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スタッフが病気で長期欠勤(休職)。復帰の見込みがない場合、解雇は可能か?

スタッフが病気で長期欠勤(休職)。解雇は可能か?

神戸市で飲食店、美容室、歯科医院を経営されているオーナー、院長先生。

スタッフが病気で長期欠勤し、復帰の見込みが立たない状況でお困りではありませんか?

「人手不足なのに、いつまで待てば良いのか…」
「解雇できるのか、それとも待つしかないのか…」

小規模事業所では、一人のスタッフが欠けるだけで業務に大きな支障をきたします。しかし、病気を理由とする解雇は慎重な判断が必要です。

そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、病気による長期欠勤のスタッフへの対応について、法的な観点と実務上のポイントを詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 病気を理由とする解雇が可能な条件
  • 業務上の病気と私傷病の違いと対応の差
  • 休職制度の正しい運用方法と重要判例
  • 解雇トラブルを避けるための具体的な手順

病気を理由とする解雇の基本ルール

結論から言えば、病気を理由とした解雇は条件次第で可能ですが、簡単には認められません。

労働契約法第16条では、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効とされています。これを「解雇権濫用法理」といいます。

つまり、病気で働けないからといって、すぐに解雇できるわけではなく、正当な理由と適切な手続きが必要なのです。

病気による解雇を考える際、最も重要なのは、その病気が「業務上」のものか「私傷病」かの区別です。

労働基準法第19条により、業務上の負傷や疾病で療養中の期間とその後30日間は、原則として解雇が禁止されています。

例外として、療養開始後3年を経過しても治らない場合で、労災保険の傷病補償年金を受給している場合などには解雇が可能になります。

私傷病の場合は、業務上の病気と異なり、法律による解雇制限はありません。ただし、就業規則の定めに従って対応する必要があります。

重要な注意点: 当初は私傷病と思われていても、後から「業務が原因」と主張されるケースがあります。この判断は慎重に行う必要があります。

近年、メンタル系の疾患について、業務が原因で発症したとして、労災認定されるケースが増えています。

休職制度は、解雇を一定期間猶予する制度と言えます。

スタッフが病気になった場合、ただちに解雇するのではなく、休職期間を設けることで回復の機会を与え、雇用を維持することを目的としています。

多くの企業では、次のような休職規定を設けていることが多いです。

一般的な休職規定の例:
「業務外の傷病により、療養のため継続して〇日以上欠勤する場合は、休職を命ずることがある。休職期間は勤続年数に応じて○ヶ月とする。休職期間満了時に病気が治癒していない場合は、退職(または解雇)とする。」

厚生労働省モデル就業規則の規定を一部変更)

上記のような一般的な規定だけでは、メンタル疾患には対応できないことが多いため、欠勤をしない場合でも、「通常の労務提供ができない」場合なども休職理由として規定することも検討すべきです。

休職期間満了時の判断基準と重要判例

休職期間満了時に「復職可能か」を判断する際、重要となるのが「治癒」の定義です。

治癒とは、「従前の職務を通常の程度に行える健康状態」と定義するのが一般的です。

ただし、「通常の程度」とは、病気になる前と完全に同じレベルまで回復していることを意味するわけではありません。業務に支障のない程度の回復を意味します。

病気による解雇を判断する上で、必ず知っておくべき重要な最高裁判例があります。
・片山組事件(最高裁平成10年4月9日判決)
全国公益社団法人全国労働基準関係団体連合会・判例検索より)

建築会社で現場監督をしていた従業員がバセドウ病を発症し、現場作業はできないが事務作業なら可能という診断を受けました。

しかし、会社は自宅治療命令を継続し、賃金を支払いませんでした。従業員は賃金の支払いを求めて訴訟を起こしました。

最高裁は、次のように判断しました。

労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合において、特定の業務について労務の提供を十分にできないとしても、その労働者の能力、経験、地位、企業の規模、業種、配置・異動の実情などに照らして、配置される現実的可能性がある他の業務について労務提供ができ、かつ、その提供を申し出ている場合には、債務の本旨に従った履行の提供があるというべきである。」

この判例は、小規模事業所にとって非常に重要な意味を持ちます。

  • ポイント1: 元の仕事ができなくても、他の軽易な仕事ができる場合、配置転換の可能性を検討する必要がある
  • ポイント2: 企業規模が大きいほど、配置転換の可能性が広く認められる傾向にある
  • ポイント3: 職種や業務内容が労働契約で明確に限定されている場合は、配置転換の義務は軽減される

