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訪問歯科診療の車両管理規程|交通事故時の責任・ガソリン代・車両の私的利用禁止などの就業規則への明記の仕方

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訪問歯科診療をされている歯科医院の院長先生。

訪問診療用の車両をスタッフが利用することに備えて、「車両管理規程」で使用ルールを明確に定めていますか?

もし交通事故が起きた場合、適切な規程がないと医院側が数千万円の賠償責任を負う可能性があります。

また、スタッフによる車両の私的利用や、ガソリン代の負担トラブルなど、曖昧な管理は様々なリスクを招きます。

そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から訪問歯科診療の車両管理規程の作り方と交通事故時の責任範囲を詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 交通事故時に医院が負う3つの法的責任
  • 車両管理規程に必ず記載すべき7項目
  • ガソリン代・車両の私的利用・事故時の対応ルール

訪問歯科診療における車両管理規程とは?

車両管理規程とは、医院が所有またはスタッフの私有車を業務で使用する際の使用ルール、責任範囲、管理方法を明文化した規程です。

訪問歯科診療では、ポータブルユニットや診療機材を積載して患者さん宅や施設へ移動するため、車両は必要不可欠です。

小規模な歯科医院では、1台の車両を複数のスタッフで共用するケースが一般的です。

なぜ車両管理規程が必要なのか?3つの重要な理由

1. 交通事故時の医院の賠償責任を軽減

スタッフが業務中に交通事故を起こした場合、医院は「使用者責任」(民法第715条)と「運行供用者責任」(自動車損害賠償保障法第3条)により、被害者に対して損害賠償責任を負います

適切な車両管理規程があれば、スタッフへの安全教育を実施していた証拠となり、責任軽減に繋がる可能性があります。

2. 車両の私的利用によるトラブル防止

業務用車両をスタッフが私的に使用すると、以下のリスクが発生します。

  • 私的利用中の事故でも医院が賠償責任を負う可能性
  • 燃料費や走行距離の増加による経費増
  • 従業員間の不公平感の発生

車両管理規程で「私的利用の原則禁止」を明記することで、これらのトラブルを予防できます。

3. ガソリン代など経費負担の明確化

業務用の燃料費をスタッフの私費で立て替えさせると、労務トラブルの原因になります。また、マイカーを業務使用する場合の補償内容も明確にする必要があります。

規程で精算方法を明記することで、スタッフとのトラブルを防止できます。

交通事故時に医院が負う3つの法的責任

訪問歯科診療用の車両で交通事故が発生した場合、医院は以下の3つの法的責任を負う可能性があります。

1. 不法行為責任(民法第709条)

運転者本人が負う基本的な責任です。故意または過失によって他人に損害を与えた場合に適用されます。

  • 法的根拠:民法第709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
  • 責任を負う人:事故を起こした運転者(スタッフ)
  • 立証責任:被害者が運転者の過失を立証する必要がある

参考URLe-Gov法令検索「民法」

2. 使用者責任(民法第715条)

スタッフを雇用している医院が負う責任です。業務中のスタッフが起こした事故について、雇用主も連帯して賠償責任を負います。

  • 法的根拠:民法第715条第1項「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」
  • 責任を負う人:医院(雇用主)と運転者(スタッフ)が連帯責任
  • 免責要件:医院が「スタッフの選任・監督に相当の注意をした」ことを証明しない限り責任を免れない

訪問歯科診療での移動は「業務の執行」に該当するため、医院は原則として責任を免れることができません。

参考URL厚生労働省神奈川労働局「第三者行為災害」

3. 運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)

車両を所有・管理している医院が負う、最も重い責任です。被害者救済を目的としており、医院側の過失がなくても責任を負います。

  • 法的根拠:自動車損害賠償保障法第3条「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」
  • 責任を負う人:車両の所有者・管理者(医院)
  • 立証責任の転換:被害者は運転者の過失を立証する必要がない(医院側が無過失を証明しない限り責任を負う)

訪問診療で医院所有の車両を使用している場合、この責任は避けられません。

参考URLe-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」

3つの責任の違い【比較表】

以下の表で、それぞれの責任の違いを整理しました。

責任の種類法的根拠責任を負う人立証責任免責の可能性
不法行為責任民法第709条運転者(従業員)被害者が運転者の過失を立証無過失なら免責
使用者責任民法第715条医院と従業員が連帯医院が選任・監督の相当注意を立証立証できれば免責(実際は困難)
運行供用者責任自賠法第3条車両の所有者・管理者(医院)医院が無過失を立証ほぼ不可能(無過失立証が極めて困難)

