体的な意味を持っています。その具体的な意味まで言葉にしておけば、スタッフとの解釈のギャップが大幅に減ります。

注意するときも「うちの基準とズレている」として伝えられるため、個人攻撃にならず、院長も言いやすくなります

3つに共通する変化は、院長が一人で抱える量が減ることです。これが「考えの言語化」がもたらす最大の効果です。

よくある誤解と注意点

間違い:うちには医院理念があるから、私の考えはわかっているはず。
正解:理念は非常に大切ですが、それが院長の考えとして「スタッフに伝わり、日常で使える状態」になっていなければ意味がありません。

医院理念があるだけでは、院長の日々の消耗は減りません。採用・教育・注意・判断という日々の場面で「使える基準」になっていることが重要です。

間違い:院長の考えを言葉にしさえすれば、離職もミスマッチもゼロになる
正解:言語化は「消耗を減らすための土台」であり、就業規則や面談の仕組み、評価制度など他の施策と組み合わせることで効果を発揮します

ただし、土台がなければ何を積み上げてもグラつきます。だからこそ最初の一歩は「考えの整理」から始めることが大切です。

社労士が教える「人の問題」の労務管理ポイント

ルールと考え方が両輪であることを表したイラスト図

労務管理の観点からお伝えすると、就業規則で定める「ルール」と、院長の「考え方・価値観」は別のものです。

たとえば「残業は事前申請制とする」は就業規則の領域です。一方「限られた時間で成果を出す働き方を大事にしたい」は院長の考え方の領域です。

ルールだけでは人は動きません。「なぜそのルールがあるのか」が伝わって初めて、スタッフは納得して行動できます

多くの場合、ルールだけが明文化されており、そのルールの意味や意図は院長あるいは、それを作成した社労士などの専門家の頭の中にしかありません。
しかし、ルールはその意味や意図が伝わってこそ、その効果を最大限発揮します。

※残業の問題については「「勝手に残業するスタッフ」に歯科院長が注意しにくい本当の理由と対処の考え方(近日公開)」で、労務面も含めて詳しく解説予定です。

大規模な医院には人事部門、研修制度、マニュアルがあります。

しかし小規模歯科医院には、それらがないことがほとんどです。だからこそ院長の考えが「基準」として明文化されていることの効果は大きいといえます。

院長個人の感情とは切り離された「基準」があれば、「院長が怒っている」ではなく「うちの基準とズレている」として伝えられます。院長もスタッフも冷静に対話しやすくなります。

労務トラブルの多くは「伝わっていなかった」「認識がズレていた」から生まれます。

院長の考え方が文書として整理されていれば、採用時の説明、入職時のオリエンテーション、日常の面談など、さまざまな場面で「前提の共有ツール」として活用できます

当事務所では、経営者の考えを整理・言語化し、組織の共通言語にする「コンセプトブック」の作成を通じて、こうしたトラブルの予防を支援しています。

「何度言っても伝わらない」の構造的な原因と解決策について、より詳しくはこちらの記事で解説しています。

「何度言っても伝わらない」をなくす経営者の言語化術ーコンセプトブックの効果とは?

まとめ:「人の問題」の消耗を減らし、診療に集中できる医院へ

この記事では、歯科院長が「人の問題」で消耗し続ける構造的な理由について解説しました。

重要ポイント

  • 消耗の主なパターン。「いちいち説明しなければならない」「判断がブレる」「スタッフとの解釈にギャップが生まれる」
  • 3つに共通する原因は、院長の考えが「医院の基準」として整理されていないこと
  • これは院長の能力の問題ではなく、構造の問題。最初の一歩は「考えをシンプルな言葉にすること」です

人のことで一人で消耗する時間を少しでも減らし、診療に集中できる環境を取り戻すために。「自分の考えを言葉にする」ことから始めてみてください。

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社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー 小西朋安
小西 朋安社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー
社労士歴19年で、元プログラマーの異色キャリア。 わかりやすい就業規則の作成・経営理念の策定・浸透支援など、職場のあり方づくりに長年取り組んでいる。 近年は、GPTsを活用した求人原稿作成ツールや業務支援AIを自ら開発し、飲食店、美容室、歯科医院などの生成AI活用を積極的に支援している。