神戸市で歯科医院を経営されている院長先生。
「週44時間の特例措置が廃止されるかもしれない」という話を耳にされたことはありませんか?
2025年1月、厚生労働省の研究会が発表した報告書によると、特定の業種で常時10人未満の事業場に認められている「週44時間特例措置」の廃止が検討されています。
もしこの特例が廃止されれば、現在週44時間で運用している歯科医院は、週40時間への変更を迫られることになります。
そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、週44時間特例措置廃止の影響と、今からできる具体的な準備方法を詳しく解説します。
この記事でわかること
- 週44時間特例措置廃止の最新動向と施行時期の見通し
- 廃止された場合の歯科医院への具体的な影響
- 今すぐ始められる3つの準備ステップ
目次
週44時間特例措置とは?廃止検討の背景
週44時間特例措置の基本
週44時間特例措置とは、労働基準法に定められた特別なルールです。
通常、法定労働時間は「1日8時間・週40時間」が上限ですが、以下の条件を満たす事業場(特例措置対象事業場)では、「1日8時間・週44時間」まで認められています。
特例措置の対象となる条件
- 常時10人未満の労働者を使用する事業場であること
- 保健衛生業(歯科医院、病院、診療所など)に該当すること
歯科医院の多くはこの条件に当てはまるため、週44時間の運用が可能となっています。
常時10人未満の労働者を使用する事業場:
パートやアルバイト、非常勤DRも含めた人数です。
分院がある場合は、本院と分院それぞれの医院で労働者数をカウントします。
なぜ廃止が検討されているのか
2025年1月に発表された厚生労働省の研究会報告書では、特例措置廃止の検討理由として以下の点が挙げられています。
廃止検討の主な理由
- 対象事業場の87.2%が特例を利用していない(既に週40時間以内で運用)
- 同じ業務でも事業場規模で法定労働時間が異なるのは不公平
- 働き方改革の流れに逆行する規定である
ただし、この特例に依存して運営している事業所もあることから、慎重に議論が進められているのが現状です。
廃止の時期はいつ?
2025年11月現在、具体的な施行時期は未定です。
しかし、2026年度の労働基準法改正での廃止が検討されており、早ければ2027年以降に施行される可能性があると考えられます。
施行までには猶予期間が設けられる可能性が高いため、今から準備を始めれば十分に対応できます。
廃止されると歯科医院にどんな影響があるのか
影響①:労働時間(シフト)の調整が必要になる
現在週44時間で運用している医院は、週40時間への変更が必要になります。
具体例:週6日診療の場合
現在(週44時間)
月〜金:8時間×5日=40時間
土曜:4時間
合計:44時間
廃止後(週40時間)
月〜金:8時間×5日=40時間
土曜:0時間(休診)
土曜日を勤務にする場合は、平日の勤務時間短縮が必要
週40時間を超えた労働は時間外労働となり、割増賃金(1.25倍)の支払いが必要になります。
影響②:人件費の増加
同じ診療時間を維持する場合、以下のコストが発生します。
- 時間外労働の割増賃金(週40時間超の労働に対して)
- 新規スタッフの採用費用(人員を増やす場合)
- 人件費の総額増加(複数スタッフで業務を分担する場合)
これまでの週4時間分が残業(時間外労働)となる場合:
月額で約1万5千円〜2万円程度の人件費増加が見込まれます(時給1,000円×1.25倍×週4時間×4週間=2万円)。
影響③:診療体制の見直し
週40時間に収めるためには、以下の選択肢から検討する必要があります。
- 診療日数の削減(週6日→週5日など)
- 診療時間の短縮
- シフトパターンの見直し、シフト制の導入
- 変形労働時間制の活用
今すぐ始める!3つの準備ステップ
ステップ1:現状の労働時間を正確に把握する
まず、スタッフ全員の実際の労働時間を正確に把握しましょう。
確認すべき項目
- 診療開始前の準備時間(器具の準備、清掃など)
- 診療時間
- 診療終了後の片付け時間
- 休憩時間(実際に取れているか)
- カルテ記入や事務作業の時間
実施方法
診療時間だけでなく、前後の準備・片付け時間も労働時間に含まれます。
ステップ2:週40時間に収める方法を検討する
現状把握ができたら、週40時間に収めるための具体的な方法を検討します。
方法①:1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する
歯科医院で最も効果的な方法です。月末・月初など特定の時期が忙しい場合に有効です。