重要ポイント:訪問歯科診療で医院所有の車両を使用している場合、事故が起きると医院は原則として賠償責任を免れることはできません

車両管理規程に必ず記載すべき7項目

訪問歯科診療の車両管理規程には、以下の7項目を明記することをおすすめします。

訪問歯科診療で車両管理規程に必ず記載すべき7項目
1. 車両の使用目的と対象者
2. 車両の私的利用の禁止
3. ガソリン代・燃料費の負担ルール
4. 交通事故発生時の対応手順
5. 交通事故時の責任と賠償の範囲
6. 安全運転義務と違反時の処分
7. 車両の日常点検と管理責任
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1. 車両の使用目的と対象者

どの車両を誰が使用できるかを明確に定めます。

  • 使用目的:訪問歯科診療における患者さん宅・施設への往診、医療機材の運搬
  • 対象者:有効な運転免許証を保有し、医院が認めたスタッフに限る

記載例「本規程の対象車両は、医院が所有または管理する訪問診療用車両(車両番号○○○○)とする。使用できる者は、普通自動車運転免許を保有し、医院長が使用を許可したスタッフに限る」

2. 車両の私的利用の禁止

最も重要な項目です。私的利用を明確に禁止することで、トラブルと責任リスクを軽減します。

  • 原則禁止:業務以外の目的での使用を一切禁止
  • 例外措置:やむを得ない理由がある場合は、事前に医院長の書面による許可を得ること

記載例:「スタッフは、業務用車両を私的目的で使用してはならない。ただし、やむを得ない事情により使用する必要がある場合は、事前に医院長の書面による許可を得なければならない。無断で私的使用した場合は、就業規則に基づき懲戒処分の対象とする」

よくある誤解:「通勤での使用も業務の一部」
正しい理解:通勤は業務ではないため、原則禁止。許可制にすることが重要

3. ガソリン代・燃料費の負担ルール

業務使用に伴う燃料費は、医院が全額負担するのが原則です。精算方法を明確にしましょう。

  • 医院所有車両の場合:医院の法人カードで給油、またはスタッフが立替後に実費精算
  • マイカー使用の場合:走行距離に応じた燃料費を支給(例:1kmあたり10円~15円)

記載例:「業務使用に伴う燃料費は医院が全額負担する。スタッフが燃料費を立て替えた場合は、領収書を添付の上、月末までに経理担当者に提出し、翌月の給与支給日に精算する」

燃料費を従業員の給与に含める(手当として支給する)と、所得税や社会保険料の計算に影響します。必ず実費精算として処理してください。

参考URLJAFアカデミー「私用車の業務使用のルールと注意点」

4. 交通事故発生時の対応手順

事故発生時の初動対応を明確に定めることで、被害拡大を防ぎます。

  • Step1:負傷者の救護・警察への通報(道路交通法第72条で義務化)
  • Step2:医院への即時連絡(医院長または管理者へ電話報告)
  • Step3:保険会社への連絡
  • Step4:事故報告書の作成・提出(24時間以内)

記載例:「スタッフが業務用車両で交通事故を起こした場合は、以下の手順で対応する。
①負傷者の救護と警察への通報
②医院長への即時連絡(連絡先:○○○-○○○○-○○○○)
③保険会社への連絡
④事故報告書の作成と24時間以内の提出」

5. 交通事故時の責任と賠償の範囲

スタッフと医院、それぞれが負う責任範囲を明記します。

  • 業務中の事故:医院が被害者への賠償責任を負う。スタッフの故意・重過失の場合は、医院からスタッフへ求償権を行使する場合がある
  • 私的利用中の事故:スタッフが全責任を負う。ただし、医院も運行供用者責任を負う可能性があるため、原則禁止とする

記載例:「業務遂行中の交通事故については、医院が被害者への賠償責任を負う。ただし、スタッフに故意または重大な過失がある場合は、医院はスタッフに対して損害賠償を求償することがある」

