神戸市で歯科医院や飲食店、美容室を経営されている院長先生、オーナーさま。
「従業員が10人になりそうだけど、就業規則って何から始めればいいの?」
「働くためのルールを明確にしたい」
「スタッフ対応に時間を取られて、本業に集中できない」
「助成金の申請に就業規則が必要と言われたけど、、、」
こんな悩みをお持ちではありませんか?
そこでこの記事では、小規模事業所の労務管理と生成AI活用を支援する社会保険労務士が、神戸市の歯科医院・飲食店・美容室の経営者様に向けて、就業規則作成の基礎から実践までを詳しく解説します。
この記事でわかること
- 就業規則とは何か、作成義務が発生する基準
- 就業規則が経営者を”ラク”にする理由
- 作成から届出までの具体的な手順
- 助成金申請への活用方法
- 見直しのタイミングと注意点
目次
就業規則とは?基礎知識を確認
就業規則の定義と役割
就業規則とは、職場における労働条件や服務規律など、従業員の働き方に関する基本的なルールをまとめた規則集です。
労働時間、休憩、休日、賃金、退職に関する事項など、職場で働く上で必要な決まりごとを明文化することで、従業員と経営者の双方が安心して働ける環境を整える役割を果たします。
これは私個人の考え方ですが、ルールを定めることによって、一部の心無いスタッフさんから、その他の大切なスタッフさんを守るための根拠(盾)を手にすることができます。
私のこれまでの経験上、どれだけ小規模の医院やお店であっても必ずトラブルを起こす方は出てきます。そのため、前もった準備が必要です。
作成義務が発生する「常時10人以上」とは?
労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場に就業規則の作成・届出義務を課しています。
この「常時10人以上」を正しく理解することが重要です。
◆数え方のポイント
「常時」とは:出勤している人数ではなく、常態として雇用(所属)している人数のことです。つまり、月に1回しか出勤しないパートタイムの人でもカウントに含まれます。
含まれる従業員:正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員など、雇用形態に関わらず全ての労働者が対象です。ただし、派遣社員は派遣元でカウントされるため含まれません。
事業場単位での判断:企業全体ではなく、事業場(店舗、営業所)ごとに人数を数えます。例えば、本店7人・支店6人の場合、合計13人でも各事業場が10人未満なら作成義務は発生しません。
10人未満でも就業規則を作成すべき理由
従業員が10人未満の事業所には作成義務はありませんが、小規模事業所こそ就業規則を整備するメリットが大きいのです。
最大のメリットは、就業規則は経営者を”ラク”にしてくれるツールだということです。
小規模事業所では、スタッフ一人ひとりとの距離が近い分、「その都度対応」が習慣化しがちです。しかし、これが積み重なると経営者の大きな負担になります。
就業規則で明確なルールを作れば、「その都度対応」が激減し、経営者の負担やストレスが減っていきます。詳しくは以下の記事で解説しています。
このほか、以下のようなメリットがあります。
【トラブル予防】
口頭での約束は「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。就業規則があれば、労働条件が明確になり、従業員との無用なトラブルを防げます。
トラブルになってから、「特定の○○さんというスタッフに対応するため就業規則を作りたい。」というご相談をいただくことがありますが、事が起こってからでは”遅い”です。
【助成金の要件】
キャリアアップ助成金や業務改善助成金など、多くの助成金申請には就業規則の提出が必須です。
【将来への備え】
従業員が10人以上になってから慌てて作るよりも、早めに整備しておく方がスムーズです。
就業規則を作成する4つのメリット
メリット1:経営者の負担とストレスの軽減
小規模事業所の良いところとして、スタッフ一人ひとりに丁寧に対応できる点が挙げられますが、一方で、この「個別対応」が積もっていくと、経営者の負担を増やし、イライラを募らせる原因となってしまいます。
😟よくある例
- 同じ質問を何度もされる:「この場合の休みはどうなりますか?」
