小規模な歯科医院において、就業規則は重要な役割を果たします。
それは、患者さんの大切な情報を守りながら、スタッフさんが安心して働ける環境づくりの基盤となるものだからです。
しかし、多くの院長先生からこのようなご相談をいただきます。
「10人未満だから就業規則は不要では?」
「患者情報の取り扱いルールをどう定めればいい?」
「スタッフの守秘義務をどう徹底させるべき?」
そこでこの記事では、神戸市などの歯科医院をサポートする社会保険労務士&生成AI活用アドバイザーが患者情報保護とスタッフさんの適切な管理を両立させる就業規則のポイントを解説します。
目次
小規模歯科医院に就業規則が必要な理由
10人未満でも就業規則が求められる背景
法律上、スタッフさんが10人未満の事業所では就業規則の作成義務はありません。
しかし、歯科医院には特別な事情があります。患者情報という極めてセンシティブな個人情報を日常的に扱う職場だからです。
さらに、個人情報保護法が2017年に改正されました。この改正により、1件でも個人情報を保有していれば法の対象事業者となっています。
そのため、小規模な歯科医院であっても対応が必要です。患者情報を守る仕組みを整えましょう。また、スタッフさんが安心して働けるルールの両方を明文化することが重要です。
就業規則がもたらす3つのメリット
就業規則を整備することで、以下のような効果が期待できます。
まず、患者さんからの信頼が高まります。個人情報の取り扱いルールが明確になるからです。安心して治療を受けていただける環境を示せます。
次に、スタッフさんの不安が軽減されます。労働条件や休暇制度が明確になります。さらには守秘義務の範囲もはっきりします。何をどこまで守ればよいのかが分かりやすくなるのです。
そして、医院を法的リスクから守ることができます。万が一トラブルが発生した際はどうでしょうか。就業規則という明文化されたルールがあれば、適切な対応の根拠となります。
就業規則は、まれに現れる不良スタッフから、大切な他のスタッフさんを守るためにも不可欠です。
患者情報保護のための必須条項
守秘義務の明確な定義
就業規則には、守秘義務の対象範囲を具体的に記載する必要があります。
歯科医院における守秘義務の対象は幅広いものです。診療録(カルテ)、処方せん、レントゲン写真、歯科衛生士業務記録といった診療関連の情報が含まれます。
また、患者さんの基本情報も対象です。具体的には、氏名・住所・電話番号・生年月日などです。
さらに注意が必要な点があります。治療とは直接関係のない会話の中で知り得た情報も守秘義務の対象です。
患者さんの私生活に関する情報がこれに該当します。こうした範囲を明確にすることで、スタッフさんは何を守るべきかを正しく理解できます。
SNSや情報端末の利用制限
近年、情報漏洩の大きなリスクとなっているものがあります。それは、SNSや個人のスマートフォンの不適切な使用です。
就業規則には、院内での私用携帯電話の持ち込みや使用に関するルールを明記しましょう。例えば、次のような規定が有効です。
「診療エリアへの私用スマートフォンの持ち込みは禁止する」
「SNSへの医院に関する投稿は事前承認を必要とする」
といった内容です。
さらに、患者さんの症例写真をホームページに掲載する場合はどうでしょうか?
この手続きについても、ルール化しておくことをお勧めします。
情報漏洩時の対応手順
万が一、患者情報が漏洩してしまった場合はどうすればよいでしょうか?
