歯科医院を経営されている院長先生。
「患者さんからスタッフへのセクハラをどう防げばいいのか」
「自分自身がセクハラと誤解されないか心配」
といったお悩みはありませんか?
歯科医院は、女性スタッフの割合が多いうえに診療という特性上、患者さんとの距離が近くなりがちです。
また、男性院長と女性スタッフという構成の医院が多いため、セクハラのリスクは決して他人事ではありません。
そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、歯科医院におけるセクハラ対策を詳しく解説します。
セクハラに性別は関係はありませんが、圧倒的に男性と女性の間に起こりやすいため、この記事ではその点を踏まえた内容となっています。
この記事でわかること
- 歯科医院で起こりやすいセクハラの実態と法的義務
- 患者さんからスタッフを守る具体的な対策と就業規則
- 院長自身がセクハラと誤解されないための注意点
目次
歯科医院におけるセクハラの実態と法的義務
歯科医院で起こるセクハラとは?
歯科医院におけるセクハラには、大きく分けて3つのパターンがあります。
- 患者さんからスタッフへのセクハラ
診療中の性的な言動、身体への不適切な接触、執拗な連絡先の要求などが該当します。 - 院長やスタッフ間でのセクハラ
特に小規模な医院は閉鎖的な環境のため、意図せず不適切な言動が起こりやすい側面があります。 - 誤解によるセクハラ疑惑(院長やスタッフから患者さんへのセクハラ)
診療上必要な接触や説明が、患者さんや第三者から誤解されるケースもあります。
法的義務と放置した場合のリスク
すべての事業主にセクシャルハラスメント防止措置が義務化されています。(男女雇用機会均等法第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)による職場のセクハラ防止措置義務)
対策を怠った場合のリスクは深刻です。
例えば、
- セクハラが原因でスタッフが離職・・・採用・教育コストは1名あたり年間200万円超
- SNS等での悪評・・・新患数が半減した事例あり
のように、経営を脅かすような事態にもなりかねません。
神戸市内の歯科医院における現状
神戸市内の小規模歯科医院では、人手不足が深刻化しており、貴重なスタッフを守ることが経営の重要課題となっています。
特に女性スタッフが大半を占める歯科医院では、セクハラ対策の整備が「働きたくなる職場づくり」には必要不可欠と言えます。
患者さんからのセクハラ対策:カスタマーハラスメント防止
患者さんからのセクハラは、カスタマーハラスメント(カスハラ)の一形態ですので、これまでのセクハラ対策とあわせて、カスハラ対策の観点からも対応が必要となります。
東京都では、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が2025年4月1日から施行されています。
さらに、国の法改正(2026年10月施行予定)により、 全ての企業にカスハラ対策が義務付けられる予定です。
患者さんからのセクハラ具体例
歯科医院で実際に起こっている患者さんからのセクハラには、以下のようなものがあります。
| 場面 | 具体的な行為 | 対応の緊急度 |
|---|---|---|
| 診療中 | 身体への不必要な接触、性的な発言・質問 | ★★★ |
| 受付・待合室 | 容姿に関する性的な言及、執拗な連絡先要求 | ★★☆ |
| 電話対応 | 長時間の性的な会話の強要 | ★★★ |
| SNS・メール | 個人的な交際の強要、わいせつな画像送信 | ★★★ |
就業規則への明記とスタッフ保護方針
患者さんからのセクハラ(カスタマーハラスメント)に対しても、就業規則(またはハラスメント防止規程)に明確な方針を定めることが必要です。
就業規則などへの記載例
第○条(カスタマーハラスメント対策)
当院は、患者さん等からのハラスメントから従業員を保護するため、以下の方針を定める。
1. 患者さん等からの以下の行為は、カスタマーハラスメントとして対応する
・威圧的な言動、暴言、器物破損
・身体的特徴への言及、不適切な接触
・執拗な連絡や誹謗中傷
・過剰な要求
2. 従業員がカスタマーハラスメントを受けた場合は、速やかに院長または責任者に報告すること
