神戸市で歯科医院を経営されている院長先生。
「解雇の時に、解雇予告手当を支払う方法があると聞いた」
「院長の体調不良で休診したら、スタッフに休業手当を払わないといけないって本当?」
「そもそも、平均賃金って何?どうやって計算方法するの…」
このようなお悩みはありませんか?
そこでこの記事では、歯科医院の労務管理を支援する社会保険労務士×生成AI活用アドバイザーが、平均賃金の基本から具体的な計算方法まで、歯科医院での実例を交えて詳しく解説します。
この記事でわかること
- 平均賃金とは何か、なぜ重要なのか
- 歯科医院での平均賃金が必要になる具体的な場面
- 月給制・時給制スタッフの平均賃金計算方法(実例付き)
- パート・アルバイトで必須の「最低保証額」の計算
目次
平均賃金とは?歯科医院が知っておくべき基礎知識
平均賃金の定義と目的
労働基準法第12条では、平均賃金を以下のように定めています。
算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額
簡単に言えば、解雇や休業などが発生した日より前の3ヶ月間の給与を元に計算した、1日あたりの賃金額のことです。
なぜこのような計算が必要なのかというと、解雇や休業などによってスタッフの収入が途絶えてしまう際に、直前の生活水準を維持できるよう、普段の給与に近い金額を保障するためです。
つまり、平均賃金はスタッフの生活を守るためのセーフティーネットとしての役割を担っています。
歯科医院における平均賃金の重要性
神戸市内の歯科医院では、スタッフの人手不足が深刻化しています。
せっかく採用した歯科衛生士や歯科助手が突然辞めてしまったり、院長先生の体調不良で休診せざるを得なかったりする場面は、どの医院でも起こり得ます。
そんな時、平均賃金を正しく計算し、法律に基づいた対応をすることが、スタッフとの信頼関係を守り、労務トラブルを未然に防ぐことにつながります。
平均賃金が必要になる3つの主要場面
歯科医院の経営において、平均賃金の計算が特に重要となるのは、主に以下の3つの場面です。
1. 解雇予告手当
スタッフを解雇する場合、原則として30日以上前に予告する必要があります。
ただし、「解雇予告手当」を支払うことによって、予告期間をなくしたり短縮することが可能です。
例えば、
・解雇予告手当を30日分支払えば、解雇予告期間は不要になります。
・解雇予告手当を15日分支払えば、解雇予告は15日前までに行えばよいことになります。
この解雇予告手当の計算に平均賃金を用います。
解雇予告の手続きと解雇の有効性の判断は別物ですので、注意が必要です。
2. 休業手当
医院側の都合でスタッフを休ませる場合、例えば院長の体調不良による休診や改装工事などの際には、休業期間中の生活を保障するために「休業手当」として平均賃金の60%以上を支払う必要があります。
休業手当は「平均賃金の60%でいいですよ。」というのは、あくまでも労働基準法上は違反にならないラインです。
実は、スタッフは民法の規定(民法第536条第2項)により、給与の100%を請求する権利を持っています。
こちらの記事の「第44条 臨時休業の賃金」も参考にしてください。
3. 年次有給休暇の賃金
スタッフが有給休暇を取得した日の給与を、平均賃金で支払うと就業規則で定めている場合に計算が必要です。
平均賃金で支払うほかに、以下の2つの方法が法律で認められています。
①通常の賃金(月給制であれば給与の減額なし)
②健康保険法の標準報酬日額(労使協定の締結が必要)
多くの事業所では、通常の賃金での支払いを選択されています。
有給休暇取得時の給与の支払いを「通常の賃金」での支払いに一本化することが検討されていますので、今後の法改正情報を注視する必要があります。
【実例】院長の急な体調不良で休診…休業手当が発生したケース
「院長である自分の体調不良は、個人的な理由だから『医院側の都合』には当たらないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、法律上の解釈は異なります。
たとえ院長ご自身の病気やケガが原因で休診となった場合でも、状況によっては「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、スタッフに対して休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要となることがあります。
実際にあった事例:院長の腰痛による休診
以前、ご相談いただいたある歯科医院での出来事です。
院長先生が腰痛の悪化で動けなくなり、やむなく数日間の休診を決定されました。
その際、院長先生は「自分の体調管理不足が原因だから、スタッフには申し訳ないが給与は払えないかもしれない」と心配されていました。