その対応手順も就業規則に定めておくべきです。
具体的には、次のような流れを明文化します。
「漏洩を発見したスタッフは直ちに院長に報告する」
「院長は原因調査と再発防止策を検討する」
「必要に応じて個人情報保護委員会へ報告する」
といった内容です。
このような対応手順があることで、スタッフさんは落ち着いて行動できます。適切な対応をとることができるのです。
スタッフ管理のための必須条項
労働条件の明示と勤務体系
歯科医院の勤務体系は複雑になりがちです。シフト制や変形労働時間制などがあるためです。
就業規則には、始業・終業時刻、休憩時間、休日を明記しましょう。また、シフト表の発行タイミングや変更ルールも必要です。
さらに、始業前の準備時間に関するルールも明確にすることが重要です。例えば、「始業時刻前にユニフォームに着替える」「始業時刻には診療準備を完了している」といった内容を定めます。
なお、時間外労働や休日労働をお願いする場合があります。
その際は、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。さらに、就業規則と雇用契約書にも時間外労働の有無を明示しましょう。これにより、トラブルを予防できます。
たまに、「着替えの時間」「準備時間」を勤務時間としてカウントされていない医院さんがありますが、これらは原則勤務時間とカウントされます。
服務規律と懲戒処分
スタッフさんに守ってもらいたい職場のルールを服務規律として定めます。
歯科医院では、次のような項目が一般的です。
「清潔を保持し、医療機関にふさわしい身だしなみを心がけること」
「患者さんへの接遇態度に配慮すること」
「無断欠勤をしないこと」
といった内容です。
そして、これらのルールに違反した場合はどうするのか。
懲戒処分についても段階的に定めておきましょう。これにより、医院を守る土台ができます。ただし、懲戒処分を行う場合は慎重な手続きが必要です。
ハラスメント防止規定
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止は義務です。すべての事業所に課せられています。
就業規則には、ハラスメントの定義を明記しましょう。
また、禁止行為、相談窓口、対応手順も必要です。小規模な歯科医院では「院長以外の窓口対応者がいない」という状況になりやすいです。
そのため、外部の相談窓口を設けることも検討すべきでしょう。
就業規則作成と運用のポイント
スタッフさんを巻き込んだ作成プロセス
就業規則は、一方的に押し付けるものではありません。スタッフさんと一緒に作り上げるものという姿勢が大切です。
作成過程でスタッフさんの意見を聴くことをおすすめします。
また、説明会を開催することも効果的です。これにより、ルールへの理解と納得感が高まります。
法律上は10人以上の事業所のみ意見聴取が義務付けられています。しかし、10人未満でも同様のプロセスを踏むことをお勧めします。
法律上は、スタッフの過半数代表者の意見を聴くことが義務とされていますが、可能な限り幅広くスタッフさんの声を拾い上げることをお勧めします。
周知方法の工夫
作成した就業規則は、スタッフさん全員が常に確認できる状態にしておく必要があります。
休憩室への掲示、個別配布、電子データでの共有など、複数の方法を組み合わせることが効果的です。
また、新しくスタッフさんが入職される際はどうすればよいでしょうか。必ず就業規則の内容を説明しましょう。理解していただく時間を設けることが大切です。
周知がされていない就業規則は、その効力が無効となる可能性が極めて高いので注意が必要です。
定期的な見直しと更新
労働関係法令は頻繁に改正されます。そのため、年に1回程度、就業規則の内容を見直すことが重要です。
特に、重要な法改正があった場合は注意が必要です。働き方改革関連法や育児介護休業法の改正、ハラスメント防止措置の強化といった内容です。
これらの場合は、速やかに就業規則を更新しましょう。法改正への対応が遅れると、医院が法的リスクに晒される可能性があります。
神戸市の歯科医院向けサポート
活用できる補助金・助成金
神戸市内の歯科医院では、IT導入補助金やキャリアアップ助成金、両立支援等助成金といった制度を活用できます。
例えば、患者情報を適切に管理するためのシステム導入にはIT導入補助金が活用できます。
また、スタッフさんの正社員登用制度にはキャリアアップ助成金が、育児休業の取得支援には両立支援等助成金が使える可能性があります。
詳しくは、お近くのハローワークや労働局でご確認ください。
当事務所のサポート内容
当事務所では、歯科医院に特化した就業規則の作成・見直しサポートを行っています。
患者情報保護と労務管理の両立という歯科医院特有の課題に対応します。規程作成はもちろん、スタッフさん向けの守秘義務研修も実施可能です。
さらに、AIツールを活用した業務効率化のご提案も行っています。
AI活用を含めた労務管理のご相談はこちらをご覧ください。
https://ai.sr-konishi.jp
よくある質問
今後のアクション
今すぐ始められる第一歩
まずは、現在のスタッフさんへの情報共有方法を見直してみましょう。また、患者情報の取り扱いルールも確認が必要です。
口頭での指示だけでなく、文書化されたルールがあるかを確認しましょう。
もし明文化されていない場合は、厚生労働省のモデル就業規則をダウンロードすることから始められます。そして、自院の状況に合わせて修正していきましょう。
専門家に相談すべきタイミング
「医院でSNS投稿を始めようと思っている」
「守秘義務違反をしたスタッフさんへの対応に困っている」
「医療分野特有の就業規則のポイントを知りたい」
このような状況に直面した時が、専門家へ相談するタイミングです。トラブルが大きくなる前に、早めにご相談ください。適切な対応が可能になります。
継続的な改善の重要性
就業規則は一度作成して終わりではありません。医院の成長や法改正に合わせて継続的に見直していくものです。
当事務所では、神戸市内の歯科医院さんの個別の状況に合わせた就業規則の作成・見直しサポートを行っております。
初回のご相談は無料です。お気軽にお申し込みください。患者さんとスタッフさん、そして医院を守るための就業規則づくりを一緒に進めていきましょう。

















