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歯科衛生士の兼業・副業、掛け持ち勤務の歯科衛生士を雇用する際の3つのリスク|労働時間管理と過労防止の実務対応

歯科衛生士の兼業・副業、掛け持ち勤務の歯科衛生士を雇用する際の3つのリスク|労働時間管理と過労防止の実務対応

歯科医院を経営されている院長先生。

歯科衛生士不足の現状において、副業や兼業で働く歯科衛生士を雇用する機会が増えていませんか?

「週2日だけの勤務でもいいから働いてほしい。」
「他院と掛け持ちしている方でも問題ないから採用したい。」

こんな思いで採用を検討している院長先生も多いのではないでしょうか?

しかし、副業・兼業で働く歯科衛生士を雇用する際には、労働時間管理や健康管理に関する法的リスクが存在します。

適切な対応をしなければ、労働基準法違反や安全配慮義務違反として法的な罰則を受けたり、損害賠償責任を負う可能性があります。

そこでこの記事では、社労士×生成AI活用アドバイザーの視点から、歯科衛生士の副業・兼業雇用における3つのリスクと、労働時間管理・過労防止の実務対応について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 兼業と副業の違いと労働時間通算の基本知識
  • 掛け持ち勤務の歯科衛生士を雇用する際の3つの法的リスク
  • 労働時間管理と過労防止の具体的な実務対応方法

兼業と副業の違い|労働時間通算の基本知識

法律上、兼業と副業に明確な定義はありませんが、一般的には以下のように区別されます。

項目副業兼業
位置づけ本業のサブ的な仕事本業と同等の複数の仕事
労働時間本業より短い本業と同等の時間
収入本業より少ない本業と同等レベル
労力・責任比較的軽い本業と同等の責任

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、両者を特に区別せず、「本業以外の就業」として扱っています。

参考: 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

労働基準法第38条では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。

つまり、他の医院で働いている時間と自院での労働時間を合算して管理しなければならないということです。

労働時間通算の具体例

  • A歯科医院(本業): 9時〜17時(所定労働時間7時間、休憩1時間)
  • B歯科医院(副業): 18時〜21時(3時間)

この場合、合計労働時間は10時間となり、法定労働時間(1日8時間)を2時間超過します。

後から労働契約を締結した事業主(B歯科医院)には、超過分の2時間について時間外労働(残業)の割増賃金(25%以上)の支払い義務が発生します。

現在、労働時間通算ルールの見直しが議論されています。

現行の「事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」という労働時間の通算を廃止し、各事業所は、自分の事業所での労働時間(残業時間を含む)のみを管理する方向で検討が進んでいます。

ただし、健康管理のために「月単位での健康管理のための労働時間把握」は必要とされる方針です。

とはいえ、2026年1月現在、まだ法改正には至っておらず、現行の労働時間通算ルールが適用されるため、注意が必要です。

参考: 厚生労働省「労働時間法制の具体的課題について③」(2025年6月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001504156.pdf

掛け持ち勤務の歯科衛生士を雇用する際の3つのリスク

掛け持ち勤務の歯科衛生士を雇用する際の3つのリスク

具体的なリスク内容

他院での労働時間を把握せず、自院での勤務時間だけで管理していると、労働基準法第38条(労働時間の通算)違反となります。

  • 36協定の締結漏れ: 通算で法定労働時間を超える場合、36協定の締結と届出が必要
  • 割増賃金の未払い: 時間外労働に対する割増賃金(25%以上)の支払い義務違反
  • 罰則: 労働基準法違反には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

安全配慮義務とは

労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。

これを「安全配慮義務」といい、スタッフの健康を守るための使用者の責任です。

過労死ラインと労災認定基準

厚生労働省の労災認定基準では、以下の場合に脳・心臓疾患と業務の関連性が強いと評価されます。

期間時間外労働時間業務との関連性
発症前1か月100時間超業務との関連性が強い
発症前2〜6か月平均80時間超/月業務との関連性が強い
継続的45時間超/月関連性が徐々に強まる

掛け持ち勤務の場合、全事業場の労働時間を合算して判断されるため、自院での勤務が短時間でも、トータルで過労死ラインを超えていれば、安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

参考: 厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/000833810.pdf

安全配慮義務違反の損害賠償リスク

過労により従業員が健康被害を受けた場合、使用者は安全配慮義務違反として損害賠償責任を負う可能性が非常に高いです。

  • 損害賠償の内容: 治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料など
  • 賠償額: 数百万円から数千万円に及ぶケースもある
  • 社会的信用の失墜: 医院の評判低下、スタッフの離職につながる

管理業務の負担増加

掛け持ち勤務の従業員を雇用すると、以下の管理業務が必要になります。

  • 他院での労働時間の定期的な確認・記録
  • 労働時間通算の計算と割増賃金の算定
  • 健康状態の把握と過重労働防止のための面談
  • 副業・兼業に関する合意書の作成・更新

小規模な歯科医院では、院長先生やスタッフが限られているため、これらの管理業務が大きな負担となります。

情報共有の困難さ

他院での勤務状況を正確に把握するには、本人からの自己申告に頼らざるを得ません。

しかし、申告漏れや虚偽申告のリスクがあり、正確な労働時間管理が困難になる場合があります。

労働時間管理と過労防止の実務対応

採用面接時の確認事項

採用面接の段階で、以下の項目を必ず確認しましょう。

  • 他の医院での就業の有無
  • 就業先の事業場名・所在地
  • 就業日・就業時間
  • 業務内容
  • 労働時間の通算が必要かどうか(雇用契約か請負・委任契約か)

