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中退共と企業型DCは併用できる?小規模事業所の経営者が知っておくべき退職金制度の基本

中退共と企業型DCは併用できる?小規模事業所の経営者が知っておくべき退職金制度の基本

歯科医院や飲食店を経営されている院長先生、オーナーさま。

「うちはすでに中退共に入っているけど、企業型DCも導入できるの?」
「2つも制度を掛け持ちすると、手続きが面倒なのでは?」

企業型DCへの関心が高まってきており、こうしたご質問をいただくことがちらほらとあります。

結論からお伝えすると、中退共と企業型DCは併用が可能です。

ただし、それぞれの制度の特徴や掛金の上限、2026年の法改正の影響など、経営者として押さえておくべきポイントが数多くあります。

そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、中退共と企業型DCの併用について、基礎知識から実践的な判断基準までわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 中退共・企業型DCそれぞれの基本的な仕組みと特徴
  • 2つの制度を併用する場合のメリット・デメリットと掛金上限
  • 小規模事業所が制度を選ぶ・組み合わせる際の実践的な判断基準

中退共・企業型DCとは?基礎知識を整理

中退共とは、独立行政法人・勤労者退職金共済機構が運営する、中小企業向けの退職金制度です。事業主が毎月一定の掛金を納付し、スタッフが退職した際に退職金として直接支払われる仕組みです。

加入できる中小企業の規模(業種別)は、以下の通りです。

業種常用従業員数資本金・出資金
一般業種(製造業・建設業等)300人以下3億円以下
卸売業100人以下1億円以下
サービス業(飲食・美容室等)100人以下5,000万円以下
小売業50人以下5,000万円以下

従業員数か資本金・出資金のどちらか一方の条件を満たせば、加入が可能です。

中退共の主な特徴

  • 掛金:月額5,000円〜30,000円(短時間労働者は2,000円〜4,000円)。全額事業主負担で、全額損金算入(税務上の経費)が可能。
  • 国の助成:新規加入時は加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2(上限5,000円)を国が助成。初期コストを抑えられる。(詳細:中退共HP:よくある質問(Q&A)
  • 加入対象:原則として従業員全員(パート・アルバイト含む)が対象。役員は加入不可。
  • 運用:勤労者退職金共済機構が一括運用。加入者が運用方法を選ぶことはできない。
  • 受取方法:退職金は従業員本人に直接支払われる(会社を通さない)。

企業型DC(企業型確定拠出年金・401k)とは、事業主が拠出した掛金を、スタッフが自ら選んだ運用商品で運用し、その運用成果が退職後の年金として受け取れる制度です。

運用成果は個人によって異なるため、将来の受取額は確定していません

企業型DCの主な特徴

  • 掛金:月額最大55,000円(他の企業年金なし・DB未加入の場合)。掛金は全額損金算入。2026年12月1日施行の法改正で、上限が月額62,000円に引き上げ予定。
  • 国の助成:なし(中退共のような新規加入助成制度はない)。
  • 加入対象:従業員・役員ともに加入可能。
  • 運用:従業員自身が投資信託・定期預金などから運用商品を選ぶ。運用次第で元本割れのリスクあり(元本確保型商品の選択も可能)。
  • 受取方法:原則60〜75歳から受取開始。退職直後に一括受取はできない(中退共との大きな違い)。
  • 導入コスト:導入一時金5万〜20万円程度+月次運営管理手数料(加入者1人あたり月300〜500円程度)が発生する。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の基礎完全ガイド|小規模事業所でも導入できる制度の全て

中退共と企業型DCを比較

併用を検討する前に、2つの制度の違いをしっかり把握しておきましょう。

比較項目中退共企業型DC
掛金上限(月額)30,000円55,000円(2026年12月〜62,000円の予定)
国の助成あり(新規加入時1年間)なし
役員の加入不可可能
運用方法機構が一括運用スタッフ自身が選択
元本保証24か月以上でほぼ保証なし(元本確保型商品あり)
早期退職時の扱い掛金は返還不可規約により事業主へ返還可
受取タイミング退職時に随時原則60〜75歳から

中退共は「シンプルさ・低コスト・助成制度」が魅力で、企業型DCは「高い掛金上限・役員も加入可・柔軟な制度設計」が強みです。

中退共と企業型DCは「併用できる」のか?

