神戸市で歯科医院を経営されている院長先生。
「診療後の片付けは残業代に含まれるの?」
「準備時間や着替えの時間はどう扱えばいい?」
「残業代の計算方法がよくわからない…」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
歯科医院では、診療時間だけでなく準備や片付け、器具の滅菌など「見えにくい労働時間」が発生しやすく、労務トラブルの原因になることが少なくありません。
そこでこの記事では、神戸市の歯科医院向けに労務管理と生成AI活用の支援を行う社労士が、残業代の正しい計算方法と労働時間の考え方を詳しく解説します。
この記事でわかること
- 診療後の片付けや準備時間が労働時間に含まれるかの判断基準
- 歯科医院特有の残業代計算方法(特例措置含む)
- 固定残業代制度の適切な運用方法
目次
歯科医院の労働時間の基本ルール
労働時間とは「指揮監督下にある時間」
労働基準法では、労働時間を「使用者の指揮監督下にある時間」と定義しています。
つまり、歯科医院からの指示があり業務を行う必要がある時間は、すべて労働時間となります。
重要なのは、「診療時間=労働時間」ではないということです。
法定労働時間と歯科医院の特例措置
原則として、法定労働時間は「1日8時間・1週40時間」と定められています。
ただし、従業員10名未満の歯科医院では「1週44時間」まで認められる特例があります。
この特例を「特例措置対象事業場」といい、歯科医院を含む保健衛生業が該当します。ただし、1日の労働時間は通常どおり8時間が上限です。
2026年4月に労働基準法の大幅な改正が予定されており、この特例措置は廃止される可能性があります。
診療後の片付けは労働時間に含まれる?
労働時間に含まれる業務
歯科医院における以下の業務は、すべて労働時間として扱う必要があります。
✅ 診療前の準備作業
- 診療室の清掃・準備
- 器具の準備・セッティング
- カルテの確認・準備
- 朝礼への参加
✅ 診療後の片付け作業
- 器具の洗浄・滅菌処理
- 診療室の清掃・片付け
- カルテ記録の入力
- 会計処理・レセプト業務
✅ その他の業務
- 業務に関する研修・ミーティング
- 訪問診療の移動時間
- 医院指定の制服への着替え時間
判断が難しいケースと対応方法
詳しくは、『タイムカードは着替えてから打刻していい?労働時間の正しい扱い方』の記事をご覧ください。
明確に義務付けられていなくても、暗黙の了解で、休憩中でも「電話が鳴れば出る」となっている場合は、労働時間となります。
残業代の正しい計算方法
基本的な計算式
残業代は以下の計算式で算出します。
残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間
時間外労働(残業)に対する割増率:
25%以上が必要(60時間超の時間については、50%以上が必要)
※その他の割増率については、後述します。
1時間あたりの基礎賃金の計算
【月給制の場合】
1時間あたりの基礎賃金(時給) = 月給 ÷ 月平均所定労働時間(※)
【※月平均所定労働時間の計算】
月平均所定労働時間 = (365日 – 年間休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月
計算例
- 月給: 25万円
- 年間休日: 105日
- 1日の所定労働時間: 8時間
月平均所定労働時間 = (365日 – 105日) × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 約173.3時間
1時間あたりの基礎賃金 = 25万円 ÷ 173.3時間 = 約1,443円
割増率の種類
- 法定時間外労働(1日8時間・週40時間超): 25%以上
- 月60時間超の時間外労働: 50%以上
- 深夜労働(22時〜5時): 25%以上
- 法定休日労働: 35%以上
深夜労働と時間外労働が重なる場合は、割増率を合算します(25%(60時間以内) + 25% = 50%)。
法定内残業と法定外残業の違い
残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。
【法定内残業】
所定労働時間を超えるが、法定労働時間(1日8時間・週40時間)内の残業。
例: 所定労働時間が7時間の医院で、8時間働いた場合の1時間分
→ 割増率の適用なし(通常の時間給でOK)
【法定外残業】
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える残業。
→ 25%以上の割増賃金が必要
固定残業代(みなし残業代)制度の正しい運用方法
固定残業代とは
固定残業代(みなし残業代)とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ定めた一定時間分の残業代を毎月固定で支給する制度です。
ただし、固定残業時間を超えた場合は、超過分の残業代を別途支払う必要があります。
適法な固定残業代の要件
裁判例により、以下の要件を満たすことが必要とされています。
✅ 対価性
固定残業代が時間外労働等の対価であることが明確であること。
名称が特別手当や調整手当となっている場合、固定残業代として認められる可能性が極めて低くなります。
✅ 明確区分性
基本給と固定残業代部分が明確に区分できること。
具体的には、以下を雇用契約書・就業規則・給与明細に明記する必要があります。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代の金額
- 固定残業時間(例: 30時間分)
- 超過分は別途支払う旨
固定残業時間の明記は必須とまでは言えませんが、スタッフさんの納得感を高め、不要な労使トラブルを避ける観点から、極力明記すべきです。
固定残業代の計算例
【手当型の計算】
手当として固定残業代を支給する方法
- 基本給: 20万円
- 月平均所定労働時間: 173.3時間
- 固定残業時間: 30時間
- 割増率: 1.25
1時間あたりの基礎賃金 = 20万円 ÷ 173.3時間 = 約1,154円
固定残業代 = 1,154円 × 1.25 × 30時間 = 約43,275円
給与明細の記載例
- 基本給: 200,000円
- 固定残業代: 43,275円(30時間分)
- 合計: 243,275円
※実際の残業が35時間の場合、5時間分の追加残業代(約7,213円)を別途支払う必要があります。
固定残業代制度の詳細は、『固定残業代制度の正しい導入手順』の記事で解説していますので、ご確認ください。
社労士が教える労務管理のポイント
労働時間の記録方法
労働時間の適正な把握は使用者の責務です。以下の方法で客観的に記録しましょう。
✅ 推奨される記録方法
- タイムカード
- 勤怠システム(クラウド勤怠管理システム)
→パソコンでの打刻、スマートフォンや専用機器での打刻など様々な方法があります。
労働時間の記録は5年間保存する義務があります
36協定の締結
法定労働時間を超えて労働させる場合、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必須です。
時間外労働の上限
- 原則: 月45時間・年360時間
- 特別条項付きでも: 月100時間未満・年720時間
これらを超えると罰則の対象となります。
歯科医院の場合は、原則で対応可能なケースが多いです。
36協定届の記載例などについては、「歯科医院院長のための36協定の正しい記入例と注意点」をご覧ください。
トラブル予防のための対策
✅ 就業規則の整備
労働時間、休憩時間、休日、残業代の計算方法を明記しましょう。
✅ 雇用契約書の作成
労働条件を書面で明示し、スタッフ本人に交付することが法律で義務付けられています。
✅ 定期的な労働時間の見直し
残業が常態化していないか、月1回程度チェックしましょう。
よくある質問
まとめ
本記事では、歯科医院の残業代計算について詳しく解説しました。
重要ポイント
- 診療後の片付けや準備時間は労働時間に含まれる
- 従業員10名未満の歯科医院は週44時間の特例措置が適用可能
- 残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算
- 固定残業代制度は適法要件を満たせば有効
- 36協定の締結と労働時間の適正な記録が必須
適切な労務管理は、スタッフの定着率向上と労務トラブルの予防につながります。
神戸市の歯科医院の皆様が、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現できるよう、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
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