神戸市で飲食店、美容室、歯科医院を経営されているオーナー、院長先生。
従業員が病気やケガで休職することになったとき、
「休職中の給料はどうすればいいの?」
「社会保険料の負担は?」
と不安に感じたことはありませんか?
休職中の給与や社会保険料の取り扱いを明確にしておかないと、後々大きなトラブルに発展することがあります。
そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、休職中の給料や社会保険料の正しい取り扱いを、具体的な規定例をまじえて詳しく解説します。
この記事でわかること
- 休職中の給料支給の考え方と判断基準
- 社会保険料の取り扱いと具体的な徴収方法
- 就業規則に記載すべき具体的な規定例
目次
休職中の給料はどうする?基礎知識を確認
休職中の給料支給は法的義務ではない
結論として、休職中に給料を支払うかどうかは、会社の自由です。
労働基準法などの法律では、休職中の給与支給について明確な定めがありません。そのため、会社が就業規則で自由に決めることができます。
多くの会社では、休職期間中は無給としていますが、これは給料の負担を避けるためと、傷病手当金が支給されることを前提としているためです。
傷病手当金とは?
傷病手当金は、健康保険から支給される生活保障のための給付金です。業務外の病気やケガで働けなくなった従業員に対して、最長1年6カ月間支給されます。
支給額の計算方法:
1日あたりの支給額 = (直近12ヵ月の標準報酬月額の平均額) ÷ 30日 × 2/3
おおよそ給料の約67%が支給されるため、スタッフの生活を一定程度保障することができます。
傷病手当金は、連続欠勤4日以上となった場合に、4日目から支給されます。最初の3日間は待期期間と言われ、傷病手当金は支給されません。
神戸市の小規模事業所における実情
神戸市内の飲食店や美容室、歯科医院など従業員20名以下の小規模事業所では、休職中は無給とする一方で、数カ月程度であればスタッフの回復を待ちたいという経営者の方が多い傾向にあります。
これは、昨今の人手不足と、給料の負担がなくても社会保険料の負担は継続するため、適切な休職期間を設定することで、店舗・医院とスタッフ双方の負担を最小限にしようという考えによるものです。
休職中の社会保険料の取り扱い
社会保険料は休職中も発生する
給料とは異なり、休職中であっても社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は通常どおり発生します。
これは、休職中も雇用関係が継続しており、社会保険の被保険者資格が維持されるためです。事業主負担分も従業員負担分も、休職前と同じ金額が必要になります。
社会保険料の金額は変わらない理由
社会保険料は「標準報酬月額」を基準に計算されます。標準報酬月額は、毎年1回、4月・5月・6月の給与平均額から算出されるため、休職中は金額が変わりません。
原則、出勤日数が17日以上の月のみで標準報酬月額の算定が行われるため、仮に3か月間すべて出勤してないと算定の対象とならず、従前の標準報酬月額がそのまま新しい標準報酬月額となります。
病気やケガでの休職の場合、社会保険料を減額・免除できる制度はありません(産前産後休業や育児休業の場合は免除制度があります)。
労働保険料と税金の取り扱い
労災保険料: 休職中に給料の支払いがなければ、事業主の負担はありません。(労災は全額自己負担負担)
雇用保険料: 休職中に給料の支払いがなければ、労使ともに負担はありません。
所得税: 休職中に給与を支払っていない場合は発生しません。
住民税: 前年の所得に基づき課税されるため、休職中でも毎月発生します。特別徴収(給与天引き)の場合は、休職期間の長さに応じて一括徴収または普通徴収への切り替えを検討します。
社会保険料の徴収方法と具体的な規定例
主な徴収方法
休職中の社会保険料の徴収方法には、以下のような方法があります。
1. 毎月振込で徴収する方法
最も一般的な方法です。店舗・医院が毎月請求書を発行し、スタッフに指定口座へ振り込んでもらいます。未払いを防ぐため、支払期日を明確に設定することが重要です。
2. 復職後の給与や賞与から相殺する方法
会社が立て替えた社会保険料を、復職後の給与や賞与から控除します。ただし、前月分(社会保険料は原則、翌月徴収のため)を超える控除には従業員の事前同意が必要です。
3. 事業主が代理受取をする方法(例外)
スタッフ本人の同意を得たうえで、事業主が傷病手当金を代理受領し、社会保険料を差し引いて支払う方法です。
ただし、代理受取はやむを得ない場合にのみ認められます。
・本人が病気やケガで入院中など、口座から出金が困難な状況にある場合
・本人名義の口座がない場合
・災害など特別な事情によって、本人名義の口座に振り込めない場合
などの理由が、考えられます。
就業規則への規定例
休職中の給料と社会保険料については、就業規則に明確に規定しておく必要があります。
【基本的な規定例】
第○条(休職期間中の給与等)
