神戸市で歯科医院を経営されている院長先生。
女性スタッフの妊娠報告を受けた際、「今は忙しい時期なのに…」と本音が漏れてしまったり、
育児休業の取得相談に対して「代わりの人を探すのが大変だ」と思わず言ってしまいそうになったことはありませんか?
実はこのような何気ない発言が、法律で禁止されている「妊娠・出産・育児介護休業ハラスメント」に該当する可能性があります。
そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、小規模歯科医院における妊娠・出産・育児介護休業ハラスメント(以下、マタハラ等)の注意点と具体的な防止措置を詳しく解説します。
歯科医院の特性から、妊娠・出産・育児に関したハラスメントの内容がメインとなっています。
この記事でわかること
- 妊娠・出産・育児介護休業ハラスメントの法的定義と事業主の義務
- 歯科医院で起こりやすい具体的なハラスメント事例
- 男性院長が知らず知らずのうちにハラスメントをしてしまうパターン
- 小規模歯科医院でも実施できる防止措置の具体的方法
目次
妊娠・出産・育児介護休業ハラスメント禁止の法的基礎知識
法律で定められた事業主の義務とは?
男女雇用機会均等法第11条の3と育児・介護休業法第25条により、事業主には職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。
この義務は企業規模に関わらず、スタッフ数名の小規模歯科医院でも例外なく適用されます。
また、2020年6月からは防止対策の強化が図られ、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止なども明確化されています。
マタハラ等の定義と2つの類型
マタハラ等とは、職場において行われる上司・同僚からの言動により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることを指します。
厚生労働省の指針(事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用
管理上講ずべき措置等についての指針)では、以下の2つの類型に分類されています。
類型1:制度等の利用への嫌がらせ型
産前休業、育児休業などの制度や措置の利用に関する言動により、就業環境が害されるものです。
例えば、育児休業の取得を相談したスタッフに対して「休業するなら昇給はない」と伝えたり、「忙しい時期にひとりだけ早く帰るなんて許せない」と発言することなどが該当します。
類型2:状態への嫌がらせ型
女性労働者が妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により就業環境が害されるものです。
妊娠報告を受けた際に「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言ったり、「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と発言することなどが該当します。
2025年4月・10月施行の育児・介護休業法改正のポイント
2025年4月と10月に、育児・介護休業法が段階的に改正され、事業主の義務が一層強化されています。
2025年4月改正のポイント
- 子の看護休暇が小学校3年生まで拡大、入学式等にも利用可能に
- 残業免除の対象が小学校就学前まで拡充
- 3歳未満の子を養育する労働者へのテレワーク導入(努力義務)
- 介護離職防止のための雇用環境整備と個別周知・意向確認の義務化 など
2025年10月改正のポイント
- 柔軟な働き方を実現するための措置義務化: 5つの措置の中から少なくとも2つ以上を選択して実施
- 個別の意向聴取・配慮義務: 妊娠・出産の申出時と子が3歳になるまでの適切な時期に、労働者の意向を個別に聴取し配慮 など
歯科医院で起こりやすいマタハラ等の具体例

男性院長が無自覚に行いがちな言動
歯科医院の多くは男性院長と女性スタッフという構成です。院長という立場、そして男性という性別だけでも、女性スタッフからは威圧感を感じやすい存在となります。
以下のような何気ない発言が、知らず知らずのうちにハラスメントになっている可能性があります。
| 場面 | ❌ NGワード(ハラスメントになる) | ⭕ OKワード(適切な伝え方) |
|---|---|---|
| 妊娠報告を受けた時 | 「今は忙しい時期なのに困ったな」 「妊娠するなら閑散期にしてほしかった」 「正直タイミング悪いよね」 | 「おめでとう!無理しないでね」 「体調を最優先にしてください」 「何か配慮してほしいことがあれば遠慮なく言ってね」 |