6. 安全運転義務と違反時の処分

スタッフに安全運転を徹底させるため、遵守事項と違反時の処分を明記します。

  • 遵守事項:交通法規の厳守、飲酒運転の絶対禁止、運転中のスマートフォン操作禁止、シートベルト着用
  • 違反時の処分:飲酒運転は懲戒解雇、重大な交通違反は懲戒処分の対象

記載例:「スタッフは以下の安全運転義務を遵守しなければならない。
①道路交通法の厳守
②飲酒運転の絶対禁止
③運転中のスマートフォン操作禁止
④シートベルトの着用
これらに違反した場合は、就業規則に基づき懲戒処分の対象とする」

7. 車両の日常点検と管理責任

車両の安全を保つため、日常点検の実施と管理責任者を定めます。

  • 日常点検項目:タイヤの空気圧、ブレーキの作動、ライトの点灯確認、オイル・冷却水の量
  • 点検頻度:使用前の目視点検(毎回)、詳細点検(月1回)
  • 管理責任者:車両管理責任者を指名し、点検記録の保管を義務化

記載例:「使用者は、車両使用前に日常点検(タイヤ、ブレーキ、ライト等)を実施し、異常を発見した場合は直ちに管理責任者に報告する。管理責任者は月1回の詳細点検を実施し、点検記録を3年間保管する」

マイカーを業務使用する場合の注意点

スタッフの私有車(マイカー)を訪問診療に使用する場合、医院所有車両とは異なる注意点があります。

マイカー使用時に就業規則に追加すべき項目

  • 事前許可制:マイカーの業務使用は医院長の事前許可が必要
  • 任意保険加入の義務化:対人・対物無制限、人身傷害補償3,000万円以上の任意保険への加入を義務付け
  • 保険証券の提出:年1回、保険証券のコピーを医院へ提出
  • 燃料費・走行距離手当の支給:業務使用分の燃料費を実費または距離に応じて支給(例:1kmあたり15円)
  • 車両の状態確認:車検証の有効期限、整備状況を定期的に確認

マイカー使用のメリット・デメリット

マイカー使用には以下のようなメリット・デメリットがあります。

項目メリットデメリット
初期費用医院の車両購入費用が不要スタッフへの走行距離手当が必要
管理負担車検・整備を従業員が実施保険内容の確認・管理が必要
事故リスク医院も運行供用者責任を負う可能性
スタッフ負担自家用車の損耗が進む、保険料が上がる可能性

マイカーを業務使用する場合でも、医院は運行供用者責任を負う可能性があります。必ず十分な任意保険への加入を確認してください。

車両管理規程の作成手順【3ステップ】

実際に車両管理規程を作成する手順を解説します。

Step1:現状の車両使用状況を整理する

まず、現在の車両使用状況を確認します。

  • 医院所有車両の台数と車両番号
  • 使用するスタッフの人数と免許保有状況
  • 訪問診療の頻度と移動範囲
  • 現在の燃料費精算方法
  • 加入している自動車保険の内容

Step2:規程の原案を作成する

本記事で解説した「必ず記載すべき7項目」を盛り込んで、原案を作成します。

記載のポイント

  • 具体的な連絡先(医院長の携帯電話番号など)を明記
  • 曖昧な表現を避け、「○○しなければならない」と断定的に記載
  • 違反時の処分内容を就業規則と整合させる

Step3:スタッフへの説明と周知

作成した規程は、必ずスタッフに説明し、理解を得ることが重要です。

  • 説明会の開催:規程の内容を口頭で説明し、質疑応答の時間を設ける
  • 書面の配布:全従業員に規程の写しを配布し、受領書にサインをもらう
  • 定期的な見直し:年1回、規程の内容を見直し、法改正や運用状況に応じて改定

規程を作成しただけでは不十分です。スタッフに周知し、実際に運用することで初めて効力が生まれます

よくある質問

Q1. 通勤での車両使用は業務使用に含まれますか?

通勤は原則として業務ではありません。
ただし、医院が通勤での使用を許可している場合は、医院が運行供用者責任を負う可能性があります。

通勤使用を認める場合は、事前許可制にし、任意保険の加入を必須としてください。

Q2. 私的利用中の事故でも医院が責任を負いますか?

医院が車両を所有している場合、私的利用を禁止していても運行供用者責任を問われる可能性があります。

そのため、車両管理規程で私的利用を明確に禁止し、違反者への懲戒処分を規定することで、医院の責任を軽減する努力が必要です。

Q3. ガソリン代を給与に含めても問題ありませんか?