1. 休職期間中の給与は、無給とする。
2. 休職期間中の社会保険料の個人負担分と住民税に関して、会社は従業員に対し、あらかじめ請求書を送付する。
従業員は当該請求書に記載された保険料等を指定期限(または、毎月〇にち)までに会社に支払わなければならない。
未払いを防ぐための実務上の工夫
社会保険料の未払いを防ぐため、以下の対応を検討しましょう。
- 休職開始前の説明: 休職を命じる際に、社会保険料の支払い方法を書面で説明し、同意を得る
- 毎月の定期連絡: 月に1回程度、従業員の状況確認と合わせて社会保険料の支払いを確認する
- 傷病手当金申請との連動: 社会保険料の入金確認後に傷病手当金の申請手続きを進める
休職期間の設定に関する規定例
適切な休職期間の考え方
小規模事業所では、1年半など長期の休職期間は現実的ではありません。
社会保険料の継続的な負担や他の従業員への業務負荷を考慮すると、2〜3か月程度、長くて6か月が適切な場合が多いです。
自店や自医院の規模や業務の性質、キャッシュフローなどを総合的に判断して決定しましょう。
休職期間の規定例
【規定例1:一律の休職期間】
第○条(休職期間)
休職期間は次のとおりとする。
(1) 業務外の傷病により継続、断続を問わず30日以上欠勤したとき: 2カ月
(2) 精神または身体上の疾患により労務提供が不完全なとき: 2カ月
(3) 前各号のほか、特別の事情があって会社が休職をさせることを必要と認めたとき: その必要な範囲で会社の認める期間
【規定例2:勤続年数に応じた休職期間】
第○条(休職期間)
休職期間は、勤続年数に応じて次のとおりとする。
・勤続1年未満: 1カ月
・勤続1年以上3年未満: 3カ月
・勤続3年以上: 6カ月
復職と退職に関する規定
休職期間満了時の取り扱い(復職・退職)も明確にしておく必要があります。
【復職に関する規定例】
第○条(復職)
1. 私傷病等で休職した従業員の復職にあたっては、主治医および会社が指定した医療機関で受診のうえ、診断書の提出を命じる。その結果を基に復職の可否を決定する。
2. 復職後6カ月以内に同一ないし類似の事由により欠勤または通常の労務提供をできない状況に至ったときは、復職を取り消し、直ちに休職させる。
この場合の休職期間は、復職前の休職期間の残期間とする。
メンタル疾患の場合は、復職前と復職後で、異なる病名での診断となるケースがあるため、”類似の事由”と規定をしておくと対応がしやすいです。
【退職に関する規定例】
第○条(当然退職)
休職期間満了までに休職事由が消滅しない場合は、休職期間の満了の日をもって当然退職とする。
社労士が解説する休職制度の労務管理ポイント
休職開始時の重要な手続き
休職を命じる際は、以下の手続きを確実に行いましょう。
- 休職命令書の交付: 休職期間、給与の取り扱い、社会保険料の支払い方法を明記した文書を交付する
- 傷病手当金の説明: 受給要件や申請方法について説明し、必要な書類を案内する
- 連絡体制の確認: 定期的な連絡方法や報告の頻度について合意する
トラブルを防ぐための実務上の注意点
1. 社会保険料の支払い方法は必ず書面で合意
口頭での合意だけでは、後でトラブルになる可能性があります。支払い方法、支払期日、振込先などを明記した書面に従業員の署名をもらいましょう。
2. 定期的な状況確認を忘れない
月に1回程度、従業員の健康状態を確認するとともに、社会保険料の支払い状況も確認します。連絡が途絶えることを防ぐため、定期連絡日を決めておくことをお勧めします。
3. 立て替えた社会保険料は記録を残す
会社が社会保険料を立て替えた場合は、金額と期間を記録しておきます。復職後に相殺する際の証拠となります。
精神疾患の休職で注意すべきこと
うつ病や適応障害などの精神疾患による休職の場合、以下の点に特に注意が必要です。
- 主治医の診断書だけでは不十分: 必要に応じて会社指定医の診察を受けてもらう
- 復職判断は慎重に: 試し出勤制度(リハビリ出勤)の導入も検討する
- 再発リスクへの対応: 復職後6カ月以内の再発は、休職の継続として扱う規定を設ける
休職制度についてよくある質問
まとめ:休職制度で働きたくなる組織へ
本記事では、休職中の給料や社会保険料の取り扱いについて詳しく解説しました。
重要ポイント
- 休職中の給料支給は法的義務ではなく、会社が自由に決められる
- 社会保険料は休職中も通常どおり発生し、労使双方の負担が継続する
- 社会保険料の徴収方法は、就業規則に明確に規定し、スタッフとの書面での合意が重要
- 小規模事業所では2〜3カ月程度の休職期間が現実的
- 傷病手当金の活用により、スタッフの生活は一定程度保障される
神戸市の小規模事業所の皆様が、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現するため、適切な休職制度を整備しましょう。
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