神戸市で飲食店を経営されているオーナーさま。
「店長は残業代なんて関係ないよね。」
「店長だから、自分の意思で遅くまで働いているだけ。」
と考えていませんか?
実は、この認識が大きなトラブルにつながる可能性があります。
そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から「店長は管理職なので残業代は出さなくていい?」という疑問に、法律の基礎知識から実務のポイントまで詳しく解説します。
この記事でわかること
- 管理職と管理監督者の法律上の違い
- 飲食店の店長が管理監督者に該当する条件
- 「名ばかり管理職」のリスクと対策
- 飲食店での労務管理のポイント
目次
「管理職」と「管理監督者」の違い!基礎知識の確認
「管理職」は会社が決める呼び方
まず重要なのは、「管理職」と「管理監督者」は全く別の概念だということです。
「管理職」とは、企業が独自に定める役職のことです。店長、マネージャー、チーフなど、呼び方は会社が自由に決め、どの役職からを「管理職」とするかも任意です。
一方、「管理監督者」とは、労働基準法第41条2号で定められた法律上の概念です。
法律では、管理監督者を「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義しています。
管理監督者になると何が変わる?
労働基準法上の管理監督者に該当すると、以下の法律上の規定が適用除外となります。
| 項目 | 一般労働者 | 管理監督者 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 1日8時間、週40時間 | 規制なし |
| 時間外労働の割増賃金 | 必要(25%以上) | 不要 |
| 休日労働の割増賃金 | 必要(35%以上) | 不要 |
| 深夜労働の割増賃金 | 必要(25%以上) | 必要 |
| 有給休暇 | 取得可能 | 取得可能 |
管理監督者であっても、深夜労働(午後10時〜翌朝5時)の割増賃金と有給休暇の権利は変わりません。特に深夜割増については、間違いやすいポイントです。
「店長だから残業代なし」は誤解
多くの飲食店経営者が陥る誤解が、「店長という役職を付ければ残業代を払わなくていい」というものです。
しかし、役職名だけでは管理監督者には該当しません。実際の職務内容、権限、待遇などの実態で判断されます。
飲食店の店長が管理監督者に該当する3つの条件
厚生労働省の通達や判例から、管理監督者に該当するには以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1:経営者と一体的な職務内容・権限
単に店舗を管理しているだけでは不十分です。以下のような重要な権限が必要です。
| 判断ポイント | 管理監督者に該当 | 該当しない |
|---|---|---|
| 採用・解雇の権限 | 実質的な決定権がある | オーナー(本部)承認が必要、推薦のみ |
| 勤務シフトの決定 | 店舗の裁量で決定できる | 本部のルールに従うのみ |
| 経営方針への関与 | 企業全体の方針決定に参画 | 店舗内の運営指示のみ |
| 人事考課の権限 | 評価・昇給を決定できる | 意見を述べるのみ |
| 営業時間の変更 | 店長の判断で変更可能 | 本部が一律決定 |
❌ 管理監督者性を弱めるケース
以下に該当する場合、即座に”管理監督者ではない”と判断されるわけではありませんが、管理監督者性は弱まります。
- アルバイトの採用はできるが、正社員は本部が決定
- 営業時間や新メニューは本部の指示に従うのみ
- 経営会議には出席するが、意見交換の場にすぎない
条件2:勤務時間の自由裁量
管理監督者は、自分の判断で出退勤時間を決められる必要があります。
✅ 自由裁量があると認められる例
- 遅刻・早退に上司の許可が不要
- タイムカードの打刻が人事評価に影響しない
- 自身の業務に応じて柔軟に勤務時間を調整できる
❌ 自由裁量がないと判断されやすい例
- 営業時間中は必ず店舗にいなければならない
- シフトマネージャーとして自らシフトに入る
- アルバイトの欠勤時に穴埋めで勤務する
- 定時での出勤が事実上求められている
特に飲食店では、人手不足を店長が補うケースが多く、この条件を満たさないことがほとんどです。
条件3:地位に相応しい待遇
管理監督者には、その地位と責任に見合った十分な賃金が必要です。
判断の基準
- 店長になる前の賃金(基本給+残業代)より明らかに高い
- 下位の正社員の賃金総額(残業代を含む)より十分に高い
- 役職手当が実質的な残業代の代償として十分な額である
❌ よくある問題例