中退共と企業型DCは、併用が可能です。中退共の契約を解約する必要はなく、同じ従業員が両方の制度に同時加入することもできます。

中退共は企業型DCの観点からは「他の企業年金」に該当しないため、企業型DCの掛金上限は中退共加入の有無にかかわらず、月額55,000円(2026年12月〜62,000円)が適用されます。

企業型DCは確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金と併用する場合には上限額の調整が生じます。

2026年は企業型DCに関する重要な法改正が2段階で施行されます。

施行時期改正内容加入者への影響
2026年1月〜退職所得控除の調整期間が5年→10年に延長(いわゆる「10年ルール」)退職金とDC一時金を近い時期に受け取ると税負担が増える場合あり。
2026年4月〜企業型DCのマッチング拠出の制限見直し(加入者掛金が事業主掛金を超えてもよくなる)スタッフが自分で上乗せできる幅が拡大。制度の活用度が上がる可能性あり。
2026年12月〜企業型DCの拠出限度額が月5.5万円→月6.2万円に引き上げより手厚い老後資産形成が可能に。ただし規約変更と周知が必要。

参照:厚生労働省「私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール」

併用するメリット・デメリット

中退共と企業型DCを併用した場合のメリット、・退職金制度が手厚くなる・採用力、定着力が向上する・役員も企業型DCで老後資産を形成できるを図で解説

退職金制度が手厚くなる

中退共で「退職時に即受取できる退職金」を確保しながら、企業型DCで「老後の年金資産」も積み立てられます。

2種類の受取タイミングと方法を持てるため、従業員にとってより選択肢の広い制度設計が実現します。

採用力・定着力が向上する

「退職金あり+確定拠出年金あり」という福利厚生の充実は、求人票や採用面接でのアピールポイントになります。

特に人手不足が深刻な飲食・歯科業界では、特に効果的な差別化要素となり得ます。

役員も企業型DCで老後資産を形成できる

企業型DCは役員も加入可能です。掛金は、法人の全額損金になるうえに、自身の老後資産を積み立てることが可能です。

私の個人的な考えですが、小規模事業所の経営者にとっては、この点が企業型DCの一番のメリットです。

    会社のコスト負担が増加する

    当然のことながら、中退共の掛金に加えて、企業型DCの掛金が新たに発生します。また、企業型DCの導入時には、初期費用がかかります。

    制度管理・スタッフへの説明が複雑になる

    2つの制度が並存するため、スタッフへの説明や退職時の手続きが複雑になります。

    特に「中退共は退職時に即受取、企業型DCは原則60歳から受取」という受取タイミングの違いは、必ず事前に説明しておく必要があります。

    企業型DCは簡単に廃止・減額できない

    企業型DCは、一度導入すると掛金の廃止や大幅な減額は容易ではありません。導入前に「今は払えるが、将来的に払えなくなる可能性はないか」を十分に検討する必要があります。