具体例
・月初の第1週:週48時間勤務
・第2〜3週:週40時間勤務
・第4週:週32時間勤務
→月平均で週40時間以内に収める
方法②:シフト制を導入する
診療時間は維持しながら、スタッフの勤務時間をずらす方法です。
シフト例
早番:9:00〜18:00(休憩1時間、実働8時間)
遅番:11:00〜20:00(休憩1時間、実働8時間)
この方法では、診療時間9:00〜20:00を維持できます。
1か月変形の労働時間制とシフト制を組み合わせて運用することで、より多くのシフトパターンを設定することも可能です。
方法③:診療時間・診療日を見直す
最もシンプルですが、患者さんへの影響が大きい方法です。
- 週6日診療→週5日診療に変更
- 土曜日の診療時間を短縮
- 平日の診療終了時間を早める
ステップ3:就業規則と労使協定を整備する
変更内容が決まったら、必要な規定や書類を整備します。
①就業規則の改定
労働時間の規定を週40時間に変更します。
(記載例)
第○条 所定労働時間は、1週40時間、1日8時間とする。
②1ヶ月単位の変形労働時間制に関する規定
1か月単位の変形労働時間制を採用する場合に必要です。
- 対象期間(1ヶ月)
- 対象となるスタッフ
- 対象期間の起算日
- 各日、各週の労働時間 など
③36協定の見直し
時間外労働が発生する場合は、36協定の締結が必要です。
注意点:
変更内容をスタッフに説明し、同意を得ることが重要です。一方的な不利益変更は労働トラブルの原因になります。
ただし、今回の変更については、労働時間の短縮になりますので、不利益変更の可能性は低いと考えられます。
トラブルを防ぐための注意点
スタッフとのコミュニケーション
労働時間の変更は、スタッフの生活に直接影響します。
コミュニケーションのポイント
- 変更の理由と背景を丁寧に説明する
- スタッフの意見や要望を聞く機会を設ける
- 変更までの準備期間を十分に取る(最低3ヶ月)
- 給与水準が下がらないよう配慮する
患者さんへの影響を最小限にする
診療時間や診療日を変更する場合の対応策です。
- 院内掲示で告知する
- ホームページ、SNSでも情報発信する
- 予約システムを活用し、患者さんの希望に柔軟に対応する
- 他の曜日・時間帯での受診を提案する
労働時間の記録を適切に管理する
廃止後も引き続き、労働時間管理が求められます。
推奨する管理方法
- タイムカードまたはICカード式の勤怠管理システムを導入
- スマートフォンアプリでの打刻も有効
- 客観的な記録を5年間保存する
- 残業が発生した場合は、理由と承認記録を残す
社労士が推奨する労務リスク管理
未払い残業代請求のリスクを防ぐ
週44時間から週40時間への変更時に最も注意すべきポイントです。
リスク回避のチェックリスト
- 週40時間を超える労働には割増賃金を支払っているか
- 労働時間の記録は客観的な方法で行っているか
- 休憩時間を確実に取得できているか
- 始業前・終業後の作業時間も労働時間として計上しているか
- 36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ているか
労働基準監督署の調査に備える
調査で確認される主な項目
- 労働時間の記録方法と実態
- 36協定の締結・届出状況
- 割増賃金の支払い状況
- 就業規則の整備状況
- 年次有給休暇の取得状況
日頃から適切な労務管理を行い、書類を整備しておくことが重要です。
スタッフの定着率を高める工夫
労働時間の適正化は、スタッフが長く働きたくなる環境づくりにつながります。
定着率向上のポイント
- ワークライフバランスを重視した勤務体制
- スタッフの希望を聞きながらシフトを組む
- キャリアアップの機会を提供する
- 適切な評価と処遇改善を行う
歯科衛生士不足の現状では、既存スタッフの定着が医院経営の重要な鍵となります。
よくある質問
まとめ:週44時間特例廃止に備えて今できること
本記事では、週44時間特例措置廃止の影響と、歯科医院が今すぐ始められる準備方法について解説しました。
重要ポイント
- 週44時間特例は2026年度の法改正で廃止が検討されている
- 廃止後は週40時間への変更が必要で、人件費増加や診療体制の見直しが発生する
- 今から労働時間の把握・制度設計・書類整備を進めれば十分対応できる
- 1ヶ月単位の変形労働時間制が歯科医院に最適な対応策
- スタッフとの丁寧なコミュニケーションが成功の鍵
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