- 店長になって役職手当は月3万円増えたが、残業代がなくなり実質的に給料が減った
- 下位の社員が残業代を含めると年収が店長を上回っている
- 長時間労働により時給換算すると一般社員と同程度の水準である
参考資料:厚生労働省「しっかりマスター労働基準法‐管理監督者編‐」
マクドナルド事件に学ぶ「名ばかり管理職」のリスク
判例から見る現実
2008年、日本マクドナルドの店長が「名ばかり管理職」として残業代を請求し、約755万円の支払いが命じられた判決は、飲食業界に大きな衝撃を与えました。
裁判所が管理監督者性を否定した主な理由
| 判断項目 | 裁判所の評価 |
|---|---|
| 職務内容 | 店舗内の事項に限られ、企業全体の経営には関与していない |
| 権限 | アルバイトの採用権限はあるが、正社員の人事権はない |
| 勤務態様 | 営業時間中はシフトマネージャーとして勤務が必要で、自由裁量がない |
| 待遇 | 下位職の平均年収との差が年44万円程度で不十分 |
「名ばかり管理職」が発覚した場合の企業リスク
管理監督者ではないのに残業代を支払っていなかった場合、以下のリスクがあります。
- 過去3年分の未払い残業代請求:未払い賃金は3年間遡って請求可能
- 付加金の支払い:裁判所が認めた場合、未払い残業代と同額を追加で支払う可能性
- 遅延損害金:年3%または年14.6%の利息が加算
- 労働基準監督署の調査:他の従業員についても調査対象に
- 企業イメージの低下:求人や取引先への影響
具体的な金額例:
仮に店長1名について月40時間の未払い残業(時給換算1,500円)が3年間あった場合:
1,500円 × 1.25(割増率)× 40時間 × 36ヶ月 = 約270万円
飲食店経営者が今すぐできる3つの対策
対策1:現状の確認と記録
まずは、店長の実態を正確に把握することが重要です。
確認すべき項目
対策2:管理監督者に該当しない場合の対応
現状の店長が管理監督者に該当しないと判断される場合、以下の選択肢があります。
方法1:残業代を支払う体制に変更
- 店長の役職は維持
- 役職手当も維持
- 基本給+役職手当を算定基礎として残業代を支払う
方法2:固定残業代制度の導入
- 役職手当の一部を固定残業代として明示
- 例:役職手当5万円のうち3万円は月30時間分の固定残業代
- 30時間を超えた分は別途支払う
⚠️ 固定残業代制度の注意点
- 雇用契約書や就業規則に明記が必要
- 何時間分の残業代かを明確にする
- 超過分は必ず支払う
対策3:労務管理体制の見直し
長期的には、店長の業務内容や労働環境を改善することが重要です。
見直しのポイント
- 業務の効率化:生成AIやシステムの活用で事務作業を削減
- 人員配置の見直し:店長が現場作業に入らなくてよい体制づくり
- 権限の委譲:副店長やチーフへの権限委譲
- 適正な人員配置:アルバイトの安定確保
社労士が教える飲食店の労務管理ポイント
就業規則の整備が最優先
管理監督者の定義を就業規則に明確に記載することが重要です。
記載すべき内容
- 管理監督者の定義と該当する役職
- 具体的な職務内容と権限
- 賃金体系(深夜手当の取り扱いを含む)
- 労働時間管理の方法
労働時間の把握義務
2019年4月の働き方改革関連法施行により、管理監督者であっても労働時間の把握が義務化されています。
把握方法
- タイムカードやICカードによる記録
- パソコンのログイン・ログアウト記録
- 自己申告制(ただし、実態と乖離がないよう注意)
これは、過重労働による健康障害防止のための措置です。
深夜労働手当は必ず支払う
管理監督者であっても、午後10時〜翌朝5時の深夜労働には25%以上の割増賃金が必要です。
役職手当に深夜手当を含める場合は、以下の対応が必要です。
- 就業規則や雇用契約書に明記
- 深夜労働時間に見合った金額設定
- 深夜手当部分と通常の役職手当部分を明確に区分
よくある質問・誤解
まとめ:正しい知識で働きやすい職場づくりを
本記事では、「店長は管理職なので残業代は出さなくていい?」という疑問について詳しく解説しました。
重要ポイント
- 「管理職」と「管理監督者」は全く別の概念
- 管理監督者に該当するには厳格な3つの条件が必要
- 飲食店の店長の多くは管理監督者に該当しない
- 「名ばかり管理職」は多額の未払い残業代リスクがある
- 早期の実態確認と対策が重要
神戸市の小規模飲食店のオーナーさまが、法的リスクを回避しながら、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現していただければ幸いです。
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