「何度言っても、スタッフが思うように動いてくれない」
「”いい人”だと思って採用したがハズれた」
「スタッフに気を遣い社長・院長である自分が一番疲れている」
こうしたお悩みの原因は、能力や努力の問題ではありません。組織の”規模”に合わないやり方をしているサインです。
結論をお伝えします。
社員10人未満規模の会社・医院の組織づくりは、大企業向けの一般論ではうまくいきません。
①社長・院長を主役に据え、
②強力なトップダウンで決め、
③役職と役割をセットで定義し、
④「スキル」より「同意・共感」で人を選ぶ
この4原則を土台に、「守破離」の3ステップと「3つの文書」で明文化することが、社長・院長が「人のこと」で消耗しない組織への最短ルートです。
そこでこの記事では、社会保険労務士であり「10人未満の組織づくり」支援を行う筆者が、神戸市を中心に小規模事業所の経営者の方と向き合うなかで体系化した組織づくりの全体像をお伝えします。
※各論は個別の記事をご案内しますので、併せてご覧ください。
この記事でわかること
- なぜ10人未満の組織には「専用の方法」が必要なのか
- 小規模組織を支える「4つの絶対原則」
- 理想が再現される仕組み「守・破・離」の3ステップ
- 思想を形にする「3つのドキュメント」の役割
- 採用・評価、役職設計、労務管理の考え方
- よくある質問と、今すぐできる第一歩
目次
なぜ10人未満の組織には「専用の方法」が必要なのか
結論として、10人未満の組織には、大企業向けの一般的な組織論はむしろ逆効果になることがあります。理由は、構造も意思決定の速度もまったく違うからです。
大企業は「仕組みで人を動かす」ことが前提です。
一方、10人未満の小さな組織では、社長・院長の思想や判断が、組織のあらゆる場面に直接的に染み込みます。
だからこそ、社長・院長の考えを「言葉」にし、組織の日常まで届ける設計が必要になります。
2026年版「中小企業白書・小規模企業白書」でも、小規模事業者の経営課題として「組織活性化」や「従業員のエンゲージメント維持・向上」が重要なテーマとして挙げられています(出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」)。
人手不足が深刻化するなか、採用した人材の定着率を高め意欲的に働いてもらうための取り組みが大きな課題です。
▶さらに詳しく:
小規模組織のための「4つの絶対原則」
結論:10人未満の組織は、次の4つの原則の上に成り立たせると安定します。
①組織は社長・院長のためにある
②強力なトップダウン
③役職は”役割”とワンセット
④採用・評価は「スキル」より「同意・共感」
この4つです。
① 組織は「社長・院長のため」にある
組織のすべては、社長・院長ご自身の理想の働き方・生き方を実現するためにあります。主役はあなた自身です。社長・院長が消耗していては、よい組織はつくれません。
② 強力なトップダウン
決定権は100%社長・院長にあります。「ボトムアップ風」の中途半端な運営は、組織の軸をブレさせ、結局あなたを消耗させます。だからこそ、明確にトップダウンで決めることが重要です。
③ 役職は”役割”とワンセットで
役職を置くなら、「何を・どこまでやるか」という役割定義を必ずセットにします。肩書きというラベルを与えるだけでは、人は動きません。
社長・院長の頭の中にある役職(リーダー)の役割を明確にしない限り、スタッフは思うように役割を果たしてはくれません。
④ 採用・評価は「スキル」より「同意・共感」
学歴や職歴よりも大切なのは、組織の価値観と働き方への共感です。価値観が合う人こそ、長く力になり、社長・院長の気疲れを減らしてくれます。
▶さらに詳しく:
- 小さな組織に大企業の組織論が通用しない3つの理由
- 小規模組織のトップダウンは悪なのか?「強い社長」が組織を健全にする理由
- 役職を与えても人が動かないのはなぜ?「役割定義」とワンセットにする方法
- 採用は「スキル」より「共感」で決めるべき理由|価値観採用の始め方
理想が再現される仕組み「守・破・離」の3ステップ

結論:社長・院長の頭の中の「理想」をスタッフに再現させるには、「守破離」の3ステップで段階的に染み込ませる方法が効果的です。
「守破離(しゅはり)」とは、茶道や武道などの芸道や芸術における修業の段階を示した言葉です。
物事を学ぶ際、「まずは先人の型を守り、それを応用・発展させ、最終的に独自のスタイルを確立する」という成長のプロセスを表しています。
