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社長・院長が一番疲れるのはなぜ?小規模組織の経営者がスタッフの管理で気疲れが起きる構造と抜け出し方

社長・院長が一番疲れるのはなぜ?小規模組織の経営者がスタッフの管理で気疲れが起きる構造と抜け出し方

「売上の心配より、スタッフのことで気疲れする」
「機嫌をうかがい、言いたいことが言えない」
「気づけば自分が一番動いて、一番疲れている」

社員10人未満の会社・医院の社長・院長から、こうした声を毎週のように伺います。

結論を先にお伝えします。
社長・院長が一番疲れるのは、性格や能力の問題ではありません。社長・院長の考えや価値観がスタッフに伝わっておらず、組織で共有されていないことが根本原因です。抜け出す鍵は、その価値観を組織で共有できる形にすること。文書化は、そのための手段です。

この記事では、社会保険労務士であり「10人未満の組織づくり」支援を行う筆者が、神戸市を中心に小規模事業所の経営者と向き合ってきた実務知見をもとに、気疲れの正体と具体的な抜け出し方を解説します。

この記事でわかること

  • 社長・院長の「気疲れ」が起きる本当の理由
  • 価値観を組織で共有する5つのステップ
  • つまずきやすいポイントと、その対処法
  • 共有が進んだかどうかを確かめる方法
  • 社労士視点での労務管理上の注意点

社長・院長が一番疲れるのはなぜ?

一番疲れる理由は、社長・院長の考えや価値観がスタッフに伝わっておらず、組織で共有されていないからです。

価値観が共有されていないと、「なぜ分かってくれないのか」「どう伝えればいいのか」と、社長・院長は一日中気を揉み続けます。

これは経営者としての資質や性格の問題ではありません。価値観が伝わっていないことが、気疲れを生んでいます。

気疲れの正体は、「自分の思いが伝わらないもどかしさ」です。繰り返しになりますが、決して経営者としての資質や性格が原因ではありません。

小さな組織では、社長・院長が日々こんな思いを抱えています。

  • 「ここを大事にしてほしい」が、なぜか伝わらない
  • 同じ注意を何度も繰り返すうちに、言うのがしんどくなる
  • スタッフごとに受け取り方が違い、判断がブレる

仕事や職業生活でのストレスの内容を見ると、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」は29.6%にのぼります(出典:厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」)。

これは、あくまでも労働者の調査結果ですが、雇う側も雇われる側も「伝わっていない」ことによって、ストレスを抱えているとも受け取れます。

これまで、「自分の性格が問題でスタッフとコミュニケーションがとれない。すぐに辞めてしまう。」と悩まれている経営者の方々を見てきました。
「安心してください、あなたの問題ではありません。」と声を大にして言いたい。

根本にあるのは、大切にしたい価値観やスタッフにこうして欲しいと思うことが社長・院長の頭の中に留まり、言葉になっていないことです。

価値観やして欲しいことが言葉になっていないと、スタッフは「何を大切にすべきか」「何をすればいいのか」を察するしかありません。

そして、察し違いが起きるたびに、「なぜわかってくれないんだ。」「なぜそんなことをするんだ。」と社長・院長は気を揉むことになります。

この状態を「スタッフの理解力・性格の問題」で片付けると、解決しません。価値観やして欲しいこと(価値観など)を言葉にして共有することが、この状態を抜け出す出発点になります。

価値観などが共有されると何が得られるか

価値観などが共有されると、社長・院長は「伝わらないもどかしさ」から解放され、本来の経営に集中できるようになります。

価値観などの共有が進むと、次のような変化が生まれます。

  • 同じことを繰り返さずに済む:大切にしたい価値観などが共有され、その都度の説明が減ります。
  • 注意が個人攻撃にならない:「共有した価値観など」を基準に話せるため、感情的な対立が減ります。
  • 判断のブレが消える:誰もが同じ価値観などで動くので、「不公平」という不満が起きにくくなります。
  • 社長・院長が休める:価値観などが浸透すれば、社長・院長が見ていなくても組織が同じ方向を向きます。