副業・兼業に関する合意書の作成

厚生労働省が公表している「副業・兼業に関する合意書」の様式を参考に、以下の内容を明記した合意書を作成します。

  • 他の事業場での就業状況を定期的に申告すること
  • 労働時間を通算して管理すること
  • 健康管理のため、必要に応じて面談を実施すること
  • 長時間労働により健康被害が懸念される場合、勤務時間の調整を行うこと

参考: 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000964082.pdf

月次での労働時間申告制度の導入

毎月末(または翌月初)に、他院での勤務状況を書面またはメールなどで申告してもらいます。

申告内容:

  • 就業先の事業場名
  • 各日の労働時間(開始時刻・終了時刻・休憩時間)
  • 月の合計労働時間

労働時間管理簿の作成

自院と他院の労働時間を合算して記録する「労働時間管理簿」を作成します。

日付自院での労働時間他院での労働時間合計労働時間時間外労働
1月10日7時間3時間10時間2時間
1月11日7時間0時間7時間0時間

この管理簿を基に、割増賃金の計算や健康管理のための面談を実施します。

月80時間超の場合は医師による面接指導

労働安全衛生法では、時間外労働が月80時間を超える労働者に対して、医師による面接指導を実施することが義務付けられています。

掛け持ち勤務の場合も、全事業場の労働時間を合算して判断します。

健康状態の定期確認

月に一度、院長先生または管理者が、掛け持ち勤務のスタッフと面談を行い、以下を確認します。

  • 疲労の蓄積状況
  • 睡眠時間の確保
  • 体調不良の有無
  • 仕事と生活のバランス

過重労働の兆候が見られた場合は、勤務時間の調整や休暇の取得を促すなど、具体的な対応を行います。

勤務シフトの調整

労働時間が過労死ラインに近づいている場合、以下の対応を検討します。

  • 自院での勤務日数・時間の削減
  • 休日の確保(週1日以上の休日を確保)
  • 他院との情報共有(可能な範囲で)

社労士が教える歯科医院の労務管理ポイント

従業員10名以上の事業場では、就業規則に副業・兼業に関する規定を追加することが推奨されます。

記載例:

  • 副業・兼業を行う場合は事前に届出を行うこと
  • 他の事業場での労働時間を毎月申告すること
  • 本業に支障をきたす場合や健康被害が懸念される場合は、副業・兼業の制限を行う場合があること
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労働時間を通算した結果、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える場合、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。

掛け持ち勤務の従業員を雇用する際は、必ず36協定を締結しておきましょう。

歯科医院院長のための36協定の正しい記入例と注意点

労務トラブルが発生した際に備え、以下の記録を保存しておくことが重要です。

記録項目保存期間目的
副業・兼業に関する合意書5年労働条件の明確化
労働時間申告書5年労働時間管理の証明
労働時間管理簿5年割増賃金算定の根拠
健康管理面談記録5年安全配慮義務の履行証明

よくある質問と誤解

週2日だけの勤務なら、労働時間通算は不要ですか?

勤務日数が少なくても、労働時間通算は必要です。

他の事業場と雇用契約を締結している場合、勤務日数に関わらず労働時間を通算して管理しなければなりません。1日でも法定労働時間(8時間)を超える場合は、割増賃金の支払いが必要です。

本人が「他院の勤務状況は言いたくない」と拒否した場合は?

採用時の合意書で、労働時間の申告義務を明記しておくことが重要です。

申告を拒否する場合は、安全配慮義務を果たすことができないため、雇用契約の解除も検討せざるを得ないことを説明しましょう。ただし、解雇は最終手段であり、まずは丁寧に説明して理解を得ることが大切です。

フリーランスとして個人事業主扱いなら、労働時間通算は不要ですか?

請負契約や委任契約(業務委託契約)の場合、労働時間通算の対象外となります。

ただし、実質的に労働者として指揮命令を受けている場合は、契約形態に関わらず労働者とみなされ、労働時間通算が必要になる場合があります。

業務委託契約を締結する際は、社労士などの専門家に相談することをお勧めします。

歯科技工士は雇用?業務委託(フリーランス)どっち?|契約形態の選択と労務リスクの違いを解説

まとめ:掛け持ち勤務の歯科衛生士雇用は適切な労務管理で安全に

本記事では、歯科衛生士の兼業・副業、掛け持ち勤務の雇用における3つのリスクと、労働時間管理・過労防止の実務対応について詳しく解説しました。

重要ポイント

  • 兼業・副業でも労働時間通算が必要(労働基準法第38条)
  • 過労による健康被害は安全配慮義務違反として損害賠償責任
  • 採用時の確認・合意書作成、定期的な労働時間把握、健康管理が重要

歯科医院の院長先生が、自分もスタッフも働きたくなる組織づくりを実現するため、適切な労務管理を行いながら、人材不足を解消していくことを心から願っています。

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ABOUT US
社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー 小西朋安
小西 朋安社会保険労務士×生成AI活用アドバイザー
社労士歴19年で、元プログラマーの異色キャリア。 わかりやすい就業規則の作成・経営理念の策定・浸透支援など、職場のあり方づくりに長年取り組んでいる。 近年は、GPTsを活用した求人原稿作成ツールや業務支援AIを自ら開発し、飲食店、美容室、歯科医院などの生成AI活用を積極的に支援している。