解雇・退職を検討する際の具体的な手順

まず、お店や医院の就業規則を確認しましょう。

  • 休職制度の有無と休職期間の定め
  • 休職期間満了時の扱い(「退職」か「解雇」か)
  • 解雇事由として「精神または身体の障害により業務に耐えられないとき」などの規定があるか

就業規則に休職制度がない場合でも、ただちに解雇するのはリスクが高いです。休職制度のように、回復までの猶予期間を設けるなどの配慮が必要です。

長期欠勤が続く場合、書面で休職命令を発令します。

  • 休職事由(医師の診断書に基づく具体的な内容)
  • 休職期間の開始日と満了日
  • 休職期間中の報告義務
  • 復職の条件

口頭ではなく、必ず書面で交付し、記録を残しておくことが重要です。

休職期間中も、定期的にスタッフの状況を確認することが大切です。

  • 月に1回程度、診断書の提出を求める
  • スタッフからの近況報告を受ける
  • 必要に応じて、主治医との面談を申し入れる

スタッフには、主治医との面談実現に協力する義務があることを就業規則に明記しておきましょう。

休職期間満了の1〜2ヶ月前から、復職可否の判断プロセスに入ります。

  • 主治医の診断書: 「復職可能」「軽作業なら可能」「短時間なら可能」などの具体的な意見
  • 産業医の意見: 産業医がいる場合は必ず意見を聴取
  • 本人の意向: 復職を希望しているか、どの程度の業務なら可能と考えているか
  • 配置転換の可能性: 元の仕事ができない場合、他に任せられる仕事があるか

主治医との面談は、本人同席のもとで行うことが望ましいです。裁判になった場合、主治医の意見を聴取したかどうかは非常に重視されます。

片山組事件の判例に基づき、以下の場合は配置転換の可能性を検討する必要があります。

  • 職種が労働契約で限定されていない場合
  • 元の仕事はできないが、軽易な作業なら可能な場合
  • 企業規模や業務内容から、配置転換の現実的可能性がある場合

小規模事業所では、配置転換の余地が限られるため、この点は有利に働く可能性があります。ただし、全く検討しないのではなく、可能性を検討したという記録を残すことが重要です。

復職不可能と判断した場合、就業規則の定めに従って手続きを進めます。

就業規則に「休職期間満了に伴い退職とする」と定められている場合は、自然退職となります。

  • 解雇予告や解雇予告手当は不要
  • 休職期間満了通知書を交付
  • 離職票の離職理由は「自己都合」ではなく「事業主都合」扱いになることが多い

離職票の離職理由が「事業主都合」と判断された場合は、助成金の受給に制限がかかるなどの不利益を被ることがあります。

就業規則に「休職期間満了に伴い解雇する」と定められている場合は、解雇となります。

  • 解雇予告: 休職期間満了の30日以上前に解雇予告通知が必要
  • 解雇予告手当: 30日前に予告しない場合は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当が必要
  • 解雇理由証明書の交付(従業員から請求があった場合)

休職期間満了の30日前までに解雇予告をしていない場合、解雇予告手当を支払うか、改めて30日後に解雇することになります。

小規模事業所特有の注意点

従業員10名未満の事業所では、就業規則の作成義務はありません。しかし、休職制度や解雇事由を明確にしておくことは非常に重要です。

就業規則がない場合でも、雇用契約書に休職や解雇に関する条項を盛り込むことで、一定の対応が可能になります。

ただし、全スタッフの雇用契約書に休職規定や解雇に関する規定をすべて網羅させるのは、非現実的と言えます。

従業員10人未満でも就業規則は必要?小規模事業所の判断のカンドコロ

小規模事業所では、「配置転換の余地がほぼない」ことがほとんどです。
ですが、最初から配置転換の余地を検討することを放棄せず、検討を重ねた結果、実現が困難であったという記録を残しましょう。