3. 院長は、従業員の安全と尊厳を守るため、必要に応じて以下の措置を講じる
・警告、診療拒否、警察への通報
・証拠保全(録音・録画データの保管)
実践的な対応手順
患者さんからのセクハラに対しては、段階的な対応が効果的です。
- 予防段階:院内に「ハラスメント対応方針」を掲示し、録音・録画システムの設置を明示する。「この通話は録音させていただいております」という音声案内だけでも抑止効果があります。
- 初期対応:スタッフが複数で対応する体制を作り、院長や責任者にすぐ報告できるルートを確保します。
- 記録保全:日時、場所、発言内容、目撃者を記録し、タイムスタンプ付きで90日以上保管します。
- 毅然とした対応:警告後も改善されない場合は、歯科医師法19条第1項の診療を拒める「正当な事由」に該当するため診療拒否が可能です。必要に応じて警察への通報も検討します。
防犯カメラ・録音システムの活用
診療室への防犯カメラ設置は、セクハラ対策の有効な手段です。
実際、防犯カメラ導入により患者さんからのハラスメントが30%減少したというデータもあります。また、院長やスタッフの濡れ衣を晴らす証拠にもなります。
導入時の注意点
- 音声も記録できるタイプを選ぶ(「言った」「言わない」の防止)
- 患者さんの同意を掲示で得る(「防犯カメラ作動中」の表示)
- 保存期間を90日以上に設定し、削除権限は院長(および事務長)のみとする
- 個人情報保護に配慮した運用ルールを定める
院長自身がセクハラと誤解されないための対策
誤解を招きやすい場面と具体例

男性院長と女性スタッフという構成が多い歯科医院では、院長自身が意図せずセクハラと誤解されるリスクがあります。
| 場面 | 誤解を招く行為 | 適切な対応 |
|---|---|---|
| 診療指導 | 個室で2人きりでの長時間指導 | オープンスペースで、または複数人で実施 |
| 身だしなみ指導 | 「その服装は…」と直接的な指摘 | 「制服規定の確認をお願いします」と間接的に |
| プライベートな話題 | 休日の過ごし方、恋愛について質問 | 業務上必要な範囲に限定 |
| 身体接触 | 肩に手をおく等身体の一部に触れる | 一切の身体接触を避ける |
診療中の適切なコミュニケーション
診療という性質上、患者さんの口腔内に手を入れ、顔に近づく必要があります。誤解を避けるための配慮が不可欠です。
釈迦に説法にはなりますが、以下のようなポイントを抑えておきましょう。
- 事前説明の徹底:「これから○○の治療を行います」「お口の中を確認します」と、処置の前に必ず説明する
- アシスタントの同席:可能な限り女性スタッフに同席してもらう。特に個室診療の場合は必須
- 適切な距離感:診療上必要な範囲を超えた接触は避ける。タオルを使用するなど物理的な配慮も効果的
- 言葉遣いに注意:「きれいな歯ですね」など、身体的特徴への言及は避け、「良好な状態です」などの医学的表現を使う
スタッフとの適切な距離感の保ち方
院長とスタッフの関係において、以下のような行動指針を持つことが重要です。
- 1対1の場面を避ける:面談や指導は可能な限りオープンなスペースで実施する。個室での話し合いが必要な場合は、常にドアを開けておく
- プライベートに踏み込まない:恋愛、結婚、家族構成などの個人的な質問は控える。雑談は天気や一般的なニュースに留める
- SNSでのつながりは慎重に:個人的なSNSでのフォローは避け、業務連絡は院内の公式ツールを使用する
- 食事や飲み会の誘い方:全員参加の場として設定し、個人的な誘いと誤解されないよう配慮する
就業規則の整備と相談窓口の設置
就業規則に盛り込むべき内容
ハラスメント防止のための就業規則(またはハラスメント防止規程)には、以下の要素を盛り込む必要があります。
セクハラ禁止規定の記載例
第○条(セクシュアルハラスメントの禁止)
従業員は、職場において以下の行為を行ってはならない。
1. 性的な言動により、他の従業員に不快感を与え、就業環境を害すること
・性的な冗談、からかい、質問
・食事やデートへの執拗な誘い
・性的な内容の情報の意図的な流布
・身体への不必要な接触
・わいせつ図画の配布、掲示
2. 性的な言動に対する従業員の対応により、その従業員に不利益を与えること
・交際の拒否を理由とした解雇、降格、減給