- 口頭ルールであいまいに:「この前は○○でしたよね?」「いや、違うよ、、、」
- 注意すべきところで注意できない:勝手に残業するスタッフ、優先的にして欲しい仕事をしてくれないスタッフ、「本人のモチベーションを考えたら注意しにくい、、、」とモヤモヤする
- スタッフ間の待遇差の説明:「○○さんは良くて、私はダメなんですか?」への回答に困る
これらは、明確なルールや基準がないために起こることがほとんどです。就業規則があれば、明確な判断基準ができるため、経営者の労務管理が効率化され、ストレスが軽減します。
就業規則は、経営者が本業に集中するために必要不可欠なツールと言えます。

メリット2:労使トラブルの予防と解決の根拠
就業規則があれば、懲戒処分や解雇などの対応を行う際の明確な根拠となります。
例えば、無断欠勤を繰り返す従業員への対応や、職場のルール違反に対する懲戒処分を行う場合、就業規則に定めがなければ適切な対処ができません。
就業規則に「無断欠勤が〇日以上続いた場合は解雇事由とする」などと明記しておくことで、万が一のトラブル時にも会社を守ることができます。
メリット3:助成金申請の必須要件
多くの助成金制度では、就業規則の提出が申請要件となっています。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
非正規雇用の従業員を正社員に転換する際、就業規則に転換規程が定められていることが必須です。
業務改善助成金
事業場内最低賃金を引き上げる際、就業規則(賃金規程)に引き上げ後の賃金額を明記する必要があります。
働き方改革推進支援助成金
年次有給休暇の時季指定など、法令に適合した規定が就業規則に記載されていることが申請条件です。
このほかにも、多くの助成金では、就業規則で、その助成金が求める規定をしていることが支給要件になっています。
メリット4:従業員の安心感と組織の透明性向上
就業規則で労働条件や職場のルールが明確になることで、従業員は安心して働くことができます。
特に新しく入社するスタッフにとって、給与の計算方法、休暇の取得ルール、昇給・賞与の基準などが明文化されていることは大きな安心材料です。
また、採用活動においても「きちんと就業規則が整備されている職場」という印象を与えることができ、人材確保にもプラスに働きます。
各種専門学校では、紹介先として、就業規則が整備されているお店や医院であることが重視されています。
就業規則の作成手順:5つのステップ
ステップ1:記載事項の確認
就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、制度を設ける場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」があります。
絶対的必要記載事項(必ず記載)
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払日
- 昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇事由を含む)
相対的必要記載事項(制度がある場合は記載)
- 退職金の定め
- 賞与・最低賃金額の定め
- 食費・作業用品などの負担
- 安全衛生に関する定め
- 職業訓練に関する定め
- 災害補償・業務外の傷病扶助
- 表彰・制裁の定め
ステップ2:原案の作成
自社で作成する場合のオーソドックスな方法は、厚生労働省が提供する「モデル就業規則」を参考に、自社の実態に合わせて原案を作成するやり方です。
注意すべきポイント
業種に合わせた調整:飲食店なら営業時間に応じたシフト勤務、美容室なら予約制に対応した休憩時間、歯科医院なら診療時間に合わせた勤務体系など、業種特有の働き方を反映させましょう。
営業(診療)時間=勤務時間とされているケースを未だにお見掛けします。準備や後片付けの時間も勤務時間となるので注意してください。
将来を見据えた内容:一度作成した就業規則を不利益に変更するのは困難です。今後の事業展開も考慮して作成することが重要です。
最新法令への対応:2025年は育児・介護休業法の改正(4月・10月)など、重要な法改正が続いています。最新の法令に適合した内容にする必要があります。
ステップ3:従業員代表からの意見聴取
