神戸市で歯科医院を経営されている院長先生。
「診療時間後のミーティングは残業代を払う必要があるのか?」
「休日の研修会に参加させたら、労働時間になるのか?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
スタッフの技術向上や情報共有のために実施している研修会やミーティング。その時間が労働時間に該当するかどうかで、残業代の支払い義務が大きく変わってきます。
そこでこの記事では、歯科医院の労務管理を支援する社労士が、診療時間外の研修会・ミーティングが労働時間に該当するかの判断基準と、残業代の要否について詳しく解説します。
この記事でわかること
- 研修会・ミーティングが労働時間に該当する判断基準
- 残業代の支払いが必要なケースと不要なケース
- 歯科医院特有の労務管理のポイントと実務対応
目次
労働時間の基本的な考え方
労働時間とは何か?法的な定義
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを指します。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当すると明記されています。
つまり、診療時間だけでなく、診療の準備や後片付け、そして研修会やミーティングも、条件次第では労働時間として扱わなければなりません。
歯科医院の法定労働時間の特例
一般的に、1日8時間、1週間40時間が法定労働時間の上限です。
しかし、従業員10名未満の歯科医院は「特例措置対象事業場」として、1週間44時間まで認められています。ただし、1日8時間という制限は変わりません。
この特例を適用している歯科医院でも、これを超える労働には36協定の締結と割増賃金の支払いが必要です。
研修会・ミーティングが労働時間になるかの判断基準
厚生労働省資料などから読み解く4つの判断ポイント
研修会やミーティングが労働時間に該当するかは、以下の4つのポイントで総合的に判断されます。
1. 参加の強制性
医院や院長から「参加するように」と明確な指示があったか?
明示的な指示がなくても、参加しないと業務に支障が出る、暗黙の了解、人事評価に影響するなど、実質的に参加を余儀なくされている場合は強制とみなされます。
2. 業務との関連性
研修内容が現在または今後担当する業務に直接必要な知識・技術であるか?
業務上必要不可欠な内容であれば、労働時間に該当する可能性が高くなります。
3. 不参加による不利益の有無
参加しなかった場合に減給処分や人事評価のマイナス、業務遂行に必要な情報が得られないなどの不利益があるか?不利益がある場合は実質的な強制となります。
4. レポート提出などの義務
研修後にレポート提出を求められたり、内容について報告義務があったりする場合は、業務の一環とみなされます。
労働時間に該当する具体例
以下のようなケースは、労働時間として扱う必要があります。
- 新人スタッフの初期研修:
業務に就くために必須の内容であり、参加が義務付けられているため労働時間に該当します。 - 院長指示による外部研修への休日参加:
休日に特定の研修会への参加を指示され、後日レポート提出を求められる場合は労働時間となります。 - 診療前の必須ミーティング:
始業時刻前に行われるミーティングでも、参加が義務付けられ、当日の診療に必要な情報共有を行う場合は労働時間です。 - 業務見学:
新しい治療法や機器の使い方など、これを見学しなければ実際の業務に就けない場合の見学時間は労働時間になります。
労働時間に該当しない具体例
一方、以下のようなケースは労働時間に該当しません。
- 完全自由参加の勉強会:
診療時間外に実施され、参加は任意で、不参加による不利益がなく、レポート提出も求められない場合。 - 自己啓発のための学習:
スタッフ自らが申し出て、業務時間外に技術向上のため個人的に学習する時間は労働時間になりません。 - 任意参加の親睦会:
業務とは関係なく、スタッフ間の親睦を深めるための集まりで、完全に自由参加の場合。
よくあるグレーゾーンのケース
「任意参加」と言っているミーティング
形式上は「任意参加」としていても、実質的に強制となっているケースが多く見られます。
❌ 間違った対応: 「任意参加だから残業代は不要」と判断する。