業務使用のガソリン代を給与に含めると、所得税や社会保険料の計算対象となり、スタッフの手取りが減少します。そのため、実費精算として処理し、経費として計上することをおすすめします。

Q4. 交通事故を起こした従業員に修理費を請求できますか?

業務中の通常の過失による事故の場合、医院が全額負担するのが原則です。
ただし、スタッフに故意または重大な過失(飲酒運転、無免許運転など)がある場合は、医院はスタッフに対して損害賠償を求償できます。規程に明記しておくことが重要です。

Q5. 車両管理規程は就業規則に含める必要がありますか?

車両管理規程は、就業規則の別規程として作成するのが一般的です。就業規則本体には「車両管理については別に定める車両管理規程による」と記載し、車両管理規程を添付する形式が望ましいです。

スタッフ10名以上の事業所では、就業規則とともに労働基準監督署への届出が必要です。

社労士が教える車両管理の労務リスク管理ポイント

訪問歯科診療における車両管理は、単なる交通安全対策だけでなく、労務管理の重要な一部です。社労士の視点から、特に注意すべきポイントを解説します。

1. 労働時間管理との関連

  • 移動時間は労働時間:訪問診療先への移動時間は労働時間に含まれます。運転中も労働時間として扱い、適切に管理してください
  • 長時間運転のリスク:長時間の運転は疲労による事故リスクが高まります。連続運転は2時間以内に制限し、適切な休憩時間を確保しましょう
  • 運転日報の活用:運転日報で移動時間・距離を記録することで、労働時間管理と車両管理を一体化できます

2. 労災保険との関係

  • 業務中の事故は労災対象:訪問診療先への移動中の事故でケガをした場合、労災保険の対象となります
  • 通勤災害との区別:自宅から最初の訪問先への移動は「通勤」、訪問先間の移動は「業務」となり、適用される保険が異なります
  • 第三者行為災害届:交通事故で従業員がケガをした場合、労災保険と相手方への損害賠償が重複するため、労働基準監督署に「第三者行為災害届」の提出が必要です

参考URL厚生労働省神奈川労働局「第三者行為災害」

3. 懲戒処分の設定と運用

車両管理規程に違反したスタッフへの懲戒処分は、就業規則と整合させることが重要です。

  • 飲酒運転:懲戒解雇(最も重い処分)
  • 無免許運転・無断私的利用:諭旨解雇または懲戒解雇
  • 重大な交通違反(速度超過30km以上など):減給または出勤停止
  • 軽微な違反(日常点検の怠慢など):戒告または減給

懲戒処分を実施する際は、処分内容が就業規則に明記されていること、スタッフに弁明の機会を与える(特に重い処分の場合)ことが必要です。

4. 定期的な安全教育の実施

車両管理規程を作成しただけでは不十分です。定期的な安全教育を実施することで、「使用者責任」を軽減できる可能性があります。

  • 年2回の安全運転講習:外部講師を招いた講習会や、JAFの安全運転講習を活用
  • 事故事例の共有:院内で発生した事故や、他院の事例を共有し、再発防止策を議論
  • 教育記録の保管:誰がいつ教育を受けたかを記録し、3年間保管

まとめ:車両管理規程で安全な訪問診療を

本記事では、訪問歯科診療における車両管理規程の重要性と作成方法について詳しく解説しました。

重要ポイント

  • 交通事故時、医院は使用者責任と運行供用者責任により賠償責任を負う
  • 車両管理規程には私的利用の禁止・ガソリン代の負担・事故時の対応手順など7項目を明記
  • マイカーを業務使用する場合は、任意保険加入の確認と事前許可制が必須
  • 規程作成後はスタッフへの周知と定期的な安全教育が重要

小規模歯科医院の院長先生が、自分もスタッフも安心して働ける組織づくりを実現するため、ぜひ車両管理規程の整備に取り組んでください。

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社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー 小西朋安
小西 朋安社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー
社労士歴19年で、元プログラマーの異色キャリア。 わかりやすい就業規則の作成・経営理念の策定・浸透支援など、職場のあり方づくりに長年取り組んでいる。 近年は、GPTsを活用した求人原稿作成ツールや業務支援AIを自ら開発し、飲食店、美容室、歯科医院などの生成AI活用を積極的に支援している。