      社労士が教える:小規模事業所の退職金制度選びのポイント

      小規模事業所の経営者として、「中退共のみ」「企業型DCのみ」「併用」のどれが自社に合うか、以下の判断基準を参考にしてください。

      こんな場合は…おすすめの選択肢
      とにかくシンプルに退職金制度を始めたい。コストを抑えたい。中退共のみ
      役員も退職金制度に加入したい。掛金を多く拠出して節税したい。企業型DCのみ
      従業員の退職金(即受取)も確保しつつ、老後資産形成も充実させたい。採用強化にも活用したい。中退共+企業型DC(併用)
      すでに中退共に加入しており、役員の老後資産形成も整えたい。中退共(継続)+企業型DC(新規追加)
      企業型確定拠出年金(企業型DC)導入のメリットを企業側・従業員側の視点で徹底解説
      • 就業規則・退職金規程の整備:企業型DCを導入する際には、就業規則または退職金規程に制度の内容を記載する必要があります。既存の中退共の規程と矛盾しないよう整合性を確認してください。
      • スタッフへの十分な説明と同意:企業型DCはスタッフ員自身が運用商品を選ぶ制度です。「元本割れの可能性がある商品も含まれる」ことを含め、導入前に必ず十分な説明と理解を得ることが重要です。
      • 投資教育の実施義務:企業型DCを導入した事業主は、加入者に対する継続的な投資教育(リテラシー教育)を実施する義務があります。小規模事業所では外部のセミナーや運営管理機関が提供する教材を活用することが現実的です。

      よくある質問(Q&A)

      中退共に加入中です。企業型DCを追加する場合、何から始めればいいですか?

      まず、企業型DCの運営管理機関(金融機関等)に相談し、自社の規模や従業員構成に合った制度設計の提案を受けることをお勧めします。

      その後、就業規則の整備・変更、厚生労働大臣への規約申請、スタッフへの説明・教育という流れで進めます。

      当事務所でも企業型DCの加入に関するご相談を随時受け付けております。

      パートスタッフは中退共と企業型DCの両方に加入できますか?

      原則として可能です。ただし企業型DCについては、会社の規約でパート・アルバイトを加入対象者に含めるかどうかを決めることができます。

      中退共は原則として全従業員が加入対象ですが、一定条件のもと加入・未加入を選べる場合もあります。

      企業型DCを導入するのに、どれくらいの費用がかかりますか?

      導入一時金が5万〜20万円程度(運営管理機関により異なる)、加えて月次の運営管理手数料として基本料金+加入者1人あたり月300〜500円程度が継続的に発生します。

      スタッフ10名であれば月10,000〜20,000円程度のランニングコストが目安です。中退共と異なり国の助成制度はありませんが、掛金は全額損金算入できるため節税効果も見込めます。

      歯科医院の院長や飲食店のオーナーも企業型DCに加入できますか?

      法人の役員(厚生年金に加入)であれば、企業型DCに加入できます。個人事業主として開業されている場合は企業型DCではなくiDeCoや小規模企業共済が選択肢になります。

      まとめ

      本記事では、中退共と企業型DCの基礎知識から、併用の可否・メリット・デメリット・2026年の法改正まで解説しました。

      重要ポイントのまとめ

      • 中退共と企業型DCは併用可能。中退共を解約せず、企業型DCを追加導入できる。
      • 中退共は「シンプル・低コスト・国の助成あり」、企業型DCは「高い上限・役員も加入可・柔軟な設計」が特徴。
      • 2026年に企業型DCは法改正(拠出上限の引き上げ・マッチング拠出の見直し・10年ルール)が施行される。今のうちから制度設計の見直しを検討することが重要。
      • 企業型DCを導入する際は、就業規則の整備・スタッフへの説明・投資教育の実施が法的に求められる。

      退職金制度の充実は、採用力と定着率の向上に直結します。経営者ご自身もスタッフも働きたくなる組織づくりの第一歩として、ぜひ退職金制度の現状を見直してみてください。

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      ABOUT US
      社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー 小西朋安
      小西 朋安社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー
      社労士歴19年で、元プログラマーの異色キャリア。 わかりやすい就業規則の作成・経営理念の策定・浸透支援など、職場のあり方づくりに長年取り組んでいる。 近年は、GPTsを活用した求人原稿作成ツールや業務支援AIを自ら開発し、飲食店、美容室、歯科医院などの生成AI活用を積極的に支援している。