神戸市で飲食店を経営されているオーナーさま。
「アルバイトを雇うときって何か必要な書類はあるの?」
「時給の金額を口で伝えるだけじゃダメなの?」
「労働条件を明示しないといけないと聞いたけど、どんなことを明示するの?」
こんな疑問をお持ちではありませんか?
労働条件の明示は法律で義務付けられており、違反すると30万円以下の罰金が科される可能性があります。さらに、スタッフとのトラブルや早期退職の原因にもなりかねません。
そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、飲食店がアルバイト雇用時に必ず説明すべき10の項目を詳しく解説します。
この記事でわかること
- 2024年4月改正後の労働条件明示ルールの全容
- 飲食店のアルバイト雇用で必須の10項目
- 労働条件通知書の作成方法と注意点
目次
労働条件明示ルールとは?飲食店経営者が知っておくべき基礎知識
労働条件明示ルールとは何か?
労働条件明示ルールとは、労働基準法第15条に基づき、事業主が労働者を雇用する際に、賃金や労働時間などの労働条件を必ず明示しなければならないという決まりです。
飲食店では「学生のアルバイトだから」「短期間のアルバイトだから」といった理由で、口頭だけで済ませてしまうケースがありますが、たとえ1週間の短期アルバイトでも、書面による労働条件の明示が法律で義務付けられています。
2024年4月の改正で何が変わったのか?
2024年4月1日に労働基準法施行規則が改正され、労働条件の明示事項が追加されました。
改正のポイント
- 就業場所・業務の変更の範囲:将来的に勤務する可能性のある場所や業務をすべて明示
- 更新上限の有無と内容:契約更新回数や通算契約期間の上限を明示
- 無期転換申込権と無期転換後の労働条件:無期転換できることと、その後の条件を明示
これらは特に有期契約労働者(多くのアルバイト・パートが該当)に関わる重要な改正内容です。
有期契約労働者=雇用契約の期間が決まっている人です。例えば、2025年12月1日から2026年3月31日まで。
雇用契約期間が決まっていない人は、原則、定年まで雇用することになります。
なぜ飲食店では特に重要なのか?
飲食店では学生や主婦など、多様な働き方をする方々をアルバイトとして雇用することが一般的です。
シフト制、短時間勤務、有期契約など、勤務形態が複雑になりやすいため、労働条件の明示が不十分だとトラブルが発生しやすい環境にあります。
実際に「聞いていた時給と違う」「休憩時間がもらえない」「シフトの希望が通らない」といったトラブルは、労働条件の明示不足から生じることが多いのです。
私の経験上、小規模な飲食店さんでは、労働条件を明示していない、または必要な項目を明示できていない。というケースが9割9分といっても過言ではありません。
飲食店のアルバイト雇用時に必ず説明すべき10の項目
ここからは、飲食店がアルバイトを雇用する際に必ず書面で明示しなければならない10の項目を、具体的な記載例とともに解説します。

項目1:労働契約の期間
明示内容
雇用期間がいつからいつまでなのかを明確に記載します。
記載例
- 期間の定めあり:2025年4月1日~2026年3月31日
- 期間の定めなし:期間の定めなし
飲食店での注意点
パートタイマーやアルバイトの場合、契約期間を6ヶ月や1年と定めることが一般的です。試用期間を設ける場合は、その期間と正式採用の条件も併せて記載しましょう。
契約期間を明示していない場合は、契約期間が「ない」ことになりますので、正社員のように定年までの雇用が原則となってしまうので、注意が必要です。
項目2:有期労働契約を更新する場合の基準
明示内容
契約更新の有無と、更新する場合の判断基準を明記します。
記載例
- 更新の有無:①更新しない ②更新する場合がある ③自動更新
- ②更新する場合の基準:契約期間満了時の店舗の営業状況、本人の勤務成績、勤務態度、能力、店舗の人員状況により判断
以前、契約更新の手続きをするのが手間だから「自動更新」にしているというお客様ががいらっしゃいました。
ですが、「自動更新」にすると、実質「契約期間がない」契約となってしまいますので、更新判断の基準を具体的に記載して、契約期間満了の都度、新しい雇用契約を締結することをおすすめして、変更をしていただいたことがあります。
項目3:就業場所・従事すべき業務
明示内容
雇入れ直後の勤務場所と具体的な業務内容を記載します。
記載例
- 就業場所:〇〇店(神戸市中央区××1-2-3)
- 業務内容:ホール業務(接客、配膳、レジ対応)、店舗内外の清掃業務
あるクリニックさんで、スタッフさんにクリニック前でのビラ配りをお願いしたところ、「業務内容に書いてません。」と拒否された院長先生がいらっしゃいましたので、可能性のある業務はきちんと記載すべきです。
「項目8:就業場所・業務の変更の範囲」も一緒に記載するのが一般的で、厚生労働省の労働条件通知書のひな型でもそのようになっています。
項目4:始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇
明示内容
勤務時間、休憩時間、休日の取得方法を具体的に記載します。
記載例