- 【守】型の徹底:経営者の価値基準・存在意義を、役職ごとの行動レベルにまで落とし込みます。「100%徹底すべきルール」として、スタッフが迷わず動ける道筋をつくります。
- 【破】質の高い提案と行動:型が身体に染み込むことで、初めて「経営者の意図」が伝わります。価値観の範囲内で、軸のブレない提案と行動が生まれてきます。
- 【離】本当の自立:ルールにない不測の事態でも、スタッフが「うちの社長なら、こうするはず」と判断できる。経営者の考えを、組織全体が体現するようになります。
多くの小規模組織が「破」や「離」をいきなり求めて失敗します。「守」、つまり、まずは「型」を徹底することが、結果として自立を生む――この順番が肝心です。
▶さらに詳しく:
思想を形にする「3つの文書」

結論:社長・院長の思想は「3つの文書」に分けて言葉にすると、組織の日常まで届きます。コンセプトブック・バリュー・ルールブックの3層です。
01|CONCEPT BOOK(コンセプトブック)
社長・院長の人間観・仕事観・組織の方向性をまとめる一冊です。すべての判断のよりどころとなる、組織の”根っこ”にあたります。
02|VALUE(バリュー/行動指針)
「お客様(患者様)への対応」「自己成長」「チームワーク」「仕事への取り組み方」「経営姿勢」の5つの基準を定めます。コンセプトブックを「組織の言葉」に翻訳した層です。
03|RULE BOOK(ルールブック)
バリューを、場面ごとの具体的な行動にまで落とし込みます。日々の判断や所作のレベルで、スタッフが迷わない状態をつくります。
3層が連動することで、社長・院長の頭の中が、組織の日常にまで届くようになります。
▶さらに詳しく
- 会社の「理念・行動指針・ルール」はなぜバラバラだと機能しないのか
- コンセプトブックとは?社長の頭の中を言語化する経営の土台
- バリュー(行動指針)の作り方|小規模組織が定めるべき5つの基準
- ルールブックの作り方|行動指針を「日々の具体行動」に落とし込む方法
採用・評価は「スキル」より「同意・共感」で設計する
結論:小規模組織の採用・評価で最も重視すべきは、スキルではなく「社長・院長の価値観、働き方への同意と共感」です。価値観が合う人が、結果として長く力になってくれます。
10人未満の組織では、1人のミスマッチが全体に与える影響が極めて大きくなります。逆に言えば、コンセプトブックやバリューに「同意・共感」できる人を最初に選び切れれば、入社後の指導コストは大きく下がります。
パーソル総合研究所「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」でも、企業理念に共感する人材を採用段階で集めることで、ミスマッチによる離職の抑制が可能とされています。「同意」を採用の入口に置く設計は、定着率向上の有効な手段です。
▶さらに詳しく:
- 採用は「スキル」より「共感」で決めるべき理由|価値観採用の始め方
- 小規模医院・会社でスタッフがすぐ辞める原因と、定着させる組織の条件
- 求人を出しても応募が来ないときに見直すべきこと(小規模事業者向け)
役職と役割をセットで定義する
結論:役職は肩書きだけ与えても機能しません。「何を・どこまでやるか」という役割定義をセットにしてはじめて、組織は動きます。
「主任」「リーダー」「チーフ」などの肩書きを与えただけで、「これからは自分で考えて動いてくれるだろう」と期待してしまうのは、小規模組織でよくある失敗パターンです。役割の定義こそが、役職を「機能」させる条件です。
守破離の「守」段階では、役職ごとの行動レベルまでルール化することが特に重要です。役割が明確であれば、スタッフは迷わず動けて、社長・院長は気を回す回数が減ります。
役職者としての役割を自分で考えてこなしてくれる人はほぼいませんし、自分で考えて行動しても社長・院長の考えとは大きく異なっていることがよくあります。
そのため、社長・院長の頭の中にある役職者の役割を明確に言語化する必要があるのです。
▶さらに詳しく:
社労士視点:就業規則より先に「価値観の一致」を整える
結論:労務トラブルの多くは、制度の不備よりも「価値観のズレ」から生まれます。
社長・院長の考えがスタッフに伝わり、同意のうえで働ける状態をつくることが、結果として労務リスクの軽減につながります。
社会保険労務士である私がこれまで現場で見てきたのは、立派な就業規則を整えているのに労務トラブルが絶えない組織と、規定はシンプルでもまったくトラブルが起きない組織が併存している、という事実です。