めざすのは「社長・院長が我慢する組織」ではなく、社長もスタッフも働きたくなる組織です。

”気疲れ”から抜け出す5つのステップ

社長・院長がスタッフとの関係性の”気疲れ”から抜け出す5つのステップの図

”気疲れ”からの抜け出し方は、社長・院長の価値観などを言葉にし、共有できる形にして、運用に乗せる5つのステップで進めます。

下の表が全体像です。順番が大切なので、上から進めてください。

ステップやること狙い
①前提を変える「察してもらう」「わかっているだろう」をやめると決める気疲れの根を断つ
②価値観などを言葉に大切にしたい考え方を書き出す共有の土台づくり
③共有できる形に3つの文書に落とし込む価値観などを組織で公開する
④役割を明示する役職者に「してほしいこと」をセットで伝える「なぜやらない」を防ぐ
⑤運用で定着価値観などを基準に対話する共有を組織に根づかせる

最初の一歩は、「言わなくても分かってほしい」という期待を手放すことです。

当事務所がお伝えしている「小規模組織のための4つの絶対原則」というものがあるのですが、その一つが、「組織は社長のためにある」です。
だからこそ、社長・院長の価値観などを遠慮なく言葉にしてよいのです。

価値観などは、言葉にして伝えてはじめて共有されます。→これが「伝わった」状態です。

次に、社長・院長が大切にしている価値観などを言葉として書き出します。

「なぜこの仕事をしているか」「どんな組織にしたいか」「どんな働き方をして欲しいのか」などを言語化します。これが、共有する価値観などの土台です。頭の中にあるうちは、誰にも伝わりません。

言葉にした価値観などを、組織の誰もが共有できる形に落とし込みます。その「共有できる形」の中心になるのが、次の3つの文書です。

  • コンセプトブック:社長・院長の価値観・思想を言語化した土台
  • バリュー(行動指針):価値観を「どう行動するか」「どう考えるか」に翻訳した基準
  • ルールブック:行動指針を日々の具体的なルールに落とした手引き

文書化は目的ではなく、価値観などを共有するための手段です。この3点があると、社長・院長の価値観が組織に行き渡りやすくなります。

役職者には「やるべきこと・してほしいこと」を具体的に明示します。

「4つの絶対原則」の1つに「役職は”役割”とワンセット」があります。肩書だけ渡すと、社長・院長は「役職者なのに、なぜ○○してくれないんだ」とストレスを抱えがちです。

しかしそれは、してほしいことが伝わっていないだけのことが多いのです。役割を明示すれば、社長・院長のイライラも、役職者の戸惑いも減ります。詳しくは役職を与えても人が動かない理由もご覧ください。

最後は、共有した価値観を日々の対話の基準にして定着させます。

注意するときも、ほめるときも「私たちの価値観に沿っているか」で話します。価値観が共有されると、社長・院長の判断を再現できる組織に近づきます。この再現の仕組みが守破離で社長の判断を再現する方法です。

よくあるつまずきと対処法

最も多いつまずきは「文書をつくっただけで満足し、価値観が共有されないまま終わる」ことです。対処の型を知っておけば防げます。

つまずき対処法
文書が難しすぎて読まれない完璧をめざさず、まず1枚から共有する
つくって終わり、共有されない朝礼や面談で繰り返し言葉にする
注意すると関係が気まずくなる個人でなく「共有した価値観など」を基準に話す
スタッフごとに解釈がバラつく具体例を添えて、行動レベルまで示す(ルールブックの役割です。)

価値観などの共有は「文書を渡す=完了」ではありません。強いトップダウンで価値観を示し続けることが、小さな組織の健全な形です。

詳しくは小規模組織のトップダウンが組織を健全にする理由をご覧ください。

小規模組織のトップダウンは悪なのか?「社長・院長が決める」が組織を健全にする

価値観の共有が進んだかの確認方法

共有が進んだかは、「社長・院長が同じことを繰り返す回数」と「心の余裕」で確認できます。

次のチェックで、進み具合を測ってみてください。

  • 同じ注意を繰り返す回数が減ったか
  • スタッフが「うちの価値観ではこう」と自分で判断する場面が増えたか
  • 「伝わらない」もどかしさが軽くなったか
  • 社長・院長が安心して休めるようになったか