- 始業・終業時刻:10時00分~22時00分のうち8時間以内(シフトによる)
- 休憩時間:労働時間6時間超で45分、8時間超で60分
- 休日:シフト制による(月8日以上)
- 年次有給休暇:勤務開始日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に付与
- その他の休暇、休日:法定の休暇(産前産後休業、育児休業など)、年末年始休暇・夏季休暇など
シフト制の場合、働く可能性のあるすべての時間帯を記載する必要があります。
①「10時00分~19時00分(休憩60分)」②10時00分~17時00分(休憩45分)③「14時00分~22時00分(休憩60分)」といった感じですべて記載します。
項目5:賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払日
明示内容
時給または月給、各種手当、賃金の支払方法を明記します。賞与の有無・退職金の有無についても明示しなければなりません。
記載例
- 基本賃金:時給1,100円
- 通勤手当:1日500円
- 所定時間外労働の割増賃金率:法定内(0%)、法定外(25%)、法定外60時間超(50%)
- 休日労働の割増賃金率:35%
- 深夜労働の割増賃金:25%
- 賃金締切日:毎月末日
- 賃金支払日:翌月15日(金融機関休業日の場合は前営業日)
- 支払方法:本人名義の銀行口座へ振込
- 賞与:支給しない
- 退職金:支給しない
支払方法についてですが、いまだに法律上は現金払いが原則です。そのため、口座振込の場合はスタッフさんの同意が必要ですので、賃金口座振込同意書を準備します。
項目6:退職に関する事項
明示内容
退職を希望する場合の手続き、定年制適用の有無、解雇の手続き・解雇事由などを記載します。
記載例
- 退職:退職を希望する場合は、退職希望日の14日前までに書面で届け出ること
- 定年:定年制の適用をしない
- 解雇:30日前に予告するか、解雇予告手当を支払い解雇する。
- 解雇事由:無断欠勤が2週間以上続いた場合、重大な服務規律違反があった場合など(その他、就業規則第〇条のとおりとする)
解雇事由はすべて記載します。書ききれない場合は、就業規則を参照する旨を記載します。
項目7:昇給に関する事項
明示内容
昇給の有無、昇給がある場合はその条件を記載します。
記載例
- 昇給:あり(〇カ月に1回、勤務態度・能力などにより決定)
- 昇給:なし
雇用契約期間の定めがある場合は、その契約期間内で昇給する可能性があるかどうかを明示します。つまり、契約更新時の時給アップは、ここでの昇給には当てはまりません。
項目8:就業場所・業務の変更の範囲
明示内容
将来的に配置転換などで変わる可能性のある就業場所と業務内容を記載します。
記載例
- 就業場所(雇入れ直後):〇〇店(神戸市中央区××1-2-3)
- 就業場所(変更の範囲):神戸市内の当社運営店舗・会社の指示する店舗
- 従事すべき業務(雇入れ直後):ホール業務
- 従事すべき業務(変更の範囲):ホール業務、キッチン補助業務、清掃業務・会社の指示する業務
前述ですが、上記のように「項目2:就業場所・従事すべき業務」と一緒に明記するのが一般的です。
複数店舗を運営している場合、ヘルプ勤務の可能性がある店舗はすべて記載する必要があります。
項目9:更新上限の有無と内容
明示内容
契約更新回数や通算契約期間に上限がある場合は、その内容を記載します。
記載例
- 更新上限:なし
- 更新上限:通算契約期間の上限3年、または更新回数の上限5回
項目10:無期転換申込権と無期転換後の労働条件
明示内容
無期転換ルールが適用される契約更新時に、無期転換できることと、その後の労働条件を記載します。
無期転換ルールとは
同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込により無期労働契約に転換できる制度です。
記載例
- 無期転換申込機会:本契約期間中に無期労働契約締結の申込みをした時は、本契約期間満了の翌日から無期雇用に転換することができる
- 無期転換後の労働条件:無期転換後の労働条件は本契約と同じとする
この項目は、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングで明示が必要です。全ての契約時に記載する必要はありません。
項目プラスワン:雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
パートタイム・有期雇用労働法では、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口について、文書で交付することが義務付けられているため、実務的には労働条件通知書に相談窓口についての記載をします。
記載例
- 部署名:本店
- 担当者職氏名:代表取締役 〇〇〇〇
- 連絡先:電話番号・メールアドレス
小規模な飲食店の場合、オーナーが窓口になることがほとんどです。
労働条件通知書の作成方法と実務のポイント
労働条件通知書と雇用契約書の違い
飲食店で人を雇う際には、「労働条件通知書」と「雇用契約書」という2つの書類が存在します。
| 項目 | 労働条件通知書 | 雇用契約書 |