違いは、ルールの良し悪しではなく、「なぜそうするのか」が共有されているかどうかでした。
たとえば、
「残業を減らしたい」
「有給を計画的に取ってほしい」
「身だしなみのルールを守ってほしい」
こうした要望は、ルールとして押し付けると反発や不満を生みやすいテーマです。
しかし、コンセプトブックで社長・院長の人間観や仕事観が共有され、バリューで「私たちはこういう働き方を大切にする」と同意・共感できていれば、同じ要望でも「腹落ちした行動」に変わります。
つまり、社長・院長の価値観への同意・共感があるからこそ、ルールが「押し付け」ではなく「共通の約束」として機能するんです。
これが、労務トラブルの起きにくい組織の秘訣です。
逆に、価値観が共有されないまま制度だけ整えても、スタッフの心の中には「やらされ感」が残り、退職時や問題発生時に表面化します。
採用段階で「同意」を確認しておくことの意義も、ここにあります。価値観が合う人だけが入ってくれば、勤怠・服務・人間関係をめぐるトラブルの発生確率そのものが下がります。
人手不足が深刻化するなか、採用した人材の定着率を高めることが大きな課題とされています(出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」)。労務トラブルを未然に防ぐ仕組みは、定着率向上の前提条件です。
▶さらに詳しく:
独自フレーム全体像|4原則 × 守破離 × 3つの文書の俯瞰
これまで紹介した「4つの絶対原則」「守破離の3ステップ」「3つの文書」は、別々のものではなく、一つの組織づくりを多面的に支える設計図です。
関係を整理すると、次のようになります。
- 4つの絶対原則は、組織運営の「土台となる思想」です。
①組織は社長・院長のためにある
②強力なトップダウン
③役職と役割のセット
④「スキル」より「同意・共感」
――この4つが意思決定の基準になります。 - 守破離の3ステップは、その思想を「スタッフに染み込ませる時間軸」です。一気に自立を求めず、「守→破→離」の順で段階的に育てます。
- 3つの文書は、思想を「言語化して形として表すためのもの」です。コンセプトブックで根っこを言語化し、バリューで基準にし、ルールブックで日々の行動にまで落とします。
つまり、4原則という「思想」を、守破離という「育成の順番」で、「3つの文書」に落とし込む――これが「10人未満の組織づくり」の全体像です。
よくある失敗は、ドキュメントだけ作って終わるパターンです。立派なバリューカードを刷っても、4原則という土台と、守破離という運用の順番がなければ、社長・院長は結局「気を遣う毎日」から抜け出せません。
逆に、この3層がそろって連動すると、「うちの社長なら、こうするはず」とスタッフが判断できる状態に近づきます。社長・院長がいちいち気を回さなくても、組織が経営者の考えを体現するようになる――これがゴールイメージです。
小規模組織にとっての「組織づくり」は、決して大企業の理念経営の縮小版ではありません。社長・院長を主役にした、まったく別の設計思想だと考えると、進め方が見えてきます。
10人未満の組織づくりに関するよくある質問・誤解
今後のアクション
今すぐできる第一歩
まずは、社長・院長の頭の中にある「理想の組織像」を、一度紙に書き出してみてください。完成度は不要です。「どんなスタッフと働きたいか」「自分が本当に大事にしている価値観は何か」――この2つを言葉にするだけで、組織づくりの起点ができます。
専門家へ相談するタイミング
「スタッフのことで何度も同じ説明を繰り返している」「採用してもすぐに辞めてしまう」「役職を置いたのに人が動かない」――こうした状態が続いているなら、組織の土台を整える専門家への相談を検討するタイミングです。
神戸市での組織づくり・相談サポート情報
神戸市内で経営相談ができる公的機関としては、こうべ産業・就労支援財団や兵庫県よろず支援拠点などがあります。経営全般や人材・販路開拓など幅広い相談が可能です。
当事務所(社会保険労務士こにしオフィス)では、「10人未満の組織づくり」支援として、コンセプトブック・バリュー・ルールブックの3点を6か月で制作するサービスをご提供しています。
このサービスで社長・院長が「人のこと」で消耗しない組織の土台を一緒につくりあげます。
ご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。