就業規則の作成・変更には、従業員の過半数代表者から意見を聴くことが法律で義務付けられています。
過半数代表者の選出要件
- 管理監督者(労働基準法第41条第2号)でないこと
- 民主的な方法(投票、挙手など)で選出されたこと
- 事業主(医院やお店側)が一方的に指名したものでないこと
意見書の内容は「異議なし」でも「反対」でも構いません。重要なのは適正な手続きで意見を聴いたという事実です。
ステップ4:労働基準監督署への届出
常時10人以上の従業員を使用する事業場は、就業規則を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
必要な書類
- 就業規則(変更)届:2部(提出用・控え用)
- 就業規則本体:2部(賃金規程など別規程がある場合は、それらの規程も)
- 従業員代表者の意見書:2部
届出方法
窓口持参:管轄の労働基準監督署に直接提出。その場で受付印をもらえるため、初めての届出にはおすすめです。
郵送:返信用封筒を同封して郵送。後日、受付印が押された控えが返送されます。
電子申請:e-Govを利用した電子申請も可能です。2021年4月以降、電子署名が不要となり利用しやすくなりました。
電子申請の場合は、PDFファイルを添付して送ると、受付印が押印されたPDFファイルが返送されていきます。
神戸市内の主な労働基準監督署
- 神戸東労働基準監督署(東灘区、灘区、中央区)
- 神戸労働基準監督署(兵庫区、長田区、須磨区)
- 神戸西労働基準監督署(垂水区、西区、北区)
ステップ5:従業員への周知
就業規則は従業員に周知して初めて効力を発揮します。届出だけでは不十分で、周知義務も法律で定められています。
適切な周知方法
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示または備え付け
- 書面を従業員に交付
- パソコンなどで従業員がいつでも確認できる状態にする
周知とは、スタッフさんが就業規則の全文を実際に読んだかどうかではなく、いつでも読める状態にあるかどうかを意味します。
助成金活用のための就業規則整備
就業規則が必要な主な助成金
神戸市の小規模事業所が活用できる主な助成金と、それぞれに必要な就業規則の規定を紹介します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用の従業員を正社員に転換する際に受給できます。重点支援対象者は1人あたり最大80万円(中小企業)の助成を受けられます。
必要な規定:就業規則に正社員への転換制度(対象者、手続き、転換要件、転換後の労働条件)を明記する必要があります。転換実施前に規定を整備することが必須です。
業務改善助成金
事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上のための設備投資を行う事業者が対象です。引き上げ額に応じて最大600万円の助成を受けられます。
必要な規定:賃金規程に引き上げ後の最低賃金額を明記する必要があります。「交付申請→就業規則改正→賃金引き上げ実施」という順序を守ることが重要です。
働き方改革推進支援助成金
労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進に取り組む中小企業が対象です。
必要な規定:年次有給休暇の計画的付与や時季指定に関する規定が必要です。2019年4月施行の年5日取得義務化に対応した内容であることが求められます。
助成金申請時の就業規則チェックポイント
助成金申請で不支給にならないために、以下の点を必ず確認しましょう。
- 規定の整備時期:制度を実施する前に就業規則に規定を設けること
- 内容の具体性:対象者の範囲、手続き方法、適用条件などを明確に記載
- 最新の法令対応:「法令違反なし」と判断される内容であること
- 実際の運用との整合性:就業規則と実際の勤務状況が一致していること
残業代の支払いが適正に行われていない場合も不支給となります。
就業規則見直しのタイミングと注意点
定期的な見直しが必要な理由
就業規則は一度作成したら終わりではありません。以下のようなタイミングで見直しが必要です。
法改正への対応
労働関係法令は頻繁に改正されます。2025年は特に重要な改正が続いています。