|---|---|---|
| 法的義務 | 義務あり(労働基準法第15条) | 義務なし(ただし推奨) |
| 目的 | 使用者からスタッフへの一方的な通知 | 双方の合意を確認する契約書 |
| 署名・押印 | 不要(交付のみ) | 必要(双方が署名・押印) |
| 作成部数 | 1部(スタッフに交付) | 2部(双方で保管) |
労働条件通知書は、雇う側からの一方的な通知ですので、雇用契約書で双方が合意した形での雇用契約の締結をおすすめします。
実務上は、「労働条件通知書兼雇用契約書」として1つの書類にまとめてしまえば、1つの書類で、労働条件の明示義務を果たしつつ、双方の合意も確認できます。
また、明示が必要な項目が明記されていれば、「雇用契約書」としてまとめてしまっても問題はありません。
書面交付の方法(電子化も可能)
労働条件通知書は、以下の方法で交付できます。
- 紙の書面:従来の方法
- 電子交付:スタッフが希望した場合、FAX・メールなどでも可
電子交付の要件
- スタッフが電子交付を希望していること
- スタッフが出力(印刷)できる方法であること
- スタッフが送信の内容を確認できる方法であること
作成時の注意点
❌ よくある間違い
- 「試用期間中は労働条件通知書が不要」→ 試用期間中も必要です
- 「短期アルバイトは口頭でOK」→ 1日や1週間でも書面が必要です
- 「雇用契約書があれば労働条件通知書は不要」→ 別の書類です(兼用は可能)
✅ 正しい対応
- 雇用形態に関わらず、全員に労働条件通知書を交付する
- 10項目すべてを漏れなく記載する
- 労働者の控えを必ず渡す
- 契約更新時にも都度交付する
テンプレートの活用
厚生労働省が公開している「労働条件通知書のモデル様式」を活用することをお勧めします。
厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」から、2024年4月改正に対応した最新版をダウンロードできます。
この労働条件通知書にスタッフさんの署名欄を設けることで、雇用契約書として活用することも可能です。
社労士が教える飲食店の労務管理ポイント
就業規則との併用

労働条件通知書に、すべての労働条件や雇用に関する決め事、ルールを明記するには限界があります。
例えば、上述したように、解雇事由はすべて事前に明記しておく必要がありますが、労働条件通知書内にすべて書き込むのは現実的ではありません。
その他、休職や懲戒処分、服務規律なども必要になってきますが、これらは個別の労働条件通知書ではなく、就業規則に規定して、全スタッフ共通のルールとするのが実務的であり、運用面からも現実的で確実な方法です。
ですので、労働条件通知書と就業規則を併用して、労務管理の効率化とより安心・安全な労務リスク対策を講じていくのがおすすめです。
厚生労働省のモデル労働条件通知書もそのような作り方がしてあり、項目の末尾に「詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条」という記載があります。
トラブル予防のための事前対策
書面交付だけでなく口頭でも説明する
労働条件通知書を渡すだけでなく、特に重要な項目(賃金、勤務時間、休日など)は口頭でも丁寧に説明しましょう。「言った・言わない」のトラブルを防げます。
質問しやすい雰囲気づくり
「わからないことがあったら、いつでも聞いてね」と伝えることで、後々のトラブルを防げます。
定期的な見直し
法改正や最低賃金の変更に合わせて、労働条件通知書の内容を定期的に見直しましょう。
飲食店特有の労務リスクと対策
| リスク項目 | 具体例 | 対策 |
|---|---|---|
| シフト管理 | シフトの急な変更、希望が通らない | シフト決定ルールを明文化し、変更時の対応方法を事前に説明 |
| 休憩時間 | 忙しくて休憩が取れない | 休憩時間を確実に取得させる仕組みづくり |
| 残業代 | 閉店後の片付けが残業扱いされない | 始業前準備・閉店後片付けも労働時間として管理 |
| 賄い(食事) | 賄いの提供条件が不明確 | 賄いのルール(提供時間、自己負担額など)を明記 |
よくある質問
まとめ:労働条件明示で働きたくなる飲食店へ
本記事では、飲食店がアルバイト雇用時に必ず説明すべき10の項目+1項目について詳しく解説しました。
重要ポイント
- 2024年4月の改正で、労働条件明示事項が10項目に増加
- 雇用期間の長短に関わらず、全ての労働者に書面交付が必要
- 違反すると30万円以下の罰金が科される可能性がある
- 労働条件の明示は、トラブル予防と信頼関係構築の第一歩
労働条件を適切に明示することは、法令遵守だけでなく、スタッフとの信頼関係を築き、オーナー自身もスタッフも働きたくなる飲食店づくりの基盤となります。
小規模飲食店の皆様が、この記事を参考に、適切な労務管理を実践されることを願っています。
🎯 さらなる組織改善をお考えの方へ
無料相談実施中!
✅ 労務管理の課題が30分でわかる
✅ 労働条件通知書のチェック
✅ 就業規則の作成・見直し
✅ AI活用による効率化提案
【期間限定】小規模飲食店様向け特別サポート
初回相談無料
お気軽にご相談ください。


















