「主任にしたのに、リーダーらしい動きをしてくれない」
「肩書きを与えたのに、結局自分に判断を聞きにくる」
「役職者に任せたはずの仕事が、いつも自分に戻ってくる」
そう感じたことはありませんか。
「主任」「リーダー」という肩書きだけを与えても、その人は社長や院長が望むような行動はとってくれません。
役職には「何を・どこまでやるのか」という役割定義をワンセットで与える必要があります。
この記事では、神戸市を中心に小規模組織の組織づくりを支援する社会保険労務士が、役職が機能しない理由と、役割を明確にする具体的な方法を解説します。
この記事でわかること
- 「主任」「リーダー」を任せても機能しない本当の理由
- 役割を明確にすると組織がどう変わるか
- 役割を明確にする3ステップ
- 役割定義が「名ばかり管理職」対策にもなる理由
「主任」「リーダー」を任せても機能しないのはなぜか?
結論として、役職と役割は自動的にはセットになりません。
肩書きを与えるだけでは、本人にも周囲にも「何をする人なのか」が伝わらないためです。
一方で、社長や院長には、役職者には「こういったことをして欲しい」「こうしてくれるはず」という考えが明確あるので、役職者とのギャップが生まれやくなります。

「主任」「リーダー」という言葉自体に、決まった役割はない
「主任」「リーダー」といった役職名には、法律上も一般的にも決まった役割の定義がありません。
同じ「主任」でも、会社によって部下育成まで担うのか、現場をまとめるだけなのかはまったく異なります。
社長・院長の頭の中にある期待を言葉にしない限り、本人は「自分で考えて」正解を探すしかなく、結局これまでと同じ動き方になりがちです。
役職者が「自分で考えて」動くと、社長・院長の考えとは違った行動になることが多く、これによって、経営者は「ちゃんとやってくれない。」、役職者は「きちんとやっているのに、評価されていない。」という残念なことが起こります。
具体的な行動・権限を示さずに「自律」だけを求めてしまう
「役職者に求められる行動は○○だ」、「役職者はどこまで自分の判断で決めていいか」を渡さないまま、自律的な行動だけを期待することは、すれ違いを生む大きな原因です。
社長・院長から具体的な行動が示されていないため、今までどおりの行動を繰り返したり、あるいは社長・院長の考えから逸脱した行動をとってしまうということが起こります。
また、権限のない役職者は、失敗を避けようとして社長・院長に判断を仰ぐ以外の選択ができなくなるものです。
役割を明確にすると、組織はどう変わるか?
結論として、役割を明確にすると、社長・院長への確認が減り、役職者自身が判断できる範囲が広がります。
「何を・どこまで」が言語化されていれば、役職者は迷わず動けますし、社長・院長は同じ確認を何度も受ける負担から解放されます。
これは、指示しなくてもスタッフが動く状態をつくる「守・破・離」の「守」の土台そのものです。
詳しくは指示しなくてもスタッフが動く組織のつくり方|守破離で「社長の判断」を再現するで解説しています。
役割を明確にする3ステップ
結論として、役割定義は「行動」「権限」「明文化」の3ステップで進めます。
順に見ていきます。

ステップ①:期待する「行動」を書き出す
まず、その役職に「日々やってほしい具体的な行動」を書き出します。
「周りを見て動く」ではなく、「開店30分前に清掃の割り振りを確認する」など、行動レベルまで具体化することが重要です。
ステップ②:判断できる「権限」の範囲を決める
次に、「どこまでは本人の判断でよく、どこからは社長・院長に確認が必要か」の境界線を決めます。
金額・人員配置・シフト変更など、判断の対象ごとに線を引くと現実的です。
ステップ③:ルールブックに明文化し、口頭に頼らない
最後に、①②を文書として残します。
口頭説明だけでは記憶や解釈がずれるため、「ルールブック」として明文化し、いつでも見返せる状態にすることが定着の鍵です。
よくあるつまずきと、機能しているかの確認方法
つまずきの多くは「権限を渡し忘れる」ことに起因します。
確認方法とあわせて整理します。
つまずき:「任せた」つもりが、権限は渡していない
行動だけ書き出して権限の範囲を決めないと、役職者は「間違えたら怒られる」と考え、結局すべて確認しにきます。
行動と権限は必ずセットで渡すことが必要です。
確認方法:「その場に自分がいなくても回ったか」で判断する
役割定義がうまく機能しているかは、「社長・院長がその場にいなくても、役職者の判断で現場が回ったか」で確認できます。
確認のたびに自分の判断を仰ぎに来る状態が続くなら、権限の範囲を見直すタイミングです。
社労士視点:役割の曖昧さは「名ばかり管理職」のリスクにもつながる
結論として、役割・権限を明確にしないまま「管理職」として扱うと、労務管理上のリスクにもつながります。

社会保険労務士である筆者は、「主任」「リーダー」に管理職手当を払いながら、実際の権限や待遇が伴わない、いわゆる「名ばかり管理職」に近い状態の相談を受けることがあります。
労働時間管理の対象外として扱ってしまうと、後から残業代請求につながるおそれがあります。
厚生労働省の労働基準関係法制研究会では、管理監督者の要件を「権限」「待遇」の実態で判断する方向性が議論されています(出典:厚生労働省公表の研究会報告に基づく報道)。
役職名だけで管理監督者として扱う運用は、今後さらにリスクが高まると考えられます。
役割・権限を明確にする作業は、組織を動かすためだけでなく、労務リスクを避けるための実務対応でもあります。
上記は理論上の話で、現実的には従業員数が10人未満の組織では、労働基準法上の管理監督者に該当する役職者というのは、ほぼ存在しないと言えます。
「役割定義」に関するよくある質問・誤解
まとめ:役職は「役割定義」とワンセットで機能する
「主任」「リーダー」という肩書きだけでは組織は動きません。
「行動」「権限」「明文化」の3ステップで役割を定義し、口頭ではなくルールブックに残すことが、役職を機能させる条件です。
役割の明確化は、労務リスクを避ける実務対応でもあります。
- 役職と役割は自動的にセットにならず、言語化しない限り伝わらない
- 役割定義は「行動」→「権限」→「明文化」の3ステップで進める
- つまずきの多くは「権限を渡し忘れる」ことに起因する
- 役割・権限の曖昧さは「名ばかり管理職」の労務リスクにもつながる
今後のアクション
今すぐできる第一歩
今いる役職者一人について、「日々やってほしい行動」を3つだけ書き出してみましょう。
それだけでも、口頭で伝えていた期待が、どれだけ曖昧だったかに気づけるはずです。
専門家へ相談するタイミング
「役割を書き出したいが、何から手をつければいいかわからない」「役職者への手当や労務管理が適正か不安」と感じたら、専門家へ相談するタイミングです。
当事務所の「10人未満の組織づくり」支援では、コンセプトブック・バリュー・ルールブックの3点を6か月かけて一緒に作ります。
神戸市での相談サポート情報
組織づくりの全体像は社員10人未満の会社・歯科医院のための組織づくり完全ガイドで、トップダウンの考え方は小規模組織のトップダウンは悪なのか?「社長・院長が決める」が組織を健全にするで解説しています。
大企業の組織論との違いは小さな組織に「大企業の組織論」が通用しない3つの理由もあわせてご覧ください。
神戸市内で経営相談ができる公的機関としては、こうべ産業・就労支援財団や兵庫県よろず支援拠点などがあります。
当事務所(社会保険労務士こにしオフィス)でも、神戸市を中心に組織づくりのご相談を承っています。
初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。