| つわりで体調不良の時 | 「妊娠は病気じゃないから頑張って」 「他のスタッフに迷惑がかかる」 「また休むの?」 | 「体調が辛いときは無理しないで休んでね」 「業務は調整するから心配しないで」 「必要なら早退していいからね」 |
| 育児休業の相談を受けた時 | 「休業中の代わりを探すのが大変だ」 「できれば短めにしてほしい」 「戻ってこれる保証はある?」 | 「制度について詳しく説明するね」 「いつ頃から休業を考えてる?」 「復帰後の働き方も相談しましょう」 |
| 時短勤務の申し出時 | 「時短なら重要な仕事は任せられない」 「給料も減るけどいいの?」 「他のスタッフより仕事量が減るね」 | 「どんな勤務時間を希望していますか?」 「できる範囲で業務を調整しましょう」 「お子さんの状況に応じて柔軟に対応します」 |
| 診療中のミスがあった時 | 「妊娠してから使えなくなったね」 「妊婦だからって甘えないで」 「ちゃんとやって」 | (診療後に)「さっきの件、確認しておこうか」 「体調面で何か気になることある?」 「サポートが必要なら言ってね」 |
| 業務配分を調整する時 | 「妊婦には任せられない」 「出産したら辞めるんでしょ?」 (一方的に)「この仕事は外すから」 | 「重いものを持つ作業は控えてもらおうと思うけど、どう?」 「体調的に配慮してほしいことはある?」 「今後の働き方について一緒に考えましょう」 |
言い方のポイント
- 本人の意向を確認する: 一方的に決めつけず、「どう思う?」「どうしたい?」と尋ねる
- 肯定的な表現を使う: 「〜できない」ではなく「〜しましょう」と提案する
- サポートの姿勢を示す: 「困っている」ではなく「サポートします」と伝える
- 感情的にならない: イライラしても深呼吸して、冷静に言葉を選ぶ
スタッフ間で起こるハラスメント
院長だけでなく、スタッフ同士の間でもハラスメントは発生します。女性が多い職場では、以下のような「人間関係からの切り離し」型のハラスメントが起こりやすい傾向があります。
- 「小さい子どもがいるから早く帰れていいね」と嫌味を言う
- 育児休業から復帰したスタッフを無視する、仲間外れにする
- 「また妊娠したの?」と言う
- 業務上必要な情報を意図的に伝えない
このようなスタッフ間のハラスメントを放置すると、院長自身が加害者でなくても、雇用主として法的責任を問われることがあります。
実際に私の知人女性が、「いいですね。子どもがいるから早く帰れて。」と未婚のスタッフに言われたことがあるそうです。
小規模歯科医院での防止措置の具体的方法
事業主が講じるべき措置【必須項目】
厚生労働省の指針では、事業主が必ず実施しなければならない措置が定められています。小規模歯科医院でも実施可能な具体的方法を紹介します。
措置1:事業主の方針の明確化と周知・啓発
- どんな行為がハラスメントに当たるか、ハラスメントを行ってはいけないという方針を就業規則や院内ルールに明記する
- ハラスメントを行った者への罰則(懲戒規定)を就業規則に定める
- スタッフミーティングや個別面談で、院長の方針を繰り返し伝える
- 妊娠・出産・育児休業等に関する制度の内容を全スタッフに周知する
措置2:相談に応じ、適切に対応するための体制整備
- 相談窓口を設置し、全スタッフに周知する(院長自身、信頼できるスタッフ、または外部の社労士や弁護士など)
- 相談方法は対面だけでなく、メールやLINE、書面などスタッフが相談しやすい複数の方法を用意する
- 相談者のプライバシーを厳守することを明示する
- 相談したことを理由に不利益な取扱いをしないことを約束する
措置3:事後の迅速かつ適切な対応
- 相談を受けたら、事実関係を迅速かつ正確に確認する(1対1ではなく、第三者を交えて)
- ハラスメントが確認された場合、被害者に対する配慮措置を講じる(配置転換、勤務時間の調整など)
- 加害者に対して適正な懲戒処分や再発防止のための指導を行う
- 再発防止策を講じる(研修の実施、ルールの見直しなど)
小規模歯科医院の相談窓口設置のコツ
スタッフ数名の小規模歯科医院では、「院長しか管理職がいない」「相談窓口を設置しても、相談しにくい」という課題があります。以下の方法を検討してください。
内部と外部のハイブリッド体制
院内では信頼できるチーフスタッフを相談窓口担当とし、加えて外部の社労士や弁護士と契約して外部相談窓口を設置します。
スタッフは院内・院外のどちらにも相談できる選択肢を持つことができ、相談しやすい環境が整います。
匿名相談の仕組みづくり
院内に「相談ボックス」を設置し、匿名での相談も受け付けます。また、メールやLINEでの相談も可能にすることで、対面では言いにくいことも相談しやすくなります。