✅ 正しい対応: 以下の点を確認し、実質的に強制になっていないか判断します。
- 参加しなかったスタッフに対して注意や指導をしていないか
- 人事評価で参加状況を考慮していないか
- ミーティングで共有される情報が業務遂行に不可欠でないか
朝礼・夕礼の扱い
診療開始前の朝礼や診療終了後の夕礼は、内容と強制性によって判断が分かれます。
労働時間になるケース:
- 参加が義務付けられている
- 当日の診療予定や患者情報など、業務に必要な情報共有を行う
- 不参加の場合、始業時刻に間に合っても遅刻扱いになる
労働時間にならないケース:
- 完全に自由参加で、不参加による不利益がない
- 業務とは関係ない一般的な話題のみを扱う
外部セミナーへの参加
休日に開催される歯科関連のセミナーや学会への参加は、判断が難しいケースです。
労働時間になるケース:
- 院長が特定のセミナーへの参加を指示した
- 参加費用を医院が全額負担し、参加が義務付けられている
- セミナー後のレポート提出が必須
労働時間にならないケース:
- スタッフ自らが希望して参加する
- 参加費を自己負担している
- 不参加による不利益がない
残業代の計算と支払い方法
割増賃金率の基本
研修会やミーティングが労働時間と判断された場合、時間帯によって以下の割増賃金が必要です。
- 法定労働時間超過: 通常賃金の25%以上の割増(1日8時間、週40時間または44時間を超えた場合) ※月間で60時間超の場合は、超えた分は50%以上の割増
- 法定休日労働: 通常賃金の35%以上の割増
- 深夜労働: 通常賃金の25%以上の割増(22時〜翌5時)
固定残業代(みなし残業代)の注意点
一部の歯科医院では「固定残業代(みなし残業代)」を採用していますが、以下の点に注意が必要です。
- みなし残業時間と金額を雇用契約書と給与明細に明記する
- みなし時間を超えた分は別途支払う必要がある
- 実際の残業時間がみなし時間より少なくても、固定額を支払う
社労士が教える歯科医院の労務管理ポイント
研修会・ミーティングの適切な運用方法
労務トラブルを防ぐために、以下の3つの運用方法をお勧めします。
1. 勤務時間内に実施する
可能な限り、研修会やミーティングは診療時間内に組み込みましょう。昼休憩時間を活用する場合は、別途休憩時間を確保する必要があります。
2. 任意参加の場合は明確に周知する
本当に任意参加とする場合は、案内文書に「参加は任意です。」「不参加による不利益は一切ありません。」と明記し、実際にそのとおり運用します。
3. 労働時間として扱う場合は適切に記録する
タイムカードやICカードなど、客観的な記録方法で研修時間を記録し、給与計算に反映させます。
就業規則への明記
研修会やミーティングの扱いについて、就業規則に明記しておくことが重要です。
記載例:
「業務上必要な研修・教育訓練で、使用者が参加を指示したものは労働時間として扱い、所定の賃金を支払う。自由参加の勉強会等は、原則として労働時間に含まない。」
労働時間の適正な記録と保存
厚生労働省のガイドラインでは、使用者に労働時間を適正に把握する責務があると定めています。
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など客観的な記録が望ましい
- 自己申告制の場合は、実態との乖離がないか定期的に確認する
- 労働時間の記録は5年間保存する義務がある
よくある質問と誤解
まとめ:適切な労務管理で働きたくなる歯科医院へ
本記事では、診療時間外の研修会・ミーティングが労働時間に該当するかの判断基準と、残業代の要否について詳しく解説しました。
重要ポイント
- 労働時間は「使用者の指揮命令下にある時間」で判断する
- 参加の強制性、業務との関連性、不参加の不利益で総合的に判断
- 「任意参加」でも実質的に強制なら労働時間に該当する
- 労働時間と判断された場合は適切に記録し、残業代を支払う
神戸市の小規模歯科医院の皆様が、適切な労務管理を通じて、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現できるよう、ぜひ実践してみてください。
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