どれか一つでも「はい」が増えていれば、価値観の共有は確実に進んでいます。

社会保険労務士からの注意点

社労士として一つお伝えします。価値観などの共有は「気持ちの問題」だけでなく、労務管理の整備とセットで考えると安全です。

価値観などを形にしたルールブックは、就業規則など法的なルールと矛盾しないことが大切です。曖昧にした注意が、後にトラブルの火種になる例を実務で多く見てきました。

価値観などが言葉で共有されていれば、注意も指導も「私たちの基準に沿った正当なもの」として行え、スタッフの納得感も高まるので、無用なトラブルが起こりにくくなります。

よくある質問・誤解

価値観などを押しつけると、スタッフが窮屈に感じませんか?

むしろ逆です。価値観などがあいまいな方が、スタッフは「何が正解か」が分からず不安になります。基準が共有されていると、安心して自分で判断できるようになります。

何度も言っているのに伝わりません。なぜですか?

口頭だけだと、その場で消えて記憶に残りにくいためです。価値観などを文書という形にし、繰り返し立ち返れるようにすることで、はじめて組織に定着します。

文書をつくる時間がありません。何から始めれば?

完璧な文書は不要です。まず「どうしても大切にしてほしい価値観」「これだけはして欲しいこと」を1つ選び、”なぜ”それが大切なのか(して欲しいのか)という理由とともに文章にしてください。小さな一歩が共有を始めるきっかけになります。

”なぜ”があることで、圧倒的にスタッフの理解度、納得感が増します。

まとめ

社長・院長が一番疲れるのは、自分の考えや価値観などがスタッフに伝わっておらず、組織で共有されていないためです。

ここから抜け出す道は、前提を変え、価値観を言葉にし、3つの文書で共有できる形にし、役割を明示し、対話で運用する5ステップです。

価値観を組織で共有することが、気疲れから抜け出す核心。文書化は、その手段です。

小規模組織の全体像は、【社員10人未満の会社・歯科医院のための組織づくり完全ガイド|社長が消耗しない仕組みの作り方】でまとめています。あわせてご覧ください。

社員10人未満の会社・歯科医院のための組織づくり完全ガイド|社長が消耗しない仕組みの作り方

今後のアクション

この1週間で「スタッフにどうしても大切にしてほしい価値観やこうして欲しいこと」を3つ書き出してみてください。それが、最初に共有すべき価値観などです。

「価値観を何から言葉にすればいいか分からない」
「文書にしても伝わる自信がない」
「ルールと就業規則の整合を確認したい」

こうした場面が、専門家へ相談するタイミングです。当事務所では、コンセプトブック・バリュー・ルールブックの3点を6か月で制作する「10人未満の組織づくり」支援を行っています。

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公的な窓口としては、兵庫県よろず支援拠点(神戸市中央区・神戸市産業振興センター内)が、人事・労務を含む経営相談を何度でも無料で受け付けています。こうべ産業・就労支援財団でも採用・労務管理の相談が可能です。

当事務所(社会保険労務士こにしオフィス)でも、神戸市を中心に小規模事業所の組織づくりのご相談を承っています。「人のことで消耗しない組織をつくりたい」とお考えでしたら、お気軽にご相談ください。

ABOUT US
社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー 小西朋安
小西 朋安社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー
社労士歴19年で、元プログラマーの異色キャリア。 わかりやすい就業規則の作成・経営理念の策定・浸透支援など、職場のあり方づくりに長年取り組んでいる。 近年は、GPTsを活用した求人原稿作成ツールや業務支援AIを自ら開発し、飲食店、美容室、歯科医院などの生成AI活用を積極的に支援している。