  • 従業員数と各人の担当業務の一覧
  • 休職者の元の業務と、代替可能な業務の検討記録
  • 職種が特定されている場合は、その契約内容

これらの記録を残すことで、配置転換を検討したが現実的に困難であったことを示せます。

調理、接客・レジなど、業務が比較的明確に分かれているため、軽作業への配置転換の可能性を検討する必要があります。

ただし、小規模店舗では全員が複数の業務を兼務することが多く、配置転換の余地が限られる点を記録しておきましょう。

技術職としての性質が強く、職種限定の要素が強い業種です。

スタイリストが手の怪我などで技術業務ができない場合、受付業務などへの配置転換の可能性を検討することになりますが、小規模サロンでは現実的でないことが多いでしょう。

歯科衛生士、歯科助手など、専門性の高い職種です。

感染症リスクのある職場環境のため、免疫力が低下している状態での復職は慎重に判断する必要があります。受付業務への配置転換の可能性はありますが、小規模医院では限定的と言えます。

トラブルを避けるための予防策

解雇をめぐるトラブルでは、会社側の対応が適切であったことを証明する記録が決定的に重要です。

  • 休職命令書(本人への交付日も記録)
  • 定期的に提出された診断書
  • 主治医との面談記録(日時、出席者、話し合った内容)
  • 産業医の意見書(※)
  • 本人との面談記録
  • 配置転換可能性の検討記録
  • 休職期間満了通知書または解雇予告通知書

※小規模な事業所では、産業医を選任していないことがほとんどです。
その場合でも、事業主側が指定する医師の診断を受けてもらうことも可能ですので、検討材料の一つとすべきです。

裁判では、主治医の意見が非常に重視されます。主治医との面談を行わずに復職不可の判断をすると、不当解雇と認定されるリスクが高まります。

主治医面談を実施する際は、本人の同席を得て、以下の点を確認しましょう。

  • 現在の病状と今後の見通し
  • 元の業務に復帰可能か
  • 軽作業なら可能か、その場合どの程度の作業か
  • 今後の治療方針と回復の見込み

復職可能かどうかの判断が難しい場合、リハビリ勤務を実施することで、実際の業務遂行能力を確認できます。

リハビリ勤務の結果、やはり業務遂行が困難であると判断された場合、その記録は復職不可判断の重要な根拠となります。

よくある質問

休職期間はどのくらいに設定すべきですか?

一般的には、勤続年数に応じて設定します。例えば、勤続1年未満は3ヶ月、1年以上3年未満は6ヶ月、3年以上は1年といった設定が一般的です。

小規模事業所では、あまり長期の休職期間を設定すると、事業運営に支障をきたす可能性があります。事業規模に応じた合理的な期間設定が重要です。

特に社会保険に加入しているスタッフの場合は、毎月の社会保険料が労使ともに通常どおりかかるので、その点も考慮しましょう。

休職期間中の給与はどうすべきですか?

法律上、休職期間中の給与支払義務はありません。多くの企業では「休職期間中は無給」と定めています。

ただし、スタッフは健康保険の傷病手当金(標準報酬月額の約3分の2)を受給できる可能性があります。手続きについてアドバイスすることで、従業員の生活不安を軽減できます。

休職期間中の給料や社会保険料はどうする?具体的な規定例をまじえて詳しく解説
メンタル不調の場合、特に注意すべき点はありますか?

メンタル不調の場合、業務上のストレスが原因でないか、特に慎重に検討する必要があります。

もし業務上の原因が認められると、労災認定される可能性があり、解雇制限の対象となります。また、復職判断も身体疾患より慎重に行う必要があります。主治医の意見聴取は必須と考えてください。

解雇を避けて円満に退職してもらう方法はありますか?

合意退職(退職勧奨)という方法があります。これは、会社から退職を勧めて、スタッフが自発的に退職に同意する形です。

ただし、強引な退職勧奨は違法になる可能性があります。

スタッフの状況を丁寧に説明し、退職後の生活支援(退職金の上乗せ、再就職支援など)を提案することで、円満な解決を図ります。

まとめ:病気による長期欠勤への適切な対応で組織を守る

本記事では、スタッフが病気で長期欠勤し、復帰の見込みがない場合の対応について詳しく解説しました。

重要ポイント

  • 病気を理由とする解雇は可能だが、業務上の病気か私傷病かで大きく異なる
  • 休職制度は解雇猶予制度であり、適切な運用が重要
  • 片山組事件など重要判例に基づき、配置転換の可能性も検討する必要がある
  • 主治医の意見聴取と詳細な記録が不当解雇トラブルの予防に不可欠
  • 小規模事業所では配置転換の余地が限られることを記録として残す

神戸市の小規模事業所の皆様が、適切な労務管理を通じて、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現できることを願っています。

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