- 2025年4月施行:育児・介護休業法改正(子の看護休暇の対象拡大、所定外労働の制限対象拡大など)
- 2025年10月施行:育児・介護休業法改正(柔軟な働き方を実現するための措置義務化)
- 毎年10月:最低賃金の改定
事業の変化への対応
- 新しい職種や雇用形態の導入
- 店舗や診療所の増設
- テレワークなど新しい働き方の導入
最近は、小規模な事業所さんでも人材確保のため、短時間正社員を新たな雇用形態として導入されるケースが増えています。
労働基準監督署からの是正勧告
監督署の調査で指摘を受けた場合は、速やかに就業規則を改定する必要があります。
是正勧告を受けた場合は、指定の期日までに就業規則を改定し、是正報告を行います。
不利益変更を避けるためのポイント
就業規則を従業員に不利益に変更する場合は、原則として従業員の同意が必要です。同意なしに不利益変更を行うと、無効とされる可能性があります。
不利益変更の例
- 賃金や賞与の減額
- 退職金制度の廃止・減額
- 休日・休暇の減少
- 労働時間の延長
対応方法
- 従業員への十分な説明と同意取得
- 変更の必要性と合理性の明確化
- 代替措置の検討
- 専門家(社会保険労務士)への相談
よくある質問・誤解
社会保険労務士からのアドバイス
神戸市の小規模事業所が押さえるべきポイント
神戸市内の歯科医院、飲食店、美容室など小規模事業所では、以下の点に特に注意が必要です。
シフト制への対応:
飲食店や美容室では、営業時間に応じたシフト勤務が一般的です。就業規則には、シフトの決定方法、変更手続き、休憩時間の取得方法などを明確に記載しましょう。
歯科医院特有の配慮
患者対応中の休憩取得の困難さや、診療時間外の院内研修など、医療機関特有の労働形態を就業規則に適切に反映させることが重要です。
スタッフの定着率向上
就業規則で労働条件を明確にすることは、スタッフの安心感につながり、離職率の低下にも効果があります。
特に採用が厳しい神戸市内の小規模事業所では、働きやすい職場づくりの第一歩として就業規則の整備が重要です。
当事務所の支援サービス
当事務所では、神戸市の小規模事業所に特化した就業規則作成・改定支援を行っています。
業種別・規模別のカスタマイズ
歯科医院、飲食店、美容室など、それぞれの業種特有・事業規模の労働環境に対応した就業規則を作成します。
助成金活用のサポート
キャリアアップ助成金や業務改善助成金など、各種助成金の申請を見据えた就業規則の整備をお手伝いします。
最新法令への対応
2025年4月・10月の育児・介護休業法改正など、法改正に迅速に対応した就業規則の見直しをサポートします。
AIツールの活用支援
生成AIを活用した効率的な就業規則管理や、従業員への周知方法についてもアドバイスします。
生成AI活用の詳細については、AI顧問サービスをご覧ください。
神戸市の支援機関情報
神戸市内の中小企業向けに、経営相談や各種支援事業を実施しています。労務管理に関する相談にも対応していますので、お気軽にご利用ください。
神戸市が提供する事業者向け支援策の検索サービスです。業種やキーワードから、自社に合った支援制度を探すことができます。
まとめ:就業規則で働きたくなる組織へ
本記事では、神戸市の小規模事業所向けに就業規則作成の基礎から実践までを解説しました。
重要ポイント
- 就業規則は、経営者を”ラク”にするツールである
- 常時10人以上の従業員を使用する事業場には就業規則の作成・届出義務がある
- 10人未満でも助成金申請やトラブル予防のため作成が推奨される
- 作成後は労働基準監督署への届出と従業員への周知が必須
- 法改正や事業の変化に応じた定期的な見直しが重要
- 助成金活用には適切な就業規則の整備が必要不可欠
就業規則の整備は、単なる法令遵守だけでなく、経営者自身の負担やストレスを取り除くとともに、従業員が安心して働ける環境づくりの第一歩です。
神戸市の歯科医院、飲食店、美容室の経営者の皆様が、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現するため、ぜひ本記事を参考に就業規則の作成・見直しに取り組んでみてください。
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