外部の無料相談窓口の活用
神戸市では、神戸市こころの健康相談ダイヤルや、厚生労働省の「こころの耳」など、無料の相談窓口が利用できます。これらの窓口を院内に掲示し、スタッフに周知することも有効です。
相談ボックスの設置や行政の無料相談窓口の案内は、法律で定められた”相談窓口の設置”には当てはまりませんので注意してください。
妊娠・出産を支える院内体制づくり
ハラスメント防止だけでなく、妊娠・出産・育児を支える前向きな体制づくりが重要です。
妊娠報告を受けた時の対応マニュアル
- まず「おめでとう」「無理しないでね」と祝福と気遣いの言葉をかける
- 「今後の働き方について、どう考えている?」と本人の意向を丁寧に聴く
- 「医院としてはできる限りサポートするから、遠慮なく相談してね」と伝える
- 母性健康管理措置(通院休暇、勤務時間の短縮など)について説明する
- 産前・産後休業、育児休業の制度について情報提供する
業務分担の見直しと配慮
妊娠中のスタッフには、本人と相談しながら、重いものを持つ作業や長時間立ちっぱなしの業務を軽減します。
ただし、「妊婦だから」と一方的に仕事を減らすのではなく、「何か体調面で配慮してほしいことはある?」と本人の意向を必ず確認することが重要です。
復帰後の働きやすい環境整備
育児休業から復帰するスタッフには、復帰前面談を実施し、勤務時間や業務内容について本人の希望を聴きます。
時短勤務やシフト調整など、柔軟な働き方を提供できる体制を整えることで、スタッフの定着率が向上します。
社労士が教える労務管理のポイント
就業規則への記載方法
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が義務付けられています。10人未満の歯科医院でも、就業規則を作成しておくことで、労務トラブルを未然に防ぐことができます。
また、就業規則によりルールを明確にすることは、労務管理を”ラク”にすることにつながり、院長の負担軽減が実現します。
就業規則には、以下の内容を明記します。
- 妊娠・出産・育児介護休業ハラスメントの禁止
- どのような行為がハラスメントに該当するかの定義
- ハラスメントを行った者への懲戒処分(戒告、減給、出勤停止、解雇など)
- 相談窓口の設置と相談者のプライバシー保護
- 相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止
定期的な研修の実施
マタハラ等の防止には、院長とスタッフ全員がハラスメントに関する正しい知識を持つことが不可欠です。
小規模歯科医院では、大がかりな研修を実施することは難しいかもしれませんが、以下のような方法で学習機会を提供できます。
- 月1回のスタッフミーティングで、ハラスメント事例や法改正情報を共有する
- 厚生労働省の「あかるい職場応援団」などのWEBサイトの資料を活用する
- 社労士などの専門家による研修を年1回実施する
厚生労働省の「あかるい職場応援団」には、豊富な資料や動画教材が用意されていますので、ぜひ有効に活用してください。
記録の保存と証拠管理
万が一ハラスメントの相談や訴えがあった場合に備えて、以下の記録を残しておくことが重要です。
- 妊娠・出産の報告を受けた日時と、院長がどのように対応したかの記録
- 育児休業等の申出を受けた日時と対応内容
- 業務配分や配置転換を行った場合の理由と本人の同意
- ハラスメント研修の実施記録と参加者
- 相談を受けた場合の相談内容、事実関係の確認結果、対応措置
これらの記録は、院長がハラスメント防止に真摯に取り組んでいたことを示す証拠となります。
まとめ:ハラスメントのない歯科医院へ
本記事では、小規模歯科医院における妊娠・出産・育児介護休業ハラスメントの注意点と防止措置について詳しく解説しました。
重要ポイント
- マタハラ等の防止は法律で義務付けられており、小規模歯科医院も例外ではない
- 男性院長は無自覚のうちにハラスメント発言をしてしまう可能性がある
- スタッフ間のハラスメントも院長の責任として問われる
- 就業規則への明記、相談窓口の設置、研修の実施が必須
- 妊娠・出産を支える前向きな体制づくりがスタッフの定着につながる
小規模歯科医院の院長先生が、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現するため、ぜひ本記事の内容を実践してみてください。
ハラスメントのない職場は、スタッフの定着率向上、採用力の強化、患者満足度の向上など、医院経営にも良い影響をもたらします。
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