・性的な関係の強要
3. 患者さん等からのセクシュアルハラスメントを受けた場合は、速やかに院長または相談窓口に報告すること
懲戒規定の明確化
セクハラ行為に対する懲戒処分の基準を明確にすることが重要です。
第○条(懲戒処分)
従業員が次の各号の一に該当する場合は、情状に応じて懲戒処分を行う。
1. 戒告・譴責
・軽微なセクシュアルハラスメント行為を行った場合
2. 減給・出勤停止
・セクシュアルハラスメント行為を繰り返した場合
・セクシュアルハラスメントにより職場環境を著しく害した場合
3. 懲戒解雇
・悪質なセクシュアルハラスメント行為を行った場合
・セクシュアルハラスメントにより他の従業員に重大な精神的・身体的苦痛を与えた場合
相談窓口の設置方法
相談窓口の設置は、法律で義務付けられているため、小規模な歯科医院でも必ず設置する必要があります。
相談窓口の設置方法は、内部でも外部でもどちらでも構いません。
| 窓口タイプ | 設置方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 内部窓口 | 院長または信頼できるスタッフを指名 | 迅速な対応が可能 | 相談しにくい場合がある |
| 外部窓口 | 社労士や弁護士と契約 | 中立的で相談しやすい | コストがかかる |
小規模な歯科医院の場合、内部の相談窓口には相談しにくいため、外部窓口を設定することをおすすめします。
プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談者のプライバシー保護は、セクハラ対策の根幹であり、法律でも義務付けられています。
第○条(相談者の保護)
1. ハラスメントの相談を受けた者は、相談者および関係者のプライバシーを厳守し、相談内容を正当な理由なく他に漏らしてはならない
2. 相談をしたこと、または事実関係の確認に協力したこと等を理由として、解雇、降格、減給その他不利益な取扱いを行ってはならない
3. 相談窓口担当者は、相談記録を適切に管理し、関係者以外が閲覧できないよう措置を講じる
研修と啓発活動の実践方法
小規模歯科医院でも実施できる研修
大がかりな研修を行わなくても、朝礼や定例ミーティングで継続的に啓発することが効果的です。
月1回10分の研修例
- 第1週:セクハラの定義と具体例の確認
- 第2週:患者さんからのセクハラを受けた際の報告手順
- 第3週:院内での適切なコミュニケーション方法
- 第4週:事例検討(ケーススタディ)
実際、医療現場向けセクハラ研修を年2回実施した病院では、ハラスメント認知度が20ポイント向上し、発生件数が半減したという報告があります。
院内掲示とスタッフへの周知
ハラスメント防止方針を、スタッフルームや受付に掲示することで、常に意識を高めることができます。
掲示内容の例
【当院のハラスメント防止方針】
当院は、すべてのスタッフが安心して働ける職場環境を目指しています。
■ セクシュアルハラスメントは絶対に許しません
■ 患者さん等からのハラスメントからスタッフを守ります
■ 相談しやすい環境を整備しています
【相談窓口】
院長または○○(担当者名)
外部窓口:△△社労士事務所(電話:XXX-XXXX-XXXX)
相談したことで不利益な扱いを受けることは一切ありません。
プライバシーは厳守します。
無料で学べるリソースの活用
厚生労働省が提供する無料の資料や動画を活用しましょう。各種動画や資料、解説記事などが豊富です。
厚生労働省「あかるい職場応援団」
セクハラ対策についてよくある質問
まとめ:セクハラ対策で働きたくなる歯科医院へ
本記事では、歯科医院におけるセクハラ対策について詳しく解説しました。
重要ポイント
- 患者さんからのセクハラに対しては、就業規則への明記と防犯カメラ等の物理的対策が効果的
- 院長自身は、診療中の適切なコミュニケーションとスタッフとの距離感に常に配慮する
- 就業規則の整備、相談窓口の設置、定期的な研修が法的義務であり、スタッフ保護の基本
小規模歯科医院の皆様が、安心して働ける環境を実現し、院長自身もスタッフも働きたくなる組織づくりを進めていただければ幸いです。
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