しかし、これはまさに休業手当の支払いが必要となるケースです。すぐに平均賃金を計算し、法律に基づいた休業手当を算出してスタッフの皆さんにお支払いいただきました。
事前に管轄の労働基準監督署に問い合わせたところ、「事業主の都合」と確認がとれました。
【3ステップで完了】平均賃金の計算方法
それでは、平均賃金の具体的な計算方法を3つのステップで見ていきます。この手順通りに進めれば、誰でも計算が可能です。

計算の基本式
平均賃金 = 算定期間の賃金総額 ÷ 算定期間の総日数(暦日数)
産前産後休業・育児介護休業・使用者の責めに帰すべき事由による休業など所定の控除期間がある場合は、その期間の日数と賃金を控除して算定します。
Step 1:算定期間の確定
算定期間は、「算定すべき事由が発生した日」の直前の賃金締切日から遡って3ヶ月間です。
算定すべき事由が発生した日の例:
・解雇の場合→解雇を通告した日
・事業主都合による休業の場合→休業させた日
・有給休暇の場合→有給休暇を取得した日(連続して取得した場合は最初の日)
例えば、賃金締切日が毎月末日で、解雇予告を8月10日に行う場合、算定期間は7月31日から遡って「5月、6月、7月」の3ヶ月間となります。
Step 2:賃金総額の算出
次に、Step 1で確定した3ヶ月間に支払われた賃金の総額を計算します。ここで注意が必要なのが、「何が賃金に含まれるか」です。
【賃金総額に含めるもの】
- 基本給
- 資格手当
- 役職手当
- 通勤手当(非課税分も含む)
- 時間外手当(残業代)
※名称に関わらず労働の対償として支払われるすべてのもの
【賃金総額に含めないもの】
- 賞与(3ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの)
- 結婚祝金など臨時に支払われた賃金
- 退職金
Step 3:平均賃金の計算
最後に、Step 2で算出した賃金総額を、Step 1の期間の「総日数(暦日数)」で割ります(出勤日数ではありません)。
ただし、産前産後休業・育児介護休業・使用者の責めに帰すべき事由による休業など所定の控除期間がある場合は、その期間の日数と賃金を控除して算定します。
【月給制スタッフ】歯科衛生士Aさんの計算例
月給制の歯科衛生士Aさん(賃金は末日締め、翌10日払い)を8月10日に解雇予告する場合の平均賃金を計算してみましょう。
算定条件
- 算定期間:5月1日~7月31日(総日数:31日+30日+31日=92日)
各月の給与明細:
| 月 | 基本給 | 資格手当 | 通勤手当 | 残業代 | 合計 |
| 5月分 | 250,000円 | 30,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 300,000円 |
| 6月分 | 250,000円 | 30,000円 | 10,000円 | 15,000円 | 305,000円 |
| 7月分 | 250,000円 | 30,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 300,000円 |
計算手順
① 賃金総額の計算
300,000円 + 305,000円 + 300,000円 = 905,000円
② 平均賃金の計算
905,000円 ÷ 92日 = 9,836円95銭
※平均賃金の端数は1銭未満を切り捨て。実際に手当を支払うときは1円未満を四捨五入します。
この場合、Aさんの平均賃金は9,836円95銭となります。
【時給制スタッフ】歯科助手Bさんの計算例
次に、時給制(時給1,200円)の歯科助手Bさん(賃金は末日締め、翌10日払い)が、院長の体調不良により8月10日から休業する場合の平均賃金を計算します。
算定条件
- 算定期間:5月1日~7月31日(総日数:92日)
各月の勤務状況と給与:
| 月 | 勤務日数 | 労働時間 | 給与 |
| 5月分 | 10日 | 80時間 | 96,000円 |
| 6月分 | 8日 | 60時間 | 72,000円 |
| 7月分 | 12日 | 100時間 | 120,000円 |
原則計算(まずは通常の計算)
① 賃金総額の計算
96,000円 + 72,000円 + 120,000円 = 288,000円
② 平均賃金の計算(原則)
288,000円 ÷ 92日 = 3,130円43銭
原則通り計算すると、Bさんの平均賃金は3,130円43銭となります。
しかし、時給制や日給制のスタッフの場合、この金額が著しく低くなることがあります。そこで登場するのが「最低保証額」という考え方です。
パート・アルバイトで必須!「最低保証額」の計算とは?
パート・アルバイトのように勤務日数が少ないスタッフの場合、先ほどの原則通りの計算(賃金総額を暦日数で割る)を行うと、1日あたりの平均賃金が非常に低くなってしまうことがあります。
これでは、スタッフの生活保障という本来の目的が果たせないため、労働基準法では「最低保証額」というルールを設けています。
そして、原則通りの計算結果と、この最低保証額を比較し、金額が高い方を平均賃金として採用しなければならないと定められています。
この最低保証額の計算を見落としてしまうケースがあり、トラブルの原因となりがちですので、特に注意が必要です。

最低保証額の計算方法
最低保証額は、以下の式で計算します。
最低保証額 = (算定期間の賃金総額 ÷ 算定期間の労働日数) × 60%
それでは、先ほどの歯科助手Bさんの例で、最低保証額を計算してみましょう。
歯科助手Bさんの最低保証額計算
- 算定期間の賃金総額:288,000円
- 算定期間の労働日数:10日 + 8日 + 12日 = 30日
③ 最低保証額の計算
(288,000円 ÷ 30日) × 60% = 9,600円 × 0.6 = 5,760円00銭
④ 金額の比較と決定
- 原則計算の金額:3,130円43銭
- 最低保証額:5,760円00銭
この2つを比較すると、最低保証額の方が高くなります。したがって、Bさんの平均賃金として採用すべき金額は「5,760円」となります。
もし休業手当を支払う場合は、この5,760円の60%以上(3,456円以上)を支払う必要があります。
このように、時給制や日給制のスタッフの平均賃金を計算する際は、必ず最低保証額も計算し、比較することを忘れないでください。
平均賃金計算のよくある疑問と注意点
計算ミスが招くリスク
平均賃金の計算をもし間違えてしまい、支払うべき手当が不足していた場合、それは「賃金の未払い」となります。
スタッフから未払い賃金の請求を受ける可能性や、最悪の場合、労働基準監督署から是正勧告を受けるリスクも考えられます。
正確な計算は、医院を法的なリスクから守るためにも非常に重要です。
社労士が教える平均賃金計算の労務管理ポイント
給与計算との連動が重要
平均賃金の計算は、日頃の給与計算が正確に行われていることが前提となります。
残業代の未払いや手当の計算ミスがあると、平均賃金も正確に算出できません。日々の労働時間管理と給与計算を適切に行うことが、平均賃金計算の正確性につながります。
就業規則への明記が必要
休業手当の支払い条件や、有給休暇取得時の賃金計算方法については、就業規則に明記しておく必要があります。
事前にルールを定めておくことで、いざという時にスムーズに対応できます。
記録の保管が不可欠
給与明細や労働時間の記録は、最低3年間(できれば5年間)は保管しましょう。
平均賃金の計算が必要になった際に、正確な記録がなければ正しい金額を算出できません。
まとめ:適切な平均賃金の計算で働きたくなる組織へ
本記事では、歯科医院における平均賃金について、基本的な考え方から具体的な計算方法まで、実例を交えて詳しく解説しました。
重要ポイント
- 平均賃金は、解雇予告手当・休業手当・有給休暇の賃金などの計算に必要
- 算定期間は「事由発生日の直前の賃金締切日」から遡って3ヶ月間
- 時給制・日給制のスタッフは、必ず「最低保証額」も計算して比較すること
- 院長の体調不良による休診でも、休業手当の支払いが必要になる場合がある
- 計算ミスは「賃金の未払い」となり、労務トラブルの原因になる
歯科医院の院長先生が、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現するため、平均賃金の正しい理解と計算をぜひ